MITに日本の大学が勝てない理由
2018年の秋、MITに関する驚きのニュースが走った。1,000億円相当の資金を投入して、コンピュータサイエンス、AI、データサイエンスの新しいカレッジ(日本で言うところの学部かな)を新設すると発表したのである。しかもその資金のうち、350億円相当は、米資産運用大手ブラックストーンのシュワルツマン創業者兼CEOが個人的に寄付するという。
(当時MITが発表したニュースはこちら)
https://news.mit.edu/2018/mit-reshapes-itself-stephen-schwarzman-college-of-computing-1015
MITに日本の大学が勝てない理由はなんだろうか。このニュースから読みとれる側面は次の3つだ。
まず第一に、金額規模が半端ない。ひとつのカレッジをつくるのにこんな多額の資金が投入される。「小さく産んで大きく育てる」という発想は日本的なのだろうか。アメリカはやはりダイナミックである。
第二に、使い道がちゃんと存在する。新たに教授などのfacultyポジションを50名分用意し、ヒトや設備と研究開発に資金が投じられる。ここで、アカデミーの世界だけにお金を投じてもイノベーションの順回転は起こせない。でもボストンには、イノベーションの産学エコシステムがある。教授が副業・兼業で起業する。成功した実業家や当局経験者が教鞭をとる。アカデミーの世界とビジネスの世界が融合しているからこそ、多額の資金が有効活用され、イノベーションの順回転が起きるのである。
最後に、寄付文化とそれを実質的に支える貧富の差が挙げられる。アメリカには、多額の寄付ができるくらいの資産を持っている大金持ちがゴロゴロいる。価値観として、ビジネスで成功して大金持ちになることは素晴らしいことであり、そうした成功者がチャリティをすることが「かっこいい」のである。貧富の差が日本に比して大きく、より多くの大金持ちがうまれ、シュワルツマンのような篤志家があらわれる。社会のあり方としてどうなのか、という点はあるものの、日本ではこの資金の流れが弱いということだ。エンジェル投資家の厚みも然りである。
日本の子供たちには是非目指して欲しい。MITで、そしてシュワルツマン・カレッジで未来を創造して欲しい。Reshape yourself to shape the future、である。
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