「ボビン、糸切り、チャコ、竹尺」「目打ち、指ぬき、裁ちばさみ 」~ 新宿オカダヤ
ミシンを修理に出した、という人に付いて、新宿のオカダヤというお店に行った。
「生地・毛糸・手芸材料の専門店」と謳っているが、取り扱いの品の幅はもっと広いと思う。
東口のアルタを含めた周辺に、3号館まであるのだ。
先般のnoteに書いた母は、東京大空襲を生き残り、その数年後から数十年間、紳士服の仕立て職人として家で工業用ミシンを踏んでいたので、私は子供の頃から母の職人道具を得体の知れないカッコいいモノとしてこっそり愛でていた。
だから今日、しばらくぶりに目にする昔と変わらない道具類をオカダヤでたくさん見つけて、内心、昔のままの昭和の街角に立ち戻ったようにときめいた。
「ボビン、糸切り、チャコ、竹尺」
「目打ち、指ぬき、裁ちばさみ」
と、歌うように小声で唱えて店内を歩いた。
道具の名称まで不思議とよく覚えていた。
これが、歌に歌われた道具たちだ!
これが、ボビン。ミシン内部で下糸を巻く器具であるらしい。メカっぽくてとてもカッコいい。投げたらカプセル怪獣が出てきてくれそうな期待感。
これが、糸切り。糸を切るようの小ぶりなはさみ。
これがチャコ。布に線を書いたりする。チョークと同じ語源だと思う。
子供には扱いが難しくうまく線など引けない。
これは、竹尺。もうプラ製に全て置き換わっていると思ったら全然現役だった。大小何種類もあったが、どのサイズのものも見覚えが大ありだった。
これは、目打ち。布に穴を穿つ。千枚通しともいう。子供が触っていると怒られがちな道具。だが、触りたいのだ。
これは、指ぬき。昔は普通の指輪だと思っていたが、指にはめた状態で、針の尻を押す道具なのだ。
これは、裁ちばさみ。布を断裁するはさみ。まったく機能美そのもの。
子供の頃の家には、足踏み式の工業用ミシンや、クリーニング屋さんで使っていたような重くてデカいアイロンもあって、いま思えばどれもサイバーパンク的に、家内制手工業的に、とてもかっこいい道具類が満載だった。
「さよならリリアン さよならぽっくり さよならまりつき」
記事の巻頭の絵は、大島弓子先生の「10月はふたつある」の一コマ。
「ボビン、糸切り、チャコ、竹尺」
「目打ち、指ぬき、裁ちばさみ」
と唱えていたら、ふっと、この美しいカットのあるマンガを思い出したので、本を探して写真に撮った。
「さよならリリアン さよならぽっくり さよならまりつき」
「さよなら赤いぞうり さよなら大ふりそで」
大島先生の漫画も再読でき、オカダヤという再訪したいお店を知ることもでき、たくさんのカッコいい職人道具の思い出も再確認できて、今日はいい13日の金曜日だった。
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