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るろうに「剣」

今私は初めて観た頃のこの人と同じくらいの年齢となりました。
違うジャンルだけれど同じ「フリー」で芸で食うということで年齢と人生を重ねてきて。
今、ああ、この人の不器用さ(失礼!)と格好良さがまた身に沁みています。
旅芝居、私の最初の男です。
嘘です、なにもありません全く。また怒られるわ(笑)
16?17?年前に旅芝居を観出した学生あがりが最初に惚れてしまった役者さんです。
なにも知らなかったクソガキに舞台から教えてくれたフリーの役者さんで、私のsuperstar、「るろうに剣」、です。

元は松井誠座長の最初の、うん、ほんとに最初のお弟子さんです。
その後「おっきなとこでやるのが嫌になって」フリーになり旅芝居・大衆演劇へ。
金沢つよし座長、南條光貴座長、南條駒三郎座長、美波大吉座長、伊達隆義座長、葵好太郎座長、南條みつ雄座長、南條時宏座長、恋瀬川翔炎座長、中野加津也座長…
などなどの劇団で当時はまだ珍しかったフリーの役者として
1か月単位~それ以上でゲスト出演として入っておられました。
ここ数年は落ち着かれましたね。「南條隆とスーパー兄弟」におられます。
お芝居で、もはや、なくてはならない存在です。

決して派手な人ではありません。
てゆーか顔こわいし。愛想ないし(自覚あり)。
でもオトコマエやなあ。
中村獅童に似てる?いや、こっちのがもっとオトコマエやろ!(笑)
お芝居でのちょっとしたことのこだわり。声。
爺さん役とかも多いけど。爺さんでもそれ以外でも。女形芝居でも。
決して人間的に器用ではない(?)からこそお芝居での「生きている!」感じ。
舞踊での曲を大事にして、
決して派手ではないけれど1曲が「物語(おはなし)」みたいな感じ。
渋いとか珠玉とか成りきりとかそんな簡単な言葉じゃない…
と思う私はやはりちょっと主観で目が眩んでいますね(笑)

先日目に出来たのは『京都つれづれ』!(※下の写真)
私が当時この人の女形で一番好きやなきれいやなと思っていた踊りです。
決して派手な曲でも踊りでもありません。
けれどひとりの女の人と京都の四季が見えるのです。言い過ぎ。
びっくりして懐かしくて嬉しくてボーっとしてたら帰りの電車を乗り過ごしました。

生きることのなんたるかなんて考えもしていなかった当時、
そのくせ舞台はとか芸はとかクッソ生意気の頭でっかちで
自分の目にみえるものとみたいこときれいなことしか見ていなかった当時、
私はこの人を孤高のsuperstarだと勝手に理想化していました。
勝手に理想化して「そうじゃない」という現実を知った時に失望しました。
舞踊の世界観にゲンジツを持ち込むな、とキレました。(あ、お金の話ではありませんよ)
迷惑な話です、失礼極まりない私です。

ずっと意地を張って何年かに一度行ったりとかだけやってんけど
またフラッと気が向いたら観に行ったりするようになりました。
去年仕事である梯子酒(仕事ですよ!笑)の途中に近くの劇場におられたので。
観られたこの『南部酒』(※上の写真)。沁みたなあ(笑)
せやからそっから「数年に一度」は「数か月に一度」になりました。
いきなりまた来だしたから警戒されてるんちゃうか?!
だんたん昔みたいにあしらわれるようになった!(笑)
いえいえ、目論見は一切ありません。
観られるうちに、これ以上お互い老けないうちに、稼げるうちに、と思うだけ、いまだにうまく話せん唯一の人やけど(笑)
「俺は職人さんなの。せっせこ作ってせっせこ見せるだけなの」
今だからこそ当時お出迎え中に紙巻をふかせながら
あっちの方を向きながらチラリと言うてくれた言葉がとても沁みています。

このひとの舞台を目にしていなかったら
私はその後旅芝居・大衆演劇を観ていなかったしハマってもいなかったし
旅芝居界で書くお仕事をさせていただくこともなかったし
訳わからなく気持ち悪く人間人間で泣き笑いな舞台世界たち・・・「人間」を
私の筆で書こう書き残そうとは思わなかったと思います。

昔・・・へったくそな座長たちが花魁姿でラストショーをしていたとき。
ラストショー前で地味ぃな踊りしてたことに勝手に悔しさを感じ意味不明なことを言いました。
「なんでや!いっぺーさんの方がうまいのに!おかしい!わしが稼ぐ!花魁にしたる」
鼻で笑われました。
「やったことないけど。花魁なんかいらないよ。興味ない。踊れないじゃん」
「でも!でも!その顔!似合うよ!わしが花魁にしたる!」
あほやなー。うっとーしーなー(笑)
でもね、やはり私の花魁なのかもしれません。言い過ぎやけど。
私も書くよ。せっせこ。稼ぐよ!(笑) 恩返し。罪滅ぼし。おとしまえ。あ、これや(笑)

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3月20日、朝日劇場にて。剣一平。

一年前の連載記事にもすこーし。

http://tabistory.jp/story/sakabawoman_003/

ただただひたすら、ありがとうやな。

◆◆追記◆◆
そして、2020年8月、役者を引退されました。
不思議な縁で、いや、本当にありがたくもったいないことに、
役者人生最後の道を、観させていただくことが出来ました。

以下の記事、そんなことをちょっと、書いたものです。

よろしければ。そして、乾杯🍻



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