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それはゲームではない/戦争反対・イカゲームとおひとり島から

『脱出おひとり島』という番組をご存じですか。
ちょっと前に流行ったNetflix配信の番組です。
ジャンルは恋愛リアリティ……という、一般公募された男女によるカップリングの番組。
日本で言うところの「テラスハウス」だの「あいのり」だの、古くは「ねるとん」とか。
私はどれも観ないし観たことがないのですが、
一般的にギャグやパロディで使われていたりする程度に雰囲気だけはどれも知っているくらいです。その問題点も含めて。
こういった番組たちを普段観ないにも関わらず、
「おひとり島」はなんだかうまく出来てるなーというか観させる力があった気がします。
というのは、ここ数年私がネットフリックスの韓流ドラマにハマっているせい?!
いや、設定のせいも大きいかもしれません。

無人島「地獄島」に集められた男女。
「8日間でカップルになりましょう」
一日一日その都度イベントやゲームがあるのです。
その度にカップルになれたら「天国島」に行けるのです。

「え?これ、リアル・ イカゲーム?!?!」

『イカゲーム』にアホみたいにハマった私は観出してまず思いました。


こちらもNetflix配信の韓流ドラマです。
何巡かわからないくらい観ました。ハマった。
別にデスゲームが好きな訳ではないのです。
カイジはネタとして笑っているだけでした。

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なのに、イカゲームは圧巻、圧倒された。
人に薦めたり、ヤバいやつやと思われているだろうが熱く語ったり。
マイブームを更に加速させる嬉しい舞台の影響もありました!
ここまでのめり込んだ理由はたくさんありすぎます。お好きな方、また語りましょう。
でも、その中でも、とても考えさせられた点があります。

『蜘蛛の糸』を思いだしたのです。

観ながら、途中からずっと。クライマックスに近づくほどにさらに。観終えて、より一層。

言わずと知れた、芥川の『蜘蛛の糸』。
お釈迦さまは極楽から地獄へ向かってたらりと糸を差し伸べます。
カンダタをはじめとする地獄の亡者たちはその糸にしがみつきます。
のぼりたい。脱出したい。極楽へ行きたい。「生きたい」。地獄はもう嫌だ。自分だけでも。
細い細い糸を必死に糸をよじのぼりながらふと下を見ると
亡者たちがうようよと同じ思いでしがみついているのです。
「邪魔するな!」「自分は上がりたい!」「自分だけでも上がりたい!」「 来るな! 掴むな!! 俺の糸だ!!!!」

なんなんやろなあ。あの糸は。なんでなんやろうなあ。あの糸がたらされたのは。
お釈迦様がたらした意図はなんなんやろう。やさしさ? 善意? 同情? それとも、戯れ?

私は「お釈迦様って残酷やな」となんだか思ったのです、子供心にも。
お釈迦様という安全なところに居る者の、暇つぶしのような一瞬の行いのようで。
悪人カンダタが「蜘蛛を助けた」という善い行いをしたからという理由だとしても。

お釈迦様が仕掛けた〝ゲーム〟は生きる死ぬのゲーム、選ばれた選ばれない、なにがなんでも上がりたいゲーム。

そんな〝ゲーム〟で「自分だけが助かりたい選ばれたい」というのはエゴなんやろか?
egoつまり餓鬼とは芥川の永遠のテーマでもありますが。
それは疚しい浅い心? うん。だから糸はぷつんと切れるのでしょう。
でも「助かりたい」「選ばれたい」「生きたい」は
極限状態となった人間の、全肯定はしたくないけど否定したくない出来ない、本心本音、「業」、
悲しくも愚かしくも「人間」そのものとも言えるかもしれない。
「今、よじ登るしかない」「生きたい」カンダタを含めた皆が必死でのぼる。そして、ぷつん。
お釈迦さまは「悲しそうな顔をされ」、でも変わらず極楽には蓮の花が咲いている。
子供の頃、テレビ人形劇で観た地獄の様と再び落ちてゆく様が怖くて仕方ありませんでした。
でも、その阿鼻叫喚の後、極楽、去ってゆくお釈迦様と変わらず咲いている花、しずかなしずかなそのさまも怖いと思いました。とても。もしかしたら、さらに。

イカゲームでは、
ゲームの参加者を観る〝仮面をかぶったゲストたち、
酒を呑みながら生き死にをゲームのように観て笑う金持ちたちが描かれます。
日々事件だの戦争だのなんだのを他人事のように見ている我々そのものでしょう。
さらにオチでは黒幕たる意外な(?)人物が語ります。
肯定したくないししないけれどその「理由」を。
報いかどうかわからないが、その人物は極めて「人間」的な文字通りラストを迎えます。人間だ、人間なんだと、考えさせられました。

「脱出おひとり島」という恋愛リアリティショーでは
スタジオでタレントや女優?たちがVTRを見守り好き勝手を言う、その様も挟まれます。
PCやパソコン前で観ている我々のように。
カップルになろうなりたいという若者たちの模様をみて、きゃっきゃわいわい、思うがままにトークをします。
私が印象深かったのは、自分が勝手に理想化して観ているplayer像とは異なる言動をした人に対して「私たちの思っている●●さんじゃなーい」と言った点でした。

地獄島から天国島に行ける。ゲームにクリアすると賞金を貰える。
この世は天国なのでしょうか地獄なのでしょうか。よじのぼればいいのでしょうか。よじのぼるしかないのでしょうか。
そうしてそれでもやはり糸は切れる切られる運命なのでしょうか。天国に一番近い島なんて昔流行ったけどどこなんやろう。ないのかもしれない。

生きることはゲームなんかじゃ絶対にあってはならないと思います。
少なくとも誰かの手で強制されたり、誰かの勝手な主観で決められ演出されるものではないはずです。悲しくもそれが現実かもしれないけれど、でも。
さらには、それをゲームとしてゲームのように自分が傷つかない距離から傍観観察してみる「見世物」ではないはずです。
血が流れます。流れています。皆、生きています。汗をかいている。自分や誰かを守り生きている。すべての人に生きる権利があります。
なのに、いざ誰かの手でゲームなんて言いたくないゲームは
納得も出来ない不条理な理由や強者の気まぐれで起きる起こります。
それを私たちは知っている。でも普段の生活では意識もしない、でも起こる。
ここ数日間で否が応でも我々皆が突き付けられたことでしょう。

なにをしますか。なにが出来ますか。どうしますか。どうしたらいいんだろう。

ゲームに参加させられるのも我々であり、観るのも観ているのも我々。

ちょっと前に観た2作品から考えていて、ここ最近、ずっと頭を離れないことです。

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大阪の物書きです。中村桃子。
構成作家/ライター/コラム・エッセイ/
大衆芸能(旅芝居(大衆演劇)やストリップ)や大衆文化を追っています。
現在、lifeworkたる原稿企画2本を進め中。
演劇、古典芸能好き、からの、下町・大衆文化も好きです。

ラジオ番組の構成などにも関わっています。
AMの懐メロリクエスト番組。(昭和1桁〜50年代歌謡)とか、なぜか落語家さん絡みの番組多し。

現在、ウェブマガジンにて女2人の酒場巡りを連載中。
現在第10回(New!!) 


そして、あたらしい連載「Home」。皆の大事な場所についての文章、も、ぼちぼち。

旅芝居・大衆演劇関係では、各種ライティング業。
文、キャッチコピー、映像などの企画・構成、
各種文、台本、役者絡みの代筆から、DVDパッケージのキャッチコピーや文。あ、小道具の文とかも(笑)やってました。
担当していたDVD付マガジン『演劇の友』は休刊ですが、
アーカイブがYouTubeちゃんねるで公開中(貴重映像ばかり)。


……と、New。今年からはYouTube絡みのお仕事にもかかわっております(演劇系とかじゃないけど)。ふふふ。

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