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そんな彼女の〝サラメシ〟~『ランチ酒』~

あー仕事終わり!
今日はなにを食べようかな、なにを呑みながらなに食べよう。
今の気分と今いる場所から考えて……よし決めた、これ!
と、美味しい1品と酒を楽しみながら、
今日の仕事を振り返り今の自分の想いを噛みしめる。
訳ありな夜仕事、その名も「見守り屋」というなんでも屋さんで
働くヒロインの〝ランチ酒〟は
いろんな人に会って、いろんな人の悩みや想いにふれて、
そうしてお昼を迎えるからこそ沁みる。
『ランチ酒』(原田ひ香)、
こんなご時世で食べ歩き呑み歩きどころか
外食もうーんどうなんやろうってなってまうときに読む本としては
毒すぎたかもしれませんが、なかなかに沁みました。

出会う人々だけじゃなく、ヒロインもちょっと訳ありです。
自身も決して順風満帆な人生を送っている訳ではない。
性格もどちらかというと不器用。
「秋葉原・からあげ丼」「中野・焼き魚定食」という風に
「場所とメニュー」×「この日のお仕事と依頼人」のエピソードを読み進めるうちに
彼女自身の決してお気楽でなくちょっとビターな事情あれこれと、
だから依頼人に対して時に肩入れしすぎるほどに近づいてしまうのもわかってくるのですが、
だから美味しい料理と酒と共に人々と彼女の人生が甘く辛く沁みてくる。
時に逃げたくて苦い杯を重ねることもあったり、
わーい、美味しい、からの、
えい、いいや、もうちょっと呑んじゃおう!なんて決してストイックじゃなかったり、
そんな等身大な様もなんだか身近でなんだか愛しく、
彼女を応援したくなるようななんだか親戚みたいな気分と、
でも、他人じゃなく自分のことと重ね共感出来る心情やらも出てきたり……。
食べものとセットとなっている思い出って結構あるよね。
私もたくさん思い出しました。書かないけど(書けよ)

心情や美味しそうな描写は勿論、文章がなんかおもしろかった。
ふわっとさくさく読みやすいのに、
時折ポンッとかグッとなにか引っぱられて立ち止まるような、
ぷちっと刺してくるような瞬間があって、
しかも書ききらず余韻がある。これが好きやった。
ちょっとパクろうと何か所か思ったりもしました(ダメです。)
勿論この「場所とメニューとエピソード=人情話プラスヒロインの成長」
っていう企画というか構成もね。
しかも作中の店とメニューはすべて実在するものだそうです。
驚き! 興味! 食べたい! 呑みたい!
思わず、放送中の某ドラマ(原作は漫画)の主人公の口癖が口をついて出ました。
「悪くない」
上から目線ちゃうで。これ、最上級の言葉やねんで(と、主人公の探偵が言うてた)

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この期間が終われば(終わるのかな。完全には終わることはないかな)
ランチでも、夜でも、呑みでも、お茶の時間でも、美味しいもの食べようね。食べたいね。
私にも今気になっている店があるし、行きたい店があるし、
ひとりでもやし、皆とも。
特段外食が好きという訳ではないけど、
こうなると、なんか思い出しますね、それより、気になりますね。
勿論、家で作るのも、
皆が心と気持ちと願いをこめて作っておられるテイクアウトも美味しいねんけどね。なんて、なんか贅沢なこと言うてるね。食べるもの大変な人もきっとたくさんいるのに。贅沢で欲張りな気持ちということも忘れずにちゃんと頭においておかねば。

でもでも、また漠然かつめっちゃベタやねんけど、やっぱり、食べることは生きること。
食べ物の味もやねんけど、いろんな気持ちや人の想いや、今の自分を(?)食べること。食べよう。食べよう。
ちなみに、お外に出ない出れないあんま出たらあかんよなー期間の今、
私には、なぜか謎の野菜ブームが来ています(定期的にくるやつ)。
レシピも好き、でもひたすらシンプルに食べるのに異常にハマってます。動物園(?!)。
あ、毎日運動も始めた。この私が(笑)おかげでたぶんまた美味しく食べられます。きっと元気で会えます。皆も、ね!

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