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それはスパイスよりもスパイス

月2回、通っているちいさなカレー屋さんがある。

仕事現場のうちのひとつである某収録スタジオの近く。
なのでこの現場の仕事がある時は終わったらひとりで行く。

思えば昨年秋から飽きずに通っている。
と、昨日気付いた。
ふらっと入ったら美味しくて、気付けば遅いお昼に寄るのがもう習慣になっている。

最近は仕事中に頭の中で思ったりする。
「他の店、開拓しょーかなー」
作家の先輩やミキサーさんに笑われる。
「今日もカレー?」
「いやー、もういっかなー、って思うんすけどねー」
「そう言いながら行くんやろお前は(笑)」

そう、「おつかれさまでしたー」のあと、自然と足が向かってる。「もういっかなー」と思っていたくせに。
そして、やっぱり、美味い。
ちょっと元気出る気ぃすらするスパイス加減とかわいい盛り付け方。
うわー、好き。いや、好きという気持ちを通り越し、
なんていうか生活の一部というか自然に自分の一部、
とオーバーに言うのもなんか違うくらい一部。
どこかの店の「常連」となるのが得意でなく、飽きっぽい性格の私が。不思議である。

でも、店員のおにーちゃんとなかなか喋れない。

遅いお昼に行くから、店は貸し切り状態のことが多い。
カウンターを挟んで、おにーちゃん、と、私。
あきらかに目立っている、あきらかに覚えられている。
でも、お互い、余計な話はしない。
兄ちゃんもなんかそんなに愛想しないっていうかコミュニケーション得意そうじゃない。(ように見える。そんなことなかったらごめんなさい)
他のお客さんにも必要最低限のことしか言わないで、ずっと外を眺めている。
最初に来た時はカウンターの向こうには笑顔のかわいいおねーさんが居た。
帰り際には笑顔で「またよろしくお願いします★」
でも2度目に訪れてからはこのおにーちゃんだった。ずっと外を眺めている。
この人なんでこのお店に来はったんかな。カレー作りがめっちゃ好きなんかな。
スプーンを動かしながらも毎回頭の中は色々ごちゃごちゃぐるぐる。食に集中しながらも考えが止まない。
「え、なんか、もう「こんにちは」とか天気の話とかして笑ったりした方がいいのかな」
「でもこの時期やしマスクしてても変に喋るのあかんかな。カウンターやし、目の前にカレーの大鍋あるし」
で、結局、「わかってます」「ありがとう」を込めた(つもりの)深め会釈とか、
なんとなくなんとか気持ちを伝えよう(変な意味じゃないよ。笑!)としてるのだが、
あきらかに、あきらかすぎるくらい、我ながら不審だと思う。

でも行く。いや、足が向く。そして、やっぱり、美味しい。
見た目もスパイスも元気が出るカレーが仕事終わりに嬉しい。だから行く。
無言でいい。「芸」あ、違うな、「品」、それが嬉しい。
でもいつも頼む日替わりカレーのトッピングが明らかに変わっている日は特に嬉しい。
テンションがあがって「これ! 今日の! いいっすね!」
とか言いそうになる。けど、アホ丸出しなので黙る。
かわりに、嬉しそうに写真を撮る。ばれてる。
テンションがあがっているのと、はよ食べたいので、
写真はいつも本当に適当、あとで見返してガッカリする。でも毎回撮る。

そして昨日。
またまた無駄に自意識過剰な意識して御礼したい感じの「ごちそうさまでした」を言い、
店を出ようとした。すると、にーちゃんがふと、ぼそっと、言うた。
「いつもありがとうございます」
「!」
ちょっとニヤけそうになった。
あー。次行ったら私もそない言おう。いや、やっぱ言わんほうがいいかな。
言わんでも伝わってるかな。いや言わなな。でもな。
なんしかまた行く。毎日は色とりどりでスパイシー!

■omake■
あんたが仕事終わりに行く店はそんなんばっかりかい(笑)


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