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生き続ける/『橋ぐれる』

面白い歌がある。
作詞・小池一夫、歌唱・勝新太郎、
『橋ぐれる』という歌だ。

歌の主人公は〝ムショ帰り〟の男、
つまり、そういう筋の男だ。
ムショをちょうどたった今出た、出るところ、
の、彼の気持ちを歌った歌なのだが、これがいい。
さすが小池一夫、さすが勝新太郎、まさに小池一夫、まさに勝新太郎、なのだ。

若い頃、これを舞踊の持ちネタとしていた役者が居る。
私は観ることが出来ていない。
でも語るを聴くに「いかにもその人」だ、
内容も、拵えとちょっとした小道具も。
やせ我慢とキザさ、のキザが勝つ……のに、滲む気持ち〝本音〟、でも、やはり、キザさを通す。
「見えた」。観てないけど。

その人は旅芝居ではちょっと異端な役者であった。
役者の家の出ではあるが、ふらりふらりと流れ者、
西から東へ、東から西へ、モテて、モテて、流れて、
ちょっと人には言えない仕事もして、命にかかわる大病もしたが、生きている。
77歳。近年は舞台には立ってはいない。

「もう随分と昔の話だ……でも、格好よかったぞ、我ながら」

この舞踊にあこがれた人も居たと言う。
あこがれたその人は真似たらしい、曲、拵えそのままに舞台で。
そうしてその曲はいつからか、
舞台にあまり立つことがない彼よりも、
慕う彼の「十八番」と言われるようになった。
そもそも(彼も)芝居心のある人だ。
もしかしたら、「さらに」物語の色を濃く見せていたかもしれない。
クセモノかつ歌の内容がrealに虚実の実が匂いすぎるその人よりも、
「作品」としてうまく見せられていたかもしれない。
うん、たぶんそうだろうと思う頷く。
息子である座長も以前語っていた、「父と言えばこの歌です」

世間に明るい歌じゃない。時代に合わない歌かもしれない。
でも、きっと、この歌は、この歌も、
息子が、息子たちが、継いでくれるんだろう、継いでゆくんだろうと思う。
きっと継げる、いい年頃になったら。その時はそう遠くはない。

誰かが作った「型」は誰かに継がれ、時代を越えて、残ってゆく。
作品の主人公や演じるように踊った彼らのきもちは
時代が変わっても何重にも気持ち重ねて重なって伝わり、伝えられ、きっと残る。

カオスでごちゃ混ぜ、決して明るいだけない、
清濁併せのむ人間が昭和の歌たちには色濃く描かれる。
名曲ではなく迷曲かもしれないこの曲もそのひとつだろう。
時代をうつし時代に合い時代を越えていくけれどどこか時代遅れで、だから滲む、
哀切哀愁、郷愁、切なさ。「人間」「人間そのもの」としかいえない世界。
それはそれこそホントに、「旅芝居」、そのものだ。

作詞者も、歌った人も、「十八番」とした人ももう居ない。
けれど、生きる。生きてゆく。生き続ける。

B面も〝ムショ〟絡みの歌だ。
『別れ手錠』
作詞はやはり小池一夫。
この歌は2015年に「彼」によって同タイトルの芝居となった。
新作、いや〝リメイク〟だ。
九州の古い芝居、知的障害を持つ弟と、その兄(または息子と父)を描いた芝居。
この芝居を元に「現代劇」として構成され、
こちらも彼を慕う50代の座長……が座長を降り若い役者に劇団を託すその頃に、
彼と座長によって主演され上演をされた。
後に劇団は解散、若い役者は新しい一座を立ち上げ、芸名を変えて現在活動中。
が、新しいその劇団でも、彼がつくったこの芝居は、上演をされている。

舞踊を十八番としていた彼も、芝居で息子役を演じた彼も、もうこの世には居ない。
でも、芸は生きる、人は生き続ける、舞台の中で、人々の心の中でずっと。

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レコードは異端な「格好良かった」らしいその人からもらいました。
当時舞台で使っていたというレコードたちを段ボール数箱分! 
でもこの歌は特に印象深く、出して飾っています。
笑いながら言う。「俺も終活だから(笑)」いえいえ、まだまだ!

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大阪の物書き、
構成作家/ライター/コラム・エッセイ/
大衆芸能(旅芝居(大衆演劇)やストリップ)や大衆文化を追っています。
現在、lifeworkたる原稿企画2本を進め中。
演劇、古典芸能好き、からの、下町・大衆文化も好きです。
現在、ウェブマガジンにて女2人の酒場巡りを連載中。
現在第10回(New!!) 

そして、あたらしい連載「Home」。皆の大事な場所についての文章です。こちらもぼちぼち進めます。

ふだんはラジオ番組の構成などに関わっています。
現在の主なものは、AMの懐メロリクエスト番組。(昭和1桁〜50年代歌謡)

旅芝居・大衆演劇関係では、各種ライティング業。
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