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旅芝居/咲く・咲き誇る 若葉しげる

胸元を満開に咲かせ、
もらった花を振って笑顔で帰っていった。
「ばいばーい」‼‼‼
80over,の大ベテラン、レジェンドだ🌸!!!

ずっと興味を持っている旅役者のひとりだった。
名女形であると同時に、手がけた芝居は旅芝居界の財産、至宝!
弟子だった役者や同じ時代を生きた役者からもたくさんの逸話を聞いた。
「映画のナイトショーに行って帰ってきてそのまま芝居にして立てて稽古。昼にもうやる」
「なんでも芝居に出来る人なんだよ。幸せの黄色いハンカチ、八つ墓村、北斎の娘の話(タイトルは赤富士だったかな)……」
と、同時にその時代の役者らしいヤンチャ……を通り越して破天荒なエピソードもたくさん聞いた。
皆知っている話だと思う、書かないでおくけれど!

旅芝居を観出して数年の頃、関東の地方のセンターに追いかけて行ったこともある。
芝居の愁嘆場、女形の芝居で泣く姿でもう心を鷲摑みにされた!
芝居で後ろを向いて肩を震わせてよよよ、よよよ。そのこってりとしたあざとさったら!
背中で泣きながらにやりと笑っているように私には見えた。
「はい、ここよ、泣きなさいよ」
「巧い? 泣ける? ……当たり前でしょう。私を誰だと思ってるの?」
芝居が終わるとたっぷりと笑みを浮かべて口上挨拶に出てきた。
「おばあちゃんだと思ったぁ? おじいちゃんですよー♥」
今の時代的にアウトな自虐ネタ? 
でもそんな笑いすらあの笑顔ですべてチャラになりそうな、
いや、チャラにする、あざとさと笑顔なのだ。

お見送りの際に決死の覚悟で声をかけたらまた、たっぷりとした余裕の笑みが来た。
「あぁらぁ、関西からわざわざぁ? 
あたしがこないだ大阪で●●のところにゲストに行ったときはこなかったのぉ?」
で、ちょっと昔の話をちょっと聞いてみると素敵に華麗にごまかされた! ああ、旅役者! 

ここ数年は縁があったお弟子さんたちの劇団にゲスト出演をされている。
なかなかタイミングが合わなかったのだが、先日、ひさしぶりに観ることが出来た。
芝居に間に合わず、ショーから、もとい、口上挨拶からになって悔し涙だったのだが、
またあのたっぷりな感じでマイクを持って話しておられるのを観る事が出来た。
隣りでアシスタント役のようにしている若い座員さんと共に、説明もされていた。
いわゆる「お花」のことだ。
生花や花束ではないいわゆるお花や……それに値する「フラワーレイ」や「帯どめ花(造花)」についても。
「あらぁ、こんなのもあるのねえ」とか言ったりして。
で、「私は芝居の稽古がありますんで舞踊ショーは早めの出番で出て、そのまま失礼します」。

そして舞踊ショー。
ころころと現れ、あの、ふりふりぷりぷりとした踊り方で、
いつもの五木ひろしを踊った。
舞踊というよりも、客席に笑みと愛嬌を振りまく「私time」だ。
ああ、そういえば、私、以前に観た、「ムーミンみたい」とか例えたりしたなあ、ムーミンとか梅干しおにぎりとか(笑)
ふりふり、ぷりぷり愛嬌を振りまく姿に、ドドドッと観客が押し寄せる。
花が咲く続々と! レジェンドは笑顔で、でも、余裕のあの笑みで、受け取る、受け取る。
そうしているうちに五木ひろしは歌い終わり、
「あの大ベテラン・若葉しげる」は満開で舞台袖へと引っ込む。

笑ってしまった、感心と共に。
うれしさのようなもの。うれしさのような笑い涙だ。

もうお歳だから観ておかねば? 
あの大ベテラン役者来演、うわー? みたいな?
で、観た気になって? 
大事に展示されたショーケースの中のお宝ものなんかじゃないぞ。
胸元を花でいっぱいにして、うふふふ、ふふふ、帰るのだ生きるのだ。
若くもないが、でも若い。ベテランだが、老いてはない。男でもないし女でもない。生きるのだ。まだまだ生きるっ。

私は近年のこの役者さんの言動でたまらなく好きなものがある。
ゲスト時の送り出し(今はないけれど)でお客さんにカメラを向けられての一言だ。

「きれいに撮ってねぇ?!!」

また来ます、まだ来ます。「ばいばい」、ふふふ。

役者は、人生は、きっといつだって、今が見ごろ、一番の🌸!


(劇団紫吹ゲスト、若葉しげる総帥(若葉劇団)2022・3・21@庄内天満座)

(写真は夜の部のお芝居『岸壁の母』(代表作のひとつ)後の口上挨拶より)

(今、ドラマや映画にひっぱりだこな人気役者・若葉竜也くんはお孫さんだよー!!)

■omake■
過去記事。
(2010.10.31(12年前やん、ギャー))

(2011.4.3)

(2013.5.25)

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大阪の物書き、中村桃子です。
構成作家/ライター/コラム・エッセイ/
大衆芸能(旅芝居(大衆演劇)やストリップ)や大衆文化を追っています。
現在、lifeworkたる原稿企画2本を進め中。
舞台、演劇、古典芸能好き、からの、下町・大衆文化好き。


ブログの右端に簡単な経歴やこれまでの仕事など書いております。連絡先も。
お仕事依頼は勿論大歓迎、以外のご連絡も大歓迎です。

現在、ウェブマガジン「tabistory」様にて女2人の酒場巡りを連載中。
現在第10回。11回(入稿済み)~12回もたぶんもうすぐ!

そして、あたらしい連載「Home」。皆の大事な場所についての文章、も、ぼちぼちと。

旅芝居・大衆演劇関係では、各種ライティング業。
文、キャッチコピー、映像などの企画・構成、
各種文、台本、役者絡みの代筆から、DVDパッケージのキャッチコピーや文。あ、小道具の文とかも(笑)やってました。
担当していたDVD付マガジン『演劇の友』は休刊ですが、
アーカイブがYouTubeちゃんねるで公開中(貴重映像ばかり)。

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