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本とかドラマとか歌の感想など
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#劇場

芝居小屋とうそとほんと 『万両役者の扇』

また偶然なのですが、 芝居小屋にまつわる本を読みました。 出版されたばかりの新作なのですが、ほんと、偶然。 んー? となって、手にとりました。 芝居をすることにとりつかれ「ほんととうそ」が曖昧になっていく人と、 その人に魅了されて(?)いく人びとの話。 簡単な言葉を使うとそれは常軌を逸した…… いや狂ってるんじゃなく冷静、 意外と冷静で、 いやいや、もう「ほんととうそ」「ほんとかうそか」 「自分ってなんなのか」が、 わからなくなっている、みたいなのかもしれない。 自分の“

芝居小屋と人 『木挽町のあだ討ち』

自分で自分の書いたものを改めて引用するなんて全然よくない。 でもふとそうしたくなったのは、 読み終えたとある1冊が、ほんとうによかったからだ。 読みながら何度もぐっときて、じぃんとして、 読み終えて、そうしたくなったからだ。 直木賞受賞作だし、人気作だし、 尊敬する劇作家たちも薦めていたから気になってはいた。 にもかかわらず、手に取るのが遅くなったのはすごくしょうもない理由だ。 「もう時代小説はええかなあ」 うんと若い頃一時期、ずっと時代小説を読んでいた。 心はずっと江戸

誰かと、時代と、生きること 『不適切にもほどがある!』

クドカンの新作ドラマが昨日から始まったことを知らなくて、 ばたばたが少し落ち着いた??な昨夜、 ネトフリで何か観ようとしたら配信されてた! 観た! じわっと涙がでた笑いながらも。 思うところ考えるところがたくさんと、 ドラマは勿論あの頃舞台とかから観てきたからこそ変遷というか いろいろ思うところがあること、 そのひとが、今、≪こんな≫ドラマを書いて、放送されていること、その内容に、じわっと。 物語は始まったばかりなのだけれど、 いろんなこと思い出したり重ねたりして、もう胸がい

それらはコインの裏表 何とかならない時代のシェイクスピアや近松

今朝「おすすめされていた作家さんの本を買いました」というメールをいただいて、なにかが繋がったような、不思議な気持ちになったのは、 ここ最近、このnoteを思い出していたからかもしれません。 ちょうと一年前に書いたものです。 振り返りネタが続いてしまっていますがサボっている訳ではない(笑) 赦しと復讐とコインの裏表のこと。 シェイクスピアとか近松とか己のことや、 いくつかの本と舞台の話とかと併せて、なんか憑かれたような気持ちで書きました。 ちょっと長いけど、ほんま、いろいろ

1冊の本、ひとつの舞台 『歌舞伎座の怪紳士』はミステリーでもホラーでもなくハートフルなあなたの私の話

タイトル、ちょっと濃い。 〝歌舞伎座の怪紳士〟 勿論あのミュージカルをもじって付けられたのであろうことはわかる。 けれど、漢字ばかりが並ぶからかな、 怪と紳士が並ぶと圧が強いよなあ、そこが、それが、ミソやんなあ。 そんなタイトルに反して、内容は、とても、とてもやさしい。 あたたかくて、やさしい話だった。ヒネクレ者のわたしでも何度かホロリ。 劇場と、人と、人びと、物語と「私」の話だった。 多作で知られる近藤史恵さん。 最近はドラマ『シェフは名探偵』の原作者としてご存じの人も

青い糸

「人生にはいろいろある。でもなんとかなるし、生きていたら、いつか許すこともできる」 「それでも、その生活のあり方の延長線上に、私たちが周りの人にどんなに心を砕いてもどうにもならない地平が、政治によって権力によって現れてしまうのだ、ということを書きたいと思いました」 Yahoo!ニュース本屋大賞2021ノンフィクション本大賞の受賞作、 『海をあげる』の著者・上間陽子さんによる記念スピーチからの抜粋です。 昨日、この本の担当者である筑摩書房の編集者がTwitterにページ

舞台とリングと、人間と 『教養としてのプロレス』のこととか

突然ですが、 わたしはなにかを「絶対にそう」「絶対にこう」とかすること言うことがあまり好きではありません。 たいへんにこわいことであり危険なことではないかなと常々思っています。思うようにしています。 そういった風潮や群れることはなんだかどこか「こわいなぁ」となります。 例えば「なにかが絶対に悪」とか。 みんなが言っているから悪とか、 みんなで言ってみんなで悪にしちゃうってこともとても多くない? だから、どちらか一方に肩入れをし過ぎてしまうことはとても危険じゃないかなぁ

ON THE ROAD

劇場に行くと思いもよらない瞬間がたくさんある。 思いもよらない、思いもしなかったような時と瞬間にたくさん出会う。 一言でいうと「一期一会」なんだろう。 けれど、そんな簡単な、言い切ったような言いきれたようなことで言いたくないな、という気持ちもある。 でも、そのことそのとおりで、「一期一会」、ヤバい、エモい、ヤバい、 ふざけていない、これしかないし、これでいいような気もする。 変に理屈をこねたり能書きに酔って押し付けたりするよりも、もしかしたら、ずっと。 ということは、さまざま

台所は劇場 『それでも食べて生きてゆく』

人はひとりとして同じひとは居ない。 生まれも生い立ちも考え方も性格もちがう。 だからこそ、さまざまな人と共にする、奇跡のような空間と時が愛しい。 そんなことを劇場体験(長く、と、特に近年の大事な)で深く思うようになり、 だから、それぞれの気持ちやライフストーリーにも更に想いを馳せることが増えた。 元々、興味があったのだとは思う。でも、たぶん、更に。 そんなこんなで、このnoteにも長渕三昧だの、のど自慢だの、〝街は劇場〟だのと出てくるし、書いている。 (勿論、これも思うところ

Myself

連休中、NHK-FMで「今日は1日長渕剛三昧」というのを聴いた。 放送すると知ったときは苦笑した。 「そんなん1日聴いたら頭おかしなるんちゃうん(笑)」 でも結局、半分以上仕事をしながら聴いていた、聴いてしまったのです。 最後の部分は外出の用が出来て聴き逃したのに、後追いで全部聴きすらしました。 ファンでもないのに。好きでもないのに。 番組時間午後0時15分~9時30分。途中ニュース中断あり。 それどころか、地震が発生したため、途中ぶった切られたりした。 でも9時間強。も

皮と鬼、『入れ札』と『羅生門』

菊池寛の掌編小説『入れ札』を薦めた。 「文学中年」を自称するその人は 性格が悪いらしい。弱いらしい。 そんな自分が嫌いじゃないらしい。 信用できる(笑) たぶん、 剥いでみたらちょっと似てるような気がする。 と、やりとりをしていて思うようになった。 だからなんとなく思い出して薦めてみたところ、 すぐに読み終えて面白いnoteを書いて下さった。 驚きと共にちょっと慄いた。 やだなあ、わしのちいささも丸裸やないか。消えたい。 でも非常にありがたいことだとも思った。いろんな意

Homeと肯定/『その女、ジルバ』から

『その女、ジルバ』というドラマ、観ていますか? 私も友人から勧められ、観ています。 なんか結構話題になってきたからヒネクレモノとしては 安易に「いいよね」って言いたくないねんけど、 でも、いいよね。洒落てるよね。 40を迎えた冴えないヒロインが飛び込んだ世界は夜のお店。 でもでも「40なんてギャル」「ぴちぴちすぎる」と言われるお店! そこでは陽気なマダムたちと紳士たちが毎夜集い踊るお店。 このお店をひらいたのは故人である「ジルバ」というママ。 ブラジル移民から日本に戻ってお

「推し活、悩む」@コロナ禍、な皆へ。……大丈夫!

推し、居ますか? 推し活、してますか? 皆、このコロナ禍、どないしてますか? 特に「会いに行ける世界」に推しが居る皆さん! どちらの言葉もあまり好きではないのですが、 いわゆる「ファン活動」「追っかけ」というといいでしょうか。 舞台演劇、音楽、アイドル、スポーツ興行……。 ジャンルは様々ですが、きっとそれらの世界に「推し」が居て、 信仰とまでいうとオーバーですが、生きる力をもらっている人はたくさん居るのだと思います。 そして、逆もまた。そんな客席の皆の想いが、「舞台」に立つ

あわあわとふわふわと、でもきっとずっと/『彼女は夢で踊る』

誰かが居なくなること……。 誰か、と書いたけれど、それは人だけじゃなく、物だったり、場所だったりもある。 かたちはこの世から居なくなる、けれど「私」の記憶には永遠に残っていて……。 その記憶はきれいで、でも苦くて、 現実なんだけれど、まだ、いや、ずっと現実のものとして受け止められなかったりもする。 でもまごうことなき現実で……。 あわあわと、ふわふわと。 いつまでもいつまでも胸の中で踊っているよう。 それはまさに〝胡蝶の夢〟、でも、蝶じゃなく、現実で……。 話題の(?)映画