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人に任せることはなぜ至難の業なのか

最近ものすごく難しいと思っていることは、「人に任せる」ということです。自分が担っている仕事やチームとしての役割を同僚や後輩、メンバーに任せるという行為の難しさを感じています。

自分が経験が浅いときは、周囲でも部下には負担をかけさせたくないからといって役職者がものすごい量の仕事を抱えているのを見て、「なんで任せてくれないんだろう、任せられないんだろう」と不敬ながら思っていた時期もありましたが、今自分がその立場になってみて、任せられないには理由があることがわかったので、言語化してみたいと思います。

自分の存在意義を消す行為だから

自分が確立してきた仕事、切り開いてきた仕事を他人に任せるということは、自分の存在意義を消す行為だから、非常に手放しにくいです。

自分も、多くの仕事が自分に集まってきていて、自分しかできない仕事がたくさんあることが自分にとっての存在意義のように感じていた時期もありました。

でもそれは、組織にとっても、自分にとっても良くないことですよね…

組織にとっては、いなくてはならない人を作っているということがリスクです。あの人がいないと業務が回らない、あの人じゃないとできない治療があっては、持続的ではありません。だれでも代替可能にしておくことは、効率的に業務をまわすうえで必須ですし、リスクマネジメントです。

組織にとっての非代替性は、個人にとっては武器になります。あなたにしかできない技術を持っておくというのはキャリアにおいて有効です。

でも、その仕事、永遠にやるんでしょうか。

あなたもわたしも永遠に生きることはできません。それにキャパシティは限られています。周囲の環境の変化や、あなた自身の立場の変化によって、必要がなくなるかもしれない古い荷物をずっと抱えたままでは、新しい荷物を持つことはできません。

…ということを理解はしているんですが、荷物を手放すことによって、自分のやってきたことの否定のように感じます。だからみんな任せることができないんですよね。

自分でやったほうが早い。そしてうまくやれる

他人に任せるより、自分がやったほうが早いんです。これは当たり前です。自分が考えたり、構築した業務は、自分のほうが早くできますし、早くできるから、うまくできるから任されている仕事もあります。

でもこれは時間の借金です。他人に任せている時間は、未来への投資です。任せて、その他人ができるようになれば、自分の手が空いて、未来に使える時間が増えるからです。

人間しかたのないことで、将来生まれるお金や時間よりも、目の前のお金や時間に飛びつきたくなります。これをぐっと我慢することができるといいのですが…

任せる技術と器の大きさがない

任せてみよう!と思って、自分も任せたことがあります。でもしばらくしてフタを開けたら全く手をつけていなくて、裏切られたような気持ちを経験して、それからというもの及び腰になってしまうことがありました。

このような経験から学んだことは、「任せる」という行為にも、「技術と器の大きさが必要」ということです。

何をいつまでにどの程度やってほしいかという明確な指示を出すこと、任されたほうが嫌にならない程度の適切な進捗確認、できない場合のアシストの力の入れ具合、それをドンと構えられる心持ち…めんどくさいほどの技術と器の大きさがないと、誰かに任せるということは難しいのだと痛感しています。

でも、どこまでやれるかわからないが、そこを任せないと、任せる側も任せられる側の成長はないんですよね。

おもしろくない

先日、70歳も近い父親のエピソードです。

心身をすり減らすほどの大きな仕事が終わり、そろそろ第一線を退くつもりであると言っていたにもかかわらず、単身赴任するほどの自宅から離れた場所の大きな仕事をやろうか迷っているという父親に、自分を含め家族は「自分の体のこともあるんだから」とか「若い人に任せたらいいじゃないか」とかあの手この手で引き止めようとしていたのですが、父親は照れくさそうに、こう言いました。

「おもしろそうだし、やってみたい気持ちが疼く」

なるほどと納得しました。

人に任せるという行為そのものは、おもしろくないのです。仕事をやることや難しいことをやり遂げることをやりがいに感じている人であればあるほど、その仕事を誰かにやらせるというのは、おもしろくないのです。

人に任せることができないパターンには、こういう思いがあり、だからこそ人に任せるのは、仕事をちゃんとやる以上に、至難の業なのだということが理解できました。


さて、このnoteは、人に任せることの難しさをつらつらと描いた、ここで終了です。

なぜなら、まだ私も人に任せられない人の1人だからです。

これから人に任せるマインドと技術を粛々としっかり身につけたいと思います。その暁には、それを言語化していきます。

それまで、しばしお待ちください。

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