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家庭料理はむずかしくなくてもいいんだよ。『一汁一菜でよいという提案』土井善晴

この本は、お料理との向き合い方が楽になるような考え方を授けてくれ、料理を作ることへのハードルを下げてくれる一冊です。

料理を通して大自然とつながっていることを再認識し、料理をすることは、生きることだという、ごく当たり前なことを気づかせてくれます。

料理は苦手です。ですから、私がハンバーグを作ると、フライパンいっぱいに肉汁があふれてしまって、いつもカッスカスな仕上がりになってしまいます。ほかにも、唐揚げはカラッと揚がらずベトベトにしかなりません。

だけど、作らないわけにはいかないから、あきらめずに自分なりの工夫をしてみるのですが、ハンバーグと唐揚げだけは成長できません。

それでも、作れるようになったものもあるんですよ。

クックパッドを見ながらレシピ通りに完成させる、チンジャオロース(市販のたれは使っていません)や、春巻き、ホワイトグラタンなんかは、回を重ねるたびに無理なく作れるようになったから、人は成長できるのだと実感しています。

ここで問題なのが、レシピ通りでないと作れないということなんですよね。材料が一つ欠けただけで、お手上げになることが多かったんです。

うろたえる私を見かねた主人は、材料が一つぐらいなくてもそのままやればいいと言って背中を押してくれます。そうして、ようやく手を動かすことができるようになるんです。どんだけ怖いねんと、自分に突っ込みたくなりますわ。
そうやって作ってみれば、案外それなりの料理になることを、経験を通して学んできました。

料理が得意な方からしたら考えられないかもしれませんが、アレンジすることができないわけです。

この本は、そんな、こびりついた固定観念をほぐしてくれるんですよね、暮らしの中にある料理は、つつましく素朴でいいこと、季節を感じられるもので自然とつながっていること、味見もしなくていい。今日は濃かったとか薄かったとか反省をしなくてもいい。ありのままで味わえばいいと、およそ料理人とは思えない、ゆるいアドバイスをくださることに、気持ちが救われます。

一度YouTubeで先生のお料理している姿を拝見しましたが、目を疑うようなことばかりでした。そんな感じでいいんだ、というのが率直な感想です。

人参もまな板を使わず、ささがきにし、キャベツもわしづかみでちぎり鍋へ放り込む、豚肉もまな板が汚れるから切らなくていいよ、と平気でおっしゃる。
それに味見もしなくていい、濃いなーとか薄いな―と思って食べればいいと。

度肝を抜かれましたが、そんな感じでゆるくていいのだと思うと、気持ちも楽になるし、思いもよらない具材を入れることへの抵抗もなくなります。

みそ汁にピーマンを入れることにハマった時期があるのですが、これがなかなかアクセントになって、なんだかおいしいんです。

つづくと飽きるので、今はしていませんが、みそ汁にピーマンなんて私の概念にはないものでした。

もちろんレシピが悪いわけではないので、クックパッド命に変わりはないのですが、自由度は格段に広がったと感じています。そのことに気づいてから生き方ですら何かに縛られてこだわっていた自分がいることにも気づけました。

もう少しのびのびと生きていけるようになるんじゃないかなと思っています。

食べることと生きることのつながりを知り、一人一人が心の温かさと感受性をもつもの。それは人を幸せにする力と自ら幸せになる力を育むのです。

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