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薬膳空想物語 『七十二候の食卓』

啓蟄
蟄虫啓戸 ~すごもりのむし、とをひらく~  七皿目

冬眠していた生き物が春の日差しのもとに出てくる頃。
軽快に土の上に出てきて遊びだすトカゲや、葉っぱにしがみつき顔を出すカエルたち。
間もなくやってくる春に向かって本格的に動き出してきた。
土の中で冬ごもりをしていた様々な虫や生き物たちが地上へと這いだしてくる頃。

蠢いてくる虫たちには関係のないやっかいなもう一つの「春の風物詩」の季節でもある。
そう、あの憎き花粉症。
どうにもこうにも花粉症になると頭がぼーっとしてしまう。
春がやって来るのはうれしいのだけど…。

三月は少しずつ「陰」から「陽」へと季節が変動してくる時期。
花粉症撃退には自分自身の免疫力も高めないといけない。
からだの機能を一定に保つように働くのが自律神経だけど、この時期は乱れがち。
その乱れを整えるためにはタンパク質やビタミンB群、鉄などを豊富に含んだ食事がいいらしい。
一度どうしようもなくくしゃみが止まらなくなって薬に頼ったことがあったけど、
急激な眠気が襲ってきて恐ろしい思いをしたことある。
できれば自然のちからでこんな症状はなくしたい。

今日はそんな栄養素をカバーできる『小松菜と厚揚げ炒め』を作ってみよう。

厚揚げ(※1)は食べやすい大きさに切って、生姜(※2)を擦りおろしておく。
フライパンに油をひいて生姜を入れ好みの量の豚ひき肉(※3)を炒める。
火が通ってきたら、厚揚げと程よい大きさに切った小松菜(※4)を加えてさらに炒める。
調味料は少しの砂糖と酒をひと振り、醤油もいい塩梅に入れる。
ちょっと味噌を加えてもいいコクが加わる。

厚揚げと豚ひき肉のタンパク質と、小松菜のビタミンと鉄分。
すべてモーラできる。
そしていい具合のボリューム感。

「昔は花粉症なんてなかったんだよ」
そういえばお婆ちゃんが言っていた。

調べてみると1985年までは花粉症は稀な病気だったらしい。
どうやら一説によると空気中に浮遊する大気汚染とも関係するらしい。

この先の未来を作るのはわたし達。
たかが花粉症、されど、花粉症。
知っていくのも必要だ…と
まだぼーっとしたままの頭で、考えはじめる満腹の昼下がり。

※1 豆腐:食味/甘  食性/涼  帰経/脾・胃・大腸
※2 生姜:食味/辛  食性/温  帰経/脾・胃・肺
※3 豚肉:食味/甘  食性/平  帰経/脾・胃・腎  
※4 小松菜:食味/甘  食性/涼  帰経/脾・胃  

●食味:酸味・苦味・甘味・辛味・鹹味([かんみ]塩からい味)を五つに分けたもの(五味ともいう)
●食性:熱性・温性・平性・涼性・寒性と食物の性質を五つに分類したもの(五性ともいう)
●帰経:生薬や食材が身体のどの部分に影響があるかを示したもの。ここでいう五臓は「肝・心・脾・肺・腎」の事だが、単に臓器の働きにとどまらず精神的な要素も含まれ、ひとつひとつの意味は広義にわたる。

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