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あなたからの卒業

たまに、あなたを思い出します、
本日は中秋の名月です、
下高井戸の部屋で見た月のほうがもっと綺麗でしたね、
今夜、あなたも月を見ていると信じています、

あなたと出会ったのは、本当に偶然でした、
今思えば気があったの一言でした、
思い出します、山形での景色を、思い出します、私の誕生石のネックレスをくれたことを、
今でもかがやいて私の思い出として記憶にあります、

それから、七年の月日を共にしましたね、
その間は色々とありましたね、
あなたは東京に就職したり、私は進学のために上京したり、そうそう、私の二十歳の誕生プレゼントに京都旅行に行きましたね、嬉しかった。今はもう京都には行きたくないな、あなたのことを思い出すから、すごく悲しくなるから行きたくないな、
週末は必ず下高井戸の部屋に行っていた、そんな日々が続く、当たり前だと思っていました、それが間違いでした、

日常の中での当たり前は、すぐに過ぎ去ってしまうことを私は知りませんでした、
若さゆえの無知さなのかもしれません、
ああ、私たちはどこで間違っていたんだろう、
私が子供だったのです、

あなたは私に愛を絶えず届けてくれました、
それに私は気付かずに、
私はあなたへの愛を、もっと直接的な表現で求めていました、
今思えば、あなたも私も不器用すぎました、

最初は恋でしたが、次第に愛になっていき、その先は、あなたを殺したくなりました、
あなたを殺したくなるほど、愛していたのかもしれません、
次第にあなたと会うのが怖くなりました、あんなに楽しみにしてた週末も怖くなり、足が遠退くようになりました、

あなたはそれに今でも気づいていないでしょう、
私が当時、そのような気持ちだったことを、
そんな折、あなたから突然の別れを告げられたのです、

それからというもの、数日はヨーグルトしか口にはできず、
そんな状況にもかかわらず、あなたが夢に笑顔で出てくるのです、
たまらずにあなたに電話し、玉砕し、寝込み、
寝る、食べる、催す、という人間としての最低限の行動しかできなくなりました、

しかしながら、人間というのは強いもので、
時間がたつにつれ、徐々にあなたを思い出す頻度が減り、食欲も出てきて、外出をするようになり、
サークル活動に勉強、そしてバイトという一般的な学生生活を送り、あなたと過ごしていた週末はいつの間にか三軒茶屋の友人の家で過ごすようになりました、

あなたのことをあまり思い出さなくなってから、あなたから電話がありました、
その内容は、復縁しよう、という内容でした、
私は少し悩みましたが、結婚しよう、と言われて、復縁することにしました、

それが間違いでした、
やはり、私もあなたも不器用なままでしたし、
あなたに迷惑をかけることもありました、
さらに、あなたのまわりの友人たちが私はあまり好きではなかったし等の理由もあり、もう一度別れることにしました、

ああ、思い出すだけで胸が痛い、
今、あなたは結婚しているとききました、
同い年の方とのこと、
私はあなたの幸せを願っています、

私は、あなたに会えて良かった、
好きな人にはちゃんと好きと言っておけばよかったと思います、
あなたにもちゃんと好きと言っておけばよかったと、後悔してます、

今でもあなたのこと、思い出しますよ、
仕事で嫌なことがあったり、いじめられたり、嬉しいことがあったり、面白いことがあったりしたら、
あなたならどんな顔するかなと、
たまにだけど思い出しますよ、

昨晩、あなたの結婚式に行く夢を見ました、
あなたは相変わらず笑顔で、私のほうを見ていました、
あとから知りましたが結婚式の夢は、元カレへの未練がふっきれた証拠とのことです、
もう、あなたから卒業する時期がきたようです、

秋が深まった日曜日の午後、下高井戸で、あの部屋で私とあなたは別々の道を歩きました、
あなたに合鍵渡しながら、ありがとう、と言いながら別れたの覚えている、
あなたはいつものように不器用な顔でその言葉を受け止めていた、
あのときね、またどこかで復縁することになるかもと思った自分がいたことにこの前気付いた、でも、その勘違いから七年経って、ようやく本当のさよならが言えた気がした、
あなたがどんな女と結婚してても、私には関係ない、あなたが幸せになれればいいのだ、

ただ、ね、
あなたと私があの世に行って、あの後の人生をこうだったんだよ、こうでさ、うんうん、そうだったんだ、っていう感じで、
いつかまた、満月の夜に話をしてみたいなとも思う、それから来世に行きたいな、

こんなに月が綺麗だから、あなたを思い出しました、
今世では、一旦あなたと、さよなら。

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