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「抱っこして5分間歩いて座って待つ」理研の寝かしつけの科学で報道されないこと<後編>

2022年9月14日に理化学研究所(以下、理研)が発表した赤ちゃんの寝かしつけに関する研究について2回に分けて、睡眠コンサルタントの視点から書きます。
今回は後編です。前編についてはこちらをご覧ください。

■ 赤ちゃんの睡眠の研究について

前編でご紹介していますので、ぜひご覧ください。

■ 抱っこで5分歩けばみんな寝てくれるの?

前編でご紹介していますので、ぜひご覧ください。

■ 報道されないけど知ってほしいこと

前編でお伝えしたとおり、科学は正しいですが、ご家庭に合うとは限りません
お子さまの月齢や気質が違えば、ママやパパの性格や育児方針も異なります。
また家庭を取り巻く環境も千差万別です。

たった1つの科学がすべてを解決するとは限りません。
その点を踏まえたうえで、以下を読んでこの方法を試すのか、この方法を周りの方におすすめするか決めてください。

1.本当に5分間も抱っこして歩きたい?

私は腱鞘炎&ぎっくり腰持ちなので、5分も抱っこして歩いて、その後さらに5~8分抱っこしたままなんてできなかったと思います。
みなさんはどうでしょうか。

また、抱っこしている間赤ちゃんは寝ることができますが、ママは寝られません。
毎回この方法で赤ちゃんをあやすとその分ママは休めなくなります。

確かに打つ手がないと藁にもすがりたくなりますよね。
私も夜泣きに困っていたときは、赤ちゃんのお尻を日光浴すると良いと聞いて試していたので、気持ちはわかります。

でも、赤ちゃんを泣き止ませる効果的な方法は他にもあります。
赤ちゃんは理由があって泣いているので、まずは赤ちゃんの泣きを理解して、赤ちゃんが泣きやむ5つのスイッチを試してみましょう

2.夜通し寝なくなるかも!?

睡眠環境でお話ししましたが、赤ちゃんが朝までぐっすり眠るには、就寝時から起床時まで全く同じ環境を保つことが重要になります。

今回の研究の場合、ママの抱っこで寝たはずが起きたらベッドの上にいたとなると、赤ちゃんは不安になって起きてしまい、夜泣きにつながる可能性がが高くなります。
想像してほしいのですが、皆さんもベッドで寝たのにふと目が覚めたらリビングの床の上にいたら、びっくりして不安になりますよね。

睡眠コンサルタントとしては、赤ちゃんに長い時間眠ってほしいと思うママやパパにこの方法はおすすめしません。
まずは、睡眠の土台を整えることから行動してほしいです。
(注意:個人差はありますが、一般的に生後5ヵ月くらいまでの赤ちゃんは夜間も授乳が必要です。)

3.ママが抱っこして歩けばOKと思わないで!

今回の報道を見ていて一番心配だったのは、世間から「ママが抱っこして歩けば赤ちゃんは泣きやんで寝るんでしょ」と思いこまれ、ママへの負担になることでした。
これは研究自体の問題ではなく、報道のされ方や受け取る側の問題だと考えています。

抱っこして歩いても寝ない子はいます。睡眠の土台が整っていなければなおさらです。
理研のプレスリリースでも、今回の方法は「赤ちゃんが寝付きやすいように生活リズムや環境を整えるなど、普段の育児の方法を代替するもの」ではないと言っています。

それなのに、赤ちゃんが寝ないのはママが悪いなどと言われてしまうのは、研究者の方にとっても不本意だと思います。
また、ママ自身もこの方法で赤ちゃんを寝かしつけできなくても、「ダメな母親」なんて思って自分を追い込まないでください。

この方法で寝かしつけしないでとは言いませんが、これで解決しない悩みがあるなら専門家に相談してほしいです。
一人で抱えこまないでくださいね。


今日のぐっすりねんねポイント<後編>
 ママが抱っこして歩いている間、赤ちゃんは寝られてもママは寝られません。本当にこの方法がベストか考えてみましょう。


参考文献

 『ママと赤ちゃんのぐっすり本』 愛波 文 著
 Nami Ohmura, Lana Okuma, Anna Truzzi, Kazutaka Shinozuka, Atsuko Saito, Susumu Yokota, Andrea Bizzego, Eri Miyazawa, Masaki Shimizu, Gianluca Esposito, Kumi O. Kuroda, "A method to soothe and promote sleep in crying infants utilizing the Transport Response", Current Biology, 10.1016/j.cub.2022.08.041
 理化学研究所プレスリリース「赤ちゃんの泣きやみと寝かしつけの科学」(2022年9月14日発表)


  • 赤ちゃん及び保育者(ママ、パパ)に関して不安や心配がある場合は、医師等の専門家に相談しましょう。

  • 本記事の内容については注意を払って記載していますが、アドバイスを実行する際は読者の方の判断で行ってください。

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