同居の経緯その②〜悲惨な伝言ゲーム〜

伝言ゲームは物事が正確に伝わらないという過程や結果を楽しむ遊びだと思う。
なので、正しい情報伝達が必要な場面で伝言ゲームなど絶対にすべきではない。
…ということを今回のnoteでは書いていく。

前回のあらすじはコチラ。
https://note.com/momo_anne_s/n/n736b84087e61

2022年3月中旬。
義母との同居を許可した私に、夫は何度も何度も感謝の言葉を述べた。
そしてその直後、義母に電話をかけた。
「俺達と暮らそう!あんりもそれを望んでる!内孫とも一緒に暮らせるぞ!」
電話を切るなり夫は目をらんらんと輝かせながらこう言った。
「地元と環境が近い△△市に引っ越そう、すぐに!」

夫は『石橋を叩いて渡らないタイプの人間』と自分を評している。
常にどんな物事も俯瞰で見、ベストな選択を探す。
夫とは結婚前から今まで15年近くの付き合いがあるが、それを彼の長所であるといつも思っている。
だからこんな風に舞い上がって支離滅裂になる夫など、全く予想していなかった。

しかし私は努めて冷静に、思い付く限りの疑問を口にした。
私達の仕事や息子の保育園は?
下手すれば全部変えないければならないが?
引越して息子の保育園がすぐに見つかる保証は?
私達は新しい職場に適応できるのか?
収入はどうなる?
どの質問にも、安心納得できる答えは返って来なかった。
しかし、私自身も、夫の質問に適切な返答ができなかった。
「じゃあどうすれば良い?ここに母ちゃんを住ませる訳にはいかんやろ。狭いし、段差もあるし。」

私達はしばらく黙っていた。沈黙を破ったのは夫だった。
「とにかく退院はまだ先なんだから、それまでに今より広い部屋に引っ越そう」
私もこれに同意した。
壁の薄い2LDKの賃貸ではお互い息が詰まる。

義母は週3の透析通院とは別に、持病の治療の為に週1の通院が必要だった。
退院までの間にその、2箇所の通院先を決めなければならない。
「どこの病院が近いの?」
と義姉(次女)に聞かれた夫は、近隣の総合病院名を3つ伝えた。
さて、義母はいつ退院するのか。
「姉ちゃんが何も言わんからまだやと思う」
義家族の連絡体制に疑問を抱き始めていた私はこの発言を信じることができなかった。
「次女義姉さんから連絡は?」
「まだ来てない」
1週間ほど、毎日、このやり取りを繰り返した。
そしてやっと夫から義姉(次女)から連絡がきたと報告を受けたが、その内容は
「××病院と□□病院のどっちかが良いんだったよね?
え?△△病院も?早く言ってよ!また先生に聞いてみるねー!」
という風だったと言う。夫は笑っていた。
「姉ちゃんいつものんびりしてるよなぁ。まぁそういう訳で、退院はまだまだ先になるんだと思うよ」

私は笑えなかった。
夫は義姉(次女)に情報を正しく伝えられていないのではないか。
県外の義姉は土地勘がないのだから、当たり前のこととも言える。
だとすれば入院先にはどんな風に情報が伝わっているのだろう?
私達の持っている情報はどこまで正しいのだろう?

本当に『退院はまだまだ先』なのだろうか?

数日後、義母から夫宛に電話がかかってきた。私もその会話に参加した。
「先生がね、透析の方はAクリニックはどうかって言うんだけど、どう?」
Aクリニック?聞いたことがない名前だった。
即座にその名前を検索する。
義姉(長女)の家の近くのクリニックだった。
我が家からは高速を使って30分前後かかる場所だ。
誰1人正確な情報を把握していないことはもはや疑う余地もない。

頭を抱える私の耳に
「母ちゃん、俺らの住んでるのは〇〇市の〇〇区やけど、××区も近いよ。だからね…」
と、夫が義母に説明する声が聞こえた。
土地勘のない者に地図も渡さず区名だけ伝えることを、説明と言って良いのかは分からないが。
しかも義母は極度の方向音痴なのだ。
この情報が義母経由で入院先に伝わったらどうなるのだろう?

「分かった、息子は××区にいるって先生に言うね!
主治医の先生が良い人でねぇ。一生懸命考えてくれてるのよ。優しくって。アンタ達も一度お礼を」

ここで私の感情は爆発した。

「お義母さん!電話で良いですから!夫と入院先が直接話すようには!できないんですかね!?」
私の鋭い口調に夫も義母もしばらく絶句した。
そして義母は笑って場を和まそうとした。
私はそれに揺さぶられず、入院先に夫の電話番号を伝えるよう義母に指示を出した。

その翌々日。
入院先のソーシャルワーカーと夫が直接のやり取りを開始した2日後。
1週間後に退院になると連絡を受けた。
私達は、はいそうですか分かりました~、とすぐに受け入れ…

受け入れられる訳がなかった。来週とは!全員がパニックになった。
仕事の調整も、義母の部屋の準備も、何も整わない。
それ以前の問題も山ほどある。
決まった通院先も、夫が伝えていた3つの病院のどこでもなかった。
義母の持病の専門医がいる病院は市内に1箇所しかない為、候補を挙げることそのものが不要だったとこの時に判明した。

流石に準備が間に合わない、と夫が入院先に掛け合った結果、数日だけ退院が伸びた。
更に義姉2人が入院先に頼み込み、退院後も1度だけ透析治療を受けさせて頂けることとなった。
「おかあさん、まず何日かは家に帰りたいって言ってるの。持っていく物だって自分で選びたいし、何よりご近所さんにご挨拶したいって。」

2022年4月上旬。義母との同居開始まで、あと、2週間。

続きます。

【補足】身バレ必須の内容で、それを覚悟で書き綴っておりますが一部はフェイクを入れております。(詳細な日時など)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?