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来世

 もしも来世の姿が選べたら、次はどんな生を選びとるだろう?そんな突飛な話題がでるのはきっと、昼下がりのカフェテラスあるいは夜中の散歩道のように、多少気楽に過ごしているときだろうから、色々な答えが返ってくるかもしれない。海沿いの街で自由気ままに暮らす野良猫。世界中の空を知る渡り鳥。穏やかな海流にゆらめく海月。ひそやかに咲く高原の花。けれどもし、この魂を最後まで使い尽くしたときに、最果てで同じ選択を迫られたとしたら?

 人間は情という、得体の知れない大きな渦に振り回されるために生まれてきたんじゃないかと思う時がある。一度人に生まれてしまったら切っても切れない、厄介で愛おしい感情。そんなものを一度でも誰かに、あるいはなにかに向けた記憶を、私たちは結局手放すことができないかもしれない。だからきっと、多くの人はまた人間を選びとって、もう一度そのほろ苦い味わいに身を浸しにいくのだろうと思う。

 狭い座席でひとり、液晶に向かってそんなことを考えながら、でもやっぱりバス酔いがない猫とかでもいいな、とも思っている。

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