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短編小説

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【短編小説】夏景斉唱

【短編小説】夏景斉唱

 焦げたアスファルトのにおいが鼻をつく。東京は今日も快晴、何がそんなにめでたいのか、鳴りやまない斉唱を頭の上に聞きながら途切れ途切れの陰を踏み歩く。

 連日の長雨に憂いていたと思ったら気付けば八月も折り返しで、わたしは何度でも時の流れのはやさに驚かされる。ひとつ歳を重ねるごとに記憶の順番があやふやになり、多分自分でも気付かないうちに失ったり、脚色されたりして塗り替えられていく。
きっとおばあさ

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