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藤井風「帰ろう」に込められた意味を検証 その③

藤井風「帰ろう」に込められた意味を検証その①はこちら
藤井風「帰ろう」に込められた意味を検証その②はこちら

 今回は、④人間関係の蟠りとその発展から巻き起こる戦争と平和を解説していきたいと思います。

 戦争と平和と聞くと、無力な私たちはには何もなす術がなく、遠い空の下の出来事であるとして目を覆いたくなってしまいます。でも、この曲は、そんな無力な私たちにこそできることがあるんだよと伝えてくれています。

 皆さんは、「ファシズム」って聞いたことありますか?日本語で独裁主義のことを指します。ファシズムの代表としては、ナイスドイツが挙げられます。一人の人間が権力を握り、皆がそれに従う。かつてのドイツではナチス党が一党でドイツを支配し、そのナチス党のトップに君臨していたのがヒトラーです。皆さんお分かりの通り、そんな政治体制の国では皆が幸福に暮らすことはできません。
 では、社会全体が幸福であることを第一に考える「功利主義」という考え方はご存知ですか?社会を構成する最大多数の最大幸福を優先し、幸福であることを最大の目的とします。簡単にいうと、より多くの人が幸せなであることを優先しようということです。しかし、この考え方は、最大多数の幸福のために少数派は犠牲にしてもいいという考え方です。

 何がいいたいのかというと、一人の幸福のための社会であっても、社会全体の幸福のためであっても、犠牲となる人がいるということ。それが、現代社会が抱える全ての問題の根源であると私は考えます。

 では、なぜ、皆が幸福な社会を築くことは難しいのでしょうか。それこそが、この曲に隠されたヒントなのではないでしょうか。

ああ 全て与えて帰ろう
ああ 何も持たずに帰ろう
与えられるものこそ 与えられたもの
ありがとう って胸をはろう
待ってるからさ もう帰ろう
幸せ絶えぬ場所 帰ろう
去り際の時に 何が持っていけるの
一つ一つ 荷物 手放そう
憎み合いの果てに何が生まれるの
わたし わたしが先に 忘れよう

帰ろうOfficial   Videoより

 皆がそれぞれ自分の幸福を追求し、「くださいください」という欲望で満ち溢れている世界では、誰一人幸福になれないということです。例え、ヒエラルキー(階層社会)のトップに立っていても、その地位を奪われやしないかと毎日人を疑い、疑わしきものは殺害し、そうやって不安な日々を過ごすことになります。

 小さな社会の中で見るとポテトチップスの袋を独り占めして皆に分け与えないということも、大きな社会で見るとヒトラーが大量虐殺をいう悲惨な戦争を始めたことも、元を辿れば同じこと。自分が幸福であればいいという考えです。
 そして、一人が幸せであればいいという考えを悪とし、より多くの人々が幸福である社会全体の幸せを優先しても、社会のどこかで少数派が犠牲にされているということ。現代社会における幸福という概念では、すべての人々が幸福に共存していくということは不可能なのかもしれません。なぜなら、現代社会における幸福とは物質的な豊かさの追求であるからです。わかりやすくいうと、お金持ちになって好きなものを買えるということが幸せという価値観であるということです。

物質的な豊かさの追求を袋の中のポテトチップスでみると、たくさん食べられる人が現れると、他の人はちょっとしか食べられなくなってしまいます。ロールズの正義論に言う無知のヴェールによって皆が均等にポテトチップスを分け与えることができるなら話は別ですが、それができるのならばこの世の歪みはここまで広がらなかったはずです。

 地球はただ青く光っています。実際にはどこにも国境なんてありません。それなのに、国境という見えない壁を設けて、皆が安堵して暮らしています。しかし、人と人との物質的豊かさの追求は、時に衝突し、いがみあい、憎しみ合い、その果てに意味のない争いを生じさせ、平穏な暮らしを脅かしています。


わたし わたしが先に忘れよう

帰ろうOfficial Video より

「絶対に許せない」

傷ついた心が癒やされなければ、いつまでも痛みを引きずってしまいます。でも、大切なのは、それが無駄な執着であることに気付き、「手放す」ということ。それが、私たち一人一人にできる最初の一歩です。そのためには、一人一人の小さな世界で啀み合い憎しみ合い止める第一人者にならなければなりません。自分から終わりにしなければなりません。
戦争と平和という壮大なテーマであっても、私たちがまずは啀み合いや憎しみ合いをやめることで、結果世界は少しづつ変わっていきます。私はこの曲から、そんなメッセージを受け取りました。


1945年8月15日。私達は戦争に負けました。苦戦を強いられた私達は一致団結し、最後の一人になるまで戦い抜くと誓いました。しかし、私達は、戦争が終わったその日からバラバラになり、自由という更に過酷な状況下に身を置くことになりました。資本主義という名の競争社会です。世界で最も豊かな国といわれるまでに成長し、物質的な豊かさを手に入れたこの国では、人々の幸福度は低く、自殺者の数は戦死した兵士の数と変わらないほどまでに増加し続けています。

ポテトチップをたくさん食べられる人も、少ししか食べられない人も、抱えた苦しみから逃れるために、物質的な豊かさを求めて、空っぽの心を満たそうと必死になっています。

いつまでも続く戦いをもう終わりにしませんか?
赤い風船をそっと手放して、最初の一歩を踏み出しましょう。無意味な執着を手放して、本当の平和を取り戻しましょう。

そして、私たちは、帰る場所へ、幸せ絶えぬ場所へ向かいます。

古い価値観に縛られ、身動きの取れない心を解放してくれるような、心地ちの良さをあたえてくれるこの曲を聴きながら、本当に大切なものとは何なのか、新しい時代に身につけるべき価値観はどうあるべきなのかを皆で探究しにいきましょう。


ああ 全て忘れて帰ろう
ああ 全て流して帰ろう
あの傷は疼けど この渇き癒えねど
もうどうでもいいの 吹き飛ばそう
さわやかな風と帰ろう
やさしく降る雨と帰ろう
憎みあいの果てに何が生まれるの
わたし わたしが先に 忘れよう

帰ろうOfficial Video より


歌詞

あなたは夕日に溶けて
わたしは夜明に消えて
もう二度と 交わらないのなら
それが運命だね

あなたは灯ともして
わたしは光もとめて
怖くはない 失うものなどない
最初から何も持ってない

それじゃ それじゃ またね
少年の瞳は汚れ
5時の鐘は鳴り響けど もう聞こえない
それじゃ それじゃ まるで
全部 終わったみたいだね
大間違い 先は長い 忘れないから

ああ 全て忘れて帰ろう
ああ 全て流して帰ろう
あの傷は疼けど この渇き癒えねど
もうどうでもいいの 吹き飛ばそう
さわやかな風と帰ろう
やさしく降る雨と帰ろう
憎みあいの果てに何が生まれるの
わたし わたしが先に 忘れよう

あなたは弱音を吐いて
わたしは未練こぼして
最後くらい 神様でいさせて
だって これじゃ人間だ

わたしのいない世界を
上から眺めていても
何一つ 変わらず回るから
少し背中が軽くなった

それじゃ それじゃ またね
国道沿い前で別れ
続く町の喧騒 後目に一人行く
ください ください ばっかで
何も あげられなかったね
生きてきた 意味なんか 分からないまま

ああ 全て与えて帰ろう
ああ 何も持たずに帰ろう
与えられるものこそ 与えられたもの
ありがとう って胸をはろう
待ってるからさ もう帰ろう
幸せ絶えぬ場所 帰ろう
去り際の時に 何が持っていけるの
一つ一つ 荷物 手放そう
憎み合いの果てに何が生まれるの
わたし わたしが先に 忘れよう

あぁ今日からどう生きてこう


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