【京都歳時記】十二月遊ひ 六月
水無月のころは、世もこと更に あつうして、人も いきつきあへぬ ほどなり。家ごとには、蚊やり火ふすふ●も あはれ也。
あやしきふせやに、白くさける 夕がほの花の名は、ことごとしうけたれて聞ゆるも、又をかし。
こと更に、けんぶつすべきは、祇園まつり也。もとは是、尾州の津嶋の御神也。清和天皇の御時、貞観 十一年、はじめてみやこに くわんじやうす。それより神事のことおこりて、むかしは六十六のほこをかざりて、四条の町をわたしけれど、事大さうなれば、今はわづかに そのかずをしらしむるばかり也。
山をかざりてわたすも、又みどころは、ひとつも あたに いはれなき山はあらず。
此日にいたりて、神の御こしを相わたすに、犬神人 の立出て、まつりの御ともし、ひぢをはり 威勢をふるまも、をかしきいはれのある事也。
みじか夜の う川にのぼる かがり火の
はやくすぎゆく みな月のそら
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