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百人女郎品定(上)



女帝によてい 皇后くわうごう 皇女くわうぢよ

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『百人女郎品定
出典:国立国会図書館デジタルコレクション『百人女郎品定

女帝によてい
人皇にんわう十五代 神功皇后を始めとす。しかれども即位ならず。胎中たいちうの御子、応神天皇のために摂政し給ふ。三十四代 推古天皇を即位の始めとす。聖徳太子、摂政し給ふに、のち女帝によてい中頃なかごろまれ也。

百人女郎品定

きさき
むかしは上下かみしもともにつまといふ。異国ゐこくにては、漢の高祖かうそより皇后くわうごうといひ、日本におゐては、神功皇后をはじめとす。太子なきまでは 中宮ちうぐうといふ。下ゝしも/\よりとうとんでいふは、日本につほん人皇にんわうの始め、神武天皇、異国にてはしう成王せいわうよりこれをいふ。中宮ちうぐう皇后くわうごう、共に天子てんしつまを申也。

姫宮ひめみや
天子てんし姉妹あねいもと、および ゐん御所ごしよ御女をんむすめを、皇女くわうぢよとも、姫宮ひめみやとも云也。内親王ないしんわう宣下せんげかうふらざる也。内親王は、しよく日本紀にほんぎに、元明げんみやう天皇 霊亀れいき年中ねんぢうに、一品いつほん氷高ひたかの内親王をはじめとす。位階いかい相当さうとう親王しんわうに同じ。姫宮とは天子の孫彦まごひこまで也。そのすゑ/\はつねの女中ぢよちうなる也。

内侍ないし すけ おすへ

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『百人女郎品定
出典:国立国会図書館デジタルコレクション『百人女郎品定

内侍ないし
女官によかんかしら也。長橋局ながはしのつぼね勾当内侍こうとうのないし、諸事を伝奏でんそうす。じゆ三位に相あたるとなり。

※ 「長橋局ながはしのつぼね」は、勾当内侍こうとうのないしの別称で、宮中に仕えた女官のこと。清涼殿の東南隅から紫宸殿の御後ごごに通じる細長い板の橋のことを長橋といい、そのそばに勾当内侍のつぼねがあったことからこの呼び名がついたそうです。

すけ
是は内侍ないしの次のくわん也。大かたは公卿の御むすめ也。

おすゑ
内侍ないし典侍すけの外、役人やくにんの女中なり。

尼御所あまごしよ 供の女中衆

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『百人女郎品定
出典:国立国会図書館デジタルコレクション『百人女郎品定

尼御所あまごしよ
人皇 四十八代 称徳せうとく天皇を始めとす。孝謙かうげんてい重祚ちやうそなり。法基尼ほうきにごうしたる。是、比丘尼びくに御所といひならはせり。

そのゝち、鎌倉かまくら頼家よりいゑ後室こうしつあま遍照へんぜう心院しんゐんたてすみ給へり。是を尼寺あまでらといふ。天子てんしの御はゝ、御剃髪の女院・姫宮ともに皆、尼御所あまごしよといへり。今の寺ゝ 御菩提所ぼだいしよすみ給へるを何ゝの御所といふ。

※ 「重祚ちょうそ」は、 一度退位した天皇が再び位につくこと。
※ 「後室こうしつ」は、身分の高い人の未亡人のこと。
※ 「遍照へんじょう心院しんいん」は、万祥山 大通寺だいつうじ(京都市南区)の院号。

『百人女郎品定』では「鎌倉かまくら頼家よりいゑ後室こうしつあま遍照へんぜう心院しんゐんたてすみ給へり」と書かれていますが、大通寺のWebサイトによると「承応元年(一二二二年)に、源実朝の妻、本覚尼が亡夫の菩提を弔っていたが、真空回心上人を請じて梵刹を興し、萬祥山遍照心院大通寺と名付けた」とあります。
参考:大通寺Webサイト「大通寺の歴史

斎宮いつきのみや 女官によかん おほら

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『百人女郎品定
斎宮いつきのみや
おほら子

※ 「おほら子」は、御子良子おこらごのことと思われます。大正時代の『近松全集』に以下のような説明が見られます。

おほら子
おこらこの事か。神道名目類聚抄に、子良子伊勢神宮につかふる女官なり。神楽、又、御饌調進の事にあづかる。或云、子良子は鈿女命より始ると云り。芭蕉、おこら子の一本ゆかし梅の花。

出典:国立国会図書館デジタルコレクション:『近松全集 第3巻
女官によかん

公卿室くぎやうのしつ 姫君 御乳おうば 女中

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『百人女郎品定
出典:国立国会図書館デジタルコレクション『百人女郎品定
公卿室くぎやうのしつ

公卿室くぎやうのしつ
摂政せつしやう関白くわんばくつまを、きた政所まんどころといふ。是になぞらへて、大臣だいじん公卿くぎやうの妻をきたかたとは申也。御台所みだいどころ女官によかん飲食いんしよくする所なり。平人へいにん往還おうくわんなし。是に準じて、公卿の妻をもいひならはせると也。将軍家しやうぐんけは大臣のれつゆへ、同じくいふとか。

姫君 御乳おうば

公卿女くぎやうのむすめ
すべて、小上﨟こじやうらうといふ。二位三位の内侍ないしを上らうといふにより、なべて公卿のむすめを皆小上らうといふなり。

女中

采女うねめ 女嬬によじゆ

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『百人女郎品定
出典:国立国会図書館デジタルコレクション『百人女郎品定

采女うねめ
天子の陪膳はいぜんする也。古今に、かづらきの大君おほきみのちに  たちばな  の諸兄もろえといひて、いとおそろしかりければ、采女うねめ土器かはらけとりて、

  浅香あさか山 かげさえみゆる やまの井の
     あさくは人を おもふものかは

と読て、やがて諸兄もろえ 心つきて、国のかみへ、ことばやはらげ給へりとかや。又、あめ御門みかどの御時、采女うねめ、君をうらみ奉りて、猿沢の池に身を投しかば、

  わきもこが ねぐたれがみを さるさはの
    池の玉もと 見るぞかなしき

と詠じ給ふといへり。

采女うねめ

女嬬によじゆ
めのわらは、むかしは内侍ないししたづかいに百人づゝと也。しよく日本紀にほんぎに、宝亀ほうき三年正月に、信濃国しなのゝくに水内郡みづちごほりの女嬬によじゆとなる。是はじめとかや。

※ 「めのわらは」は、わらわ

女嬬によじゆ

端女はした

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『百人女郎品定
出典:国立国会図書館デジタルコレクション『百人女郎品定

はした
いづいれのやくといふことなく、ことのたらざるところへつかふゆへなり。半季はんき一年ひとゝせ、あなたこなたにつとむる也。和泉いづみ式部しきぶ うた
   木にもあらず 竹にもあらぬ わが身さへ
     はしに此ごろ 成ぬべきかな
とよめる。はしたものゝ立よるたよりなきと也。

端女はした
はした

神職しんしよくしつ 神子みこ

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『百人女郎品定
出典:国立国会図書館デジタルコレクション『百人女郎品定
神職しんしよくしつ

神職室しんしよくのしつ
社務しやむ神主かんぬし祢宜ねぎ氏人うぢと社人しやにんべつあり。公家くげにあらず、地下ぢげ也。武家ぶけにあらず、長袖ながそでなり。

神社じんじや万民ばんみん上ゝうへ/\祖神そじんたるにより、上ゝは政道せいたうにいとまなく、下ゝしも/\渡世とせいにいそがはしきゆへ、氏人をしてまつらしむ。出家しゆつけ墓地はかちまもるに同じ。

つまたるは平人へいにんにひとし。しかれども、伊勢いせ八幡やはた加茂かものたぐひは、天子将軍家へもむすめを奉れば、采女うねめれいに同じと也。

神子みこ

神子みこ
巫女かんなぎは、から日本にほんかみまつる女にて、おつと祝部はふりといへり。吾朝わがてうにては、倭姫やまとびめ余風よふう也。

むすめ

武家ぶけしつ 大名の姫君

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『百人女郎品定
出典:国立国会図書館デジタルコレクション『百人女郎品定
武家ぶけしつ

武家室ぶけのしつ
おつと位階いかいにしたがふ。和泉いづみ式部しきぶ周防内侍すわうのないしのたぐひのごとし。

大名の姫君

大名女だいみやうのむすめ
ちちくわんをもちゆ。おつともちては其 位階いかいによる。

大名国御前くにごぜん

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『百人女郎品定
出典:国立国会図書館デジタルコレクション『百人女郎品定

国御前くにごぜん
諸侯しよこうは、勅命ちよくめいによつて敵国てきこくせいするゆへに、てかけをめしつるゝもあり。木曽きそ義仲よしなかともへ山吹やまぶきめしつれしたぐい也。又、くにてかけをあがめたつといて、国御前くにごぜんともいふ。

※ 「ともへ」は、巴御前のこと。源(木曽)義仲の側室。
※ 「山吹やまぶき」は、源(木曽)義仲の側室。

俳諧はいかい おかみそろへ 女いしや

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『百人女郎品定
出典:国立国会図書館デジタルコレクション『百人女郎品定
俳諧はいかい

俳諧はいかい
世にこのみちをたしなむ女おほしといへども、丹州たんしうかいばらのすて女。ちかくはそのたぐひ成べし。

※ 「丹州たんしうかいばらのすて女」は、江戸前期の女性の俳人 捨女すてじょ(丹波国氷上ひかみ柏原かいばらの生まれ)のこと。

かみそろへ
女いしや

祐筆ゆふひつ お物師ものし

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『百人女郎品定
祐筆ゆうひつ

右筆ゆうひつ
いづれの役所やくしよにも筆とりなきにはあらねども、すべて女の文章ぶんしやうはやは/\と風情ふぜいよく書もの也。

※ 「筆とり」は、ここでは、文筆にかかわる業務をする役のこと。書記。

物師ものし

盲女ごぜ 舞子まひこ

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『百人女郎品定
盲女ごぜ
舞子まひこ

舞子まひこ
後鳥羽院ごとばのゐん御宇ぎように、島の千歳せんざい和歌わかまへ、このゝち 義経よしつねめかけしづかはゝ いそのぜんじなどを始めとす。今の歌舞伎かぶきはこの余風也。

※ 「御宇」は、天皇の御治世、御代みよのこと。
※ 「島の千歳せんざい」と「和歌わかまへ」は、白拍子しらびょうし舞を始めたとされる女性です。また、和歌の前は、そうの名手でもあったそうです。
※ 「いそのぜんじ」は、磯禅師いそのぜんじ静御前しずかごぜんの母で、鎌倉前期の舞楽の名手と伝えられています。

町人上品じやうぼんしつ こしもと 中居なかゐ

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『百人女郎品定
町人上品じやうぼんしつ
こしもと
中居なかゐ

有徳人うとくにんしつ 十種香しゆかうてい

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『百人女郎品定
有徳人うとくにんしつ

※ 「有徳人うとくにん」は、富裕な人のこと。お金持ち。

種香しゆかうてい

※ 「十種香じしゅこう」は、著名な香の名前十種。栴檀せんだん沈水じんすい蘇合そごう薫陸くんろく鬱金うこん青木せいぼく白膠はっこう零陵れいりょう甘松かんしょう鶏舌けいぜつ

町人中ぼんつま

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『百人女郎品定
町人中ぼんつま

商人あきんどつま むすめ 下女 大こんかく

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『百人女郎品定
商人あきんどつま むすめ
下女 大こんかく

あふぎ屋 職人しよくにん女 くみ

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『百人女郎品定
あふぎ屋 職人しよくにん
くみ

つむぐ わたつみ かのこゆい

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『百人女郎品定
つむぐ

※ 「」は、麻の古名。

わたつみ
かのこゆい

※ 「かのこゆい」は、鹿の子結い。鹿の子絞りに染めるために、絹や布を糸でつまみ縛ること。

しつかいや しめ物師ものし すわひ

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『百人女郎品定
しつかいや

※ 「しつかいや」は、悉皆屋しっかいや。大坂で染め物や洗い張りなどの注文を取って、京都の専門店に取り次ぐことをなりわいとする人のこと。または、染め物や洗い張りを職業とする人のこと。

しめ物師ものし
すわひ

※ 「すわひ」は、牙儈すわい。売買の仲買をする人のこと。

ころも屋 ぞうりのはなをねり

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『百人女郎品定
ころも
ぞうりのはなをねり

くだまき はたおり いとくり

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『百人女郎品定
はたおり

機織はたをり 糸繰いとくり
人皇十五代 応神天皇の御時、唐土もろこしより二人ふたり女工ぢよこうをくる。あやめ、いとめのをそへ、くれはのさとにて、綾錦あやにしきをりて、御衣ぎよい

※ 「あやめ」は、漢女と書くのでしょうか。古く日本に渡来した漢民族の子孫と称する人々を漢氏あやうじといいます。漢氏ははた氏と並ぶ古代渡来人系の氏族です。
※ 「いとめ」は、糸女いとめ。糸をよる女性のこと。
※ 「くれはの里」は、呉服里くれはのさと呉織くれはとりが住んでいたことからそう呼ばれたそうです。摂津国の古名。

くだまき

※ 「くだまき」は、織機のに入れるくだに、よこいと  となる糸を巻きつけること。

糸くり

白川の石うり

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『百人女郎品定
白川の石うり

※ 「白川の石」は、白川石しらかわいし。京都の白川の上流域(現在の京都市左京区北白川付近)で取れる黒雲母くろうんも花崗岩かこうがん

八瀬やせ黒木くろぎうり 大原おはらしばうり

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『百人女郎品定
八瀬やせ黒木くろぎうり
大原おはらしばうり

百姓の女房

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『百人女郎品定
百姓の女房



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