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【京都歳時記】十二月遊ひ 九月

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『十二月遊ひ 2巻 下

野分の風すさまじく、すすきはほに出て、なにのただちに  たれをかまねくらん。萩の葉かれ行て、蝉のもぬけたる、又あはれなり。

咲つづく  菊のまかきは、露  うるはしく  みえわたりて、ひときはの  ながめぞかし。

もろこしの  慈童じどう  が菊のながれに  よはひをのべて、七百歳をへしかとも。かたちは、ただ十六、七なり。ほうそ  といへる仙人に成けん。

※ 「ほうそ」は中国古代の伝説上の人物、彭祖ほうそのこと。

それよりこのかた、菊を  延年草ゑんねんさう と名づく。陽九やうきうといふは、九月九日は、これ大陽の日にして、人かならず  えやみ  につらふ事あれども、菊のさけをのむときは、かならず  やまひをのがるる  とかや。

※ 「えやみ」は 疫病みえやみのこと。

されば、わが朝には、賀州に  菊酒あり。むかしは、きくの山ありて、谷水ながれ出たるを、酒につくりて  のみけん。人みな、一百、二百のよはひをたもちて、やまひなかりし。そのためしより、いまにつたはる名物なり。

※ 「賀州」は加州、加賀国のこと。


 花すすき 草のたもとの 露けさを
    すててくれ行 秋のつれなさ


出典:国立国会図書館デジタルコレクション『十二月遊ひ 2巻 下



食用菊
Photo by mominaina



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