【絵本野山草】(1) 甘菊花/紫蕙/花蔓草/熊谷草/敦盛草/ほたる草
甘菊花
南陽酈縣ニ甘谷アリ。水甘美也。上ニ多ク菊アリ。水ニ落テ流下ル谷中ノ人家、此水ヲ飲上、壽ハ百二三十中ハ百余歳七八十ヲハ夭トスルナリ。
※ 「甘菊」は、料理菊の古名。
甘菊花
花、五六月より十月まで
葉 つねの 菊葉の ● り丸し。花の色、白、黄。さかやき有 菊也。高さ 一尺ばかり、又は、四五寸 斗。山谷に有。野原にも有。あぢはひ 甘きを以て、甘菊といふ。菊児童にあしらふも是なり。
『唐本草』に 菊花
一名 女節 一名 女■ [■は蕐-从]
『劉蒙菊譜』 三十五品、又、三十二品
『范石湖菊譜』 七十二種
今 不 止 一種甘菊を
莖 紫 氣香 味 甘 花 深黄 ■葉 有 粥膜衣 [■は吅+早]
者を 為 花を 作 糕と 幷に 鹹烹飲佳
又、有 鴛鴦菊 五月菊 六月菊
陸龜蒙 有 把菊賦
曾 端伯 以 為 佳友と
※ 「菊児童」は、菊慈童。謡曲「枕慈童」の別名。また、長唄、歌舞伎の外題「乱菊枕慈童」。
※ 「劉蒙菊譜」は、劉蒙によって編纂された『菊譜』のこと。『菊譜1卷』(国立国会図書館デジタルコレクション)
※ 「范石湖菊譜」は、南宋の政治家・詩人、范成大によって編纂された『石湖菊譜』。号は石湖居士。
※ 「鴛鴦」は、カモ科の水鳥、オシドリのこと。
※ 「陸龜蒙」は、晩唐の詩人、陸亀蒙。
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紫蕙 シケイ
しらん 三子月 花咲 紫けい とも云。
漢名 白及
紫、黄蕙のはに似て、ながくこはし。花しのたちのびて、らんのごとき 本紫色 の花さく。花のうち 舌あり。同く、紫いろに白き ●● すこし有 あり。又、うすむらさき有。うすけいとも、紫けい、ともいふ。又、白けい、といふ有。花のいろ白し。一種、白に紫の 咲わけ有。葉ほそく長し。つねの葉よりは 小葉にして 茎をまき、だん/\に葉 出る。至極 見事なり。
花蔓草
けまん草 漢名 荷苞牡丹
又、黄けまん 漢名 馬芹
はなのかたち、けまんのかたち、だん/\につらなり、黄けまん 菊のかたち、やぶにんじんの葉のごとし。はなのかたち、せいらんのはなに似て、色 黄なり。けまんの名あれども、くさみして、別にちがひあり。はな、三四月まであり。
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熊谷草
芲ノウテナ白六 芲コフンウス生エンシクマ
ホシクサノシルスシ同
花三月
花のかたち母衣のごとく、色白く、葉は 款冬の葉に似て、こはくあつし。
※ 「母衣」は、甲冑の背につけた幅の広い布のこと。
※ 「こはくあつし」は、強く厚し。
敦盛草
芲地白キソノサキヨリ生エンシクマ内ソコヨリ同
クマスシホシ同生エンシ
花二月
また、敦盛草は、色 うす紅也。葉 さゝはなり。花のかたち似たり。是 其類。漢名 莪木。
ほたる草
ほたる草 四月中はな有
葉 柳葉に 似て、あつくつや有。花ちいさく、いろ 本るり、そこ白し。るりと白との 間にあいべにのほし入り、うちにほそきしべあり。至極 見事なり。蔓 生ず。茎をふせ、根をおろす。ほたるかづら、ともいふ。又、るり草、とも、玉かづら、ともいふ。たけ 五六尺ばかり。谷にあり。
筆者注 ●は解読できなかった文字を意味しています。
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