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本阿弥光悦の大宇宙を見たはなし。

――実は当日まで小宇宙だと思ってました。

 和食展を観に行った翌日、今度は朝早くから東京国立博物館(以下トーハク)へ特別展「本阿弥光悦の大宇宙」に行ってきました。

 建立900年特別展「中尊寺金色堂」とのセット券を買ったので、展示品の多い光悦から攻める作戦です。

2/4時点の人手について

 まだ口コミ力が低いのかグッズ狙い組がいないのか、開場30分ぐらい前でも待機列はそれほど伸びていませんでした。これから当日券買う組が多く、前売券組も金色堂と二分されるので、開場すぐに光悦展に向かう人は待機列からグッと人数が減った印象です。

 そもそも本当にヤバい入場者数見込んでるならコロナ5類化後でも日時指定制にしますしね。敷地内にも早く入れて平成館前で改めて列作りますし。

 私が基本的に展覧会は朝イチを狙うのはコインロッカーの確保(特にトーハクの平成館は2Fのロッカーが取れるかどうかで買い物の利便性が段違い)なんですが、全て見終わったあとでもコインロッカーに余裕はあるようでした。


感想

 展示は四章構成ですが、内容は天井から下がる垂れ幕でおよそ5種に分類されてる感じでした。後半の「漆」に該当する「船橋蒔絵硯箱」が第一会場入り口でいきなり待ち構えてます。

 こう言っちゃアレですが、美術の素人にとってモネの睡蓮並に「光悦? 散々見たことあるしなぁ……」になりがち要因をいの一番に差し出されると、観る側は「えっもう船橋出しちゃうの? この後の展示はどうなんの?」と先が気になること請け合いです。

 実際、私も幾つかの漆芸と俵屋宗達とのコラボ作品は観たことがありましたが、本阿弥家が日蓮法華宗に深く帰依していたことや謡本への影響は知らず、大変興味深く鑑賞することができました。

8KCG 北野江

 私は刀剣乱舞ユーザー(以下審神者)なので本阿弥家の家職が刀剣の鑑定や研磨であることは知っていましたが、光悦が分家の出だったこと、刀剣の極めは誰かが単独で行うのではなく合議制だったことは本展で初めて知りました。

 審神者的にはやはり実装済みの「後藤藤四郎」に注目がいくのですが、お値段について本阿弥家内で意見の相違があったというのは興味深かったですね。なお多数決?で普段とは異なる作風を高く評価したお値段となったようです。詳しくは図録または音声ガイドでどうぞ(ダイマ)。

 公式サイトでも紹介されている「北野江」が恐らく刀セクションの代表格で、美しい刀なのですが何と言っても「金象嵌銘の字が光悦」というのが大きいんでしょうね。いま図録を見ても津軽正宗の金象嵌と明らかに字の雰囲気が違います。

 代表格ということは名物帳の展示も北野江が記載されてるページが開かれてるわけで、ここ「富田! 松井! 桑名!」と審神者とくに江の者のテンション爆上がりな内容です(富田の右の説明文は稲葉パイセン、北野の裏に亀の文字が見えたので調べたらやっぱり亀甲貞宗でした)。富田は稲葉パイセンのおかげで実装内定が判明してるから追加で北野も来てください。

 あと刀絵図も刀剣乱舞実装済みの刀剣のところが開かれてます。

――ここを書いてる時にFELISSIMOから刀剣乱舞コラボグッズが届きました。ええ私も江の者です。本命は愛染国俊ですが。

FELISSIMOのグッズ

 なんか展示の感想なんだか刀剣乱舞への所感なんだか判らなくなってきました。

 光悦の差料である志津兼氏作の銘「花形見」は銘が謡曲由来ということで「観世正宗」とセットでお能に造詣の深い刀剣男士として実装して欲しいなぁと思いつつも、図録カラーページ(および音声ガイド)では「分家でも宗家を継げるのだという光悦の秘めた思いが込められているかもしれない銘」という解説が、図録掲載の論文にある「光悦は一族の存続を第一として裏方に徹した」という説と真逆で興味深い。

 光悦の書による扁額が多く展示されています。前々から思っていたのですが扁額の字って木材に直接揮毫してから周囲を彫るのでしょうか? あと「花唐草紋螺鈿経箱」が美しい。螺鈿だいすき。

8KCG 蓮下絵百人一首和歌巻断簡

 書の展示全体を見て「光悦って字の肥痩つけて書くのが好きなのかな」と感想を抱くあたり素人丸出しですいません。

 やはり「鶴下絵三十六歌仙和歌巻」は圧巻ですね! 鶴の動きが激しいほど字が太い気がする。こちらに限らず、下絵と散らし書きのバランスがほんとに素敵で、どちらが欠けても物足りないって感じます。

 一番好きなのは「蓮下絵百人一首和歌巻断簡」ですが、これは私の花の趣味が入ってます。

 雲母摺の装丁が美しい「光悦スタイルの書体で書かれた」謡本もたくさんあって凄く良かったんですが、図録の論文を読むと「光悦の方が謡本のスタイルを取り入れたのでは?」という説もあることが判りました。

 書簡や書写もたくさんあります。前田家へのお遣いのお伺いや茶碗用の陶土の取り寄せ、贈り物のお礼状。後年中風に罹って字に震えが表れるようになったとのことですが、自分にはそれが「悪いもの」には見えませんでした。単に崩し字が読めないからかもしれませんが。

8KCG 舟橋蒔絵硯箱

 ここが一番華やかで「光悦!」って感じのセクションですね! 豪華な金蒔絵と渋い鉛の組み合わせ、見立て、大胆なデザイン。硯箱の内側も隙が無い。

 「忍蒔絵硯箱」は外側も内側もびっしり忍草の金蒔絵で覆われて、蓋裏に鉛と厚貝の兎が二羽隠れてます。鉛による和歌の一部もある。光悦作と思うと割とシンプル(?)なのですが、よく観ると蓋表の忍草は密度がグラデーションしてて「こんなところが凝ってるのか!」と驚きます。

8KCG 黒楽茶碗「村雲」

 最後は光悦作を中心とした楽焼が並ぶセクションです。オンリー楽焼。光悦は全て手捏ねで器を整形したとのことで、赤楽茶碗の「乙御前」なんかはぽてーっとして可愛らしいです。「赤楽兎香合」も面をザクザク取った形が描かれた兎より好きだなぁと思いました。

 しれっと楽家の茶碗が展示に混じっているのですが、光悦の茶碗と器の全体的な雰囲気が違うなぁと思います。


特設ショップ

今回購入したグッズ

 今回は舟橋蒔絵硯箱のマスコットはありますが、変なクッションはありません。

 紙モノが多く、そえぶみ箋や折り紙のほか忍蒔絵硯箱や鶴下絵モチーフの文箱、筆立などがありました。文箱はちょっと惹かれましたが、価格を観て「いや、これ好きな大きさの厚紙箱作った方が安上がりだよな……」と思ってしまった……。代わりに買った折り紙と他の無地の和紙を組み合わせたら面白いのが作れそうです。そえぶみ箋そこまで集めてるタイプじゃないんですが蓋付きのそえぶみ箋箱作るのも面白いかもしれない。

 展覧会のオリジナルグッズではない物販に雲母刷りの料紙がありました。謡本に使われていたので気になりましたが、めっっっちゃ高くて書道できない自分が買ってはいけないものだと断念……。


コラボスイーツ

 法隆寺宝物館にある「ホテルオークラ ガーデンテラス」にてホットチョコパフェ(1600円)が提供されています。GOLD×BLACKがテーマ。冷たいパフェにホットチョコレートをかけるという発想は無かった。甘酸っぱいチーズケーキとけっこう合います。

ホットチョコパフェ

図録

 タイトルは展覧会のメインビジュアルと違ってすっきりと細い字なんですが、メインビジュアルの書体のほうが私は好きです。残念。

 内容は充実してて各種論文が面白かったです。ほんと勉強になります。この記事書いてる最中もしょっちゅう参照しました。買いです。


※会場内で上映されていた8KCG映像は写真撮影可能であり、非営利目的ならば感想記事への掲載は問題ない旨確認を取っています。

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