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超私見による“文学悪女ランキング・ベスト3”

さて、
第1回ビューティー悪女フェス
(そんなのやってたのか)

最終日は、

わたくしモミによる超私見の

” 文学悪女ランキング・ベスト3 ”

を、開催したいとおもいまーす!ワーパチパチ!


私が現時点までに
読んだなかでの狭いランキングですが(笑)、
まあまあいっちゃいましょー!



第3位

有島武郎 「或る女」より “ 葉子 ”
谷崎潤一郎「卍」より “ 徳光 光子 ”

…とみせかけて
「或る女」より “ 葉子の妹・愛子 ”(!)


まず、
ガワは悪女として完璧に見えて、
いまいち振りきれなかった
葉子・光子の2人。

自分が美しいことを自覚していながら
同時に身の内の空虚さも自覚しているので、
本当のところは自信がなく、
不安を育てに育て上げた結果
周囲を盛大に巻き込んだ
大破滅へと向けて突き進んでしまう
運命もまた、よく似ています。

とはいえ、
2人とも読むものの心に
強烈な爪痕をのこしていきました。
彼女たちなりに懸命にもがき生きた、
その健闘を誉め称えたい。


どちらかというと、天性の素質があるのは
お葉さんの妹の愛子さんでは
ないかと思います。
それを本能で感じ取っていたからこそ、
お葉さんは、愛さんを “ 女 ” として
目の敵にしていたのだと思います。

雰囲気が、痴人の愛の
“仕上がる” 前(笑)のナオミちゃんに
すごく似てるんですよね。

まだ自我も芽生えていないような、
何を思い、感じているのかを
なんともうかがい知ることができない、
つかみどころのない感じ。
何かを強く好きとも嫌いとも
表現することはなく、
とりあえずは、
与えられるもの・状況を拒まないので
なんでも受け入れているように見える…
見えてはいるが、
本当に受け入れているかもわからない、
虚無の暗闇のような子。

あさきゆめみしの女三の宮にも
通ずるところがあるように思います。

どう転ぶか、
稀代の悪女になるのか
それとも全くならないかは、
影響を与える男性
またはどういう自我が目覚めるか、
にかかっているという感じ。
どっちに振りきれるかわからない、
未知数のポテンシャルを秘めた娘だなと
思いました。
おそろしい子…!

ということで愛さんは、
伸び代は無限大ながら、予備軍なので3位。



第2位

谷崎潤一郎「痴人の愛」より “ ナオミ ”



出ました、伝説のモンスター・ナオミ!(笑)

もうエリートですからね。
英才教育受けてますから。
悪女版マイ・フェア・レディ
といったところでしょうか。

作中屈指の名言、
「じごく!」
以上の呪詛には、
まだお目にかかったことがありません(笑)
悪女として、ある意味最大の賛辞です。

しかし
そんなじごくモンスターにしたのは、
他でもない譲二自身。

自分の空虚さを自分自身で埋めようとせずに、
ナオミちゃんをその埋め合わせのための
“ 道具 ”として扱ってきたのですから、
ナオミちゃんから
ナオミちゃんの “ 道具 ”としての
余生をお返しされるのは、
至極当然の結末かなと。

まあでも
端から見ればどうでも、
譲二が自分が造り上げたモンスターに
自分で骨まで喰い尽くされるという
本望でハッピーなお話だったと思います。

なんか結果Win-Winぽかったし、
いいんじゃないですかね(笑)

とはいえ、意外や2位でしたね。

というのも、
ナオミちゃんは悪女として
やっぱり人工物かなって思うのです。
どうしてもどこか
マネキンっぽい感じがある。

天性ナチュラルの部分もいくらか
あるものの、大部分は
計算しつくされたものだからでしょうか。

それでも、
その計算の当たりをけっして
疑わない腹の据わりっぷりは、
堂々の悪女です。
やったねナオミ!



さあ!きましたね!
堂々の第1位!

“ ザ・ロード オブ悪女 ”に
輝くのは………!?



第1位

有吉佐和子「悪女について」より

“富小路 公子 (鈴木 公子) ”


この人はもう本当に、
ナチュラル・ボーンなやつだと思います。
ぶっちぎりの1位です。

演出もおおいに作用しています。

公子本人の視点・心情は
いっさい語られず、

本当のところはすべて “ 謎 ” だからです。

というのも、全編をとおして
彼女はすでに故人なのです。

他殺か、自殺か。
突然の謎の死を遂げた女実業家は、
“ 聖女 ” であったのか、
“ 悪女 ” であったのか。
関わった様々な人たちの証言から
追っていくのですが…

もうみんな言うことが違う違う。

「天使みたいな心の美しい女だった」
「とんでもない悪女だった」
「宝石に関しては嘘はつけないはずだ」
「偽物を本物の宝石と偽って売りつけられた」
「大輪のバラのような華やかな美人だった」
「地味なパッとしない女だった」

二転三転、
絡まりあう糸のようにもつれる像。

それでも、

“ 美しいものを愛したこと ”

など、朧気ながら
共通の動かないものも見えてくる。

そしてその性質を軸にして、
他人からは相反して見える行動も、
どうやら彼女のなかでは矛盾なく
やってのけていたようであることが見えてくる。


そして、戦慄するのです。


だってそうであるなら…

“ みんながしあわせになる ”
ことと純粋に心から信じて、
悪事を働いていた可能性がある
のですから。


罪を知らない。
ゆえに罪を犯すことをおそれない女。


だとしたならもう、
これ以上の “ 悪女” がいるでしょうか。

おそらく存命中に
悪事について詰め寄っても、
会話が成り立たなかったことでしょう。

“ 良いこと ”をした自覚しかないのですから。

“ 聖女 ”であることと
“ 悪女 ”であることを、
自身のなかで整合性をもって両立して、
平然と生きていられる。


本物のモンスターです。


そんな内に抱える闇の深さからも、

富小路 公子が、
やはり最強なんじゃないかと
思うのです。


あと、
証言の数少ない共通点として、
口ぐせが

「まああ」

であったことがあがってきます。

そしてなんと…

読んでしばらくの間、
この「まああ」が
自分のなかで流行ります。
それもとてもおそろしいです(笑)



以上でした!
楽しんでいただけましたでしょうか?


1位は惜しくも譲ったものの、
やっぱり谷崎勢つよいですねー!(笑)

悪女というか、
魔性の女の見本市みたいなとこ
ありますものね。


どの人物にも
それぞれの味わいの毒があって、
単色ではない複雑な色あいで、
色とりどりに美しい。


だからこそ
“ 悪女 ”の魅力、興味はつきないのです。


…って、

あー!


黒蜥蜴入ってないや!
なにやってんだー!(泣)

ごめんなさい、
入ってないけど大好きです!



◎或る女 有島武郎
◎痴人の愛 / 卍 谷崎潤一郎
(ともに青空文庫)
◎悪女について
有吉佐和子 / 新潮文庫


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