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人類学的ジェンダー平等と私

今日はなかなかに忙しい一日だったのだけど、その分いろいろと発見もあっておもしろい日だった。

午前の授業の後、人類学の授業内課題のために、実際のフィールドワーカーである人類学教授にお話を聞きに行った。
ざっくり言うと、フィールドワークをする中でジェンダーの観点から困難を感じた経験を教えてもらうことが目的だった。

あまり詳細に紹介できなくて申し訳ないんだけど、とにかくそのお話が今まで気づかなかった視点や、わかっていたけど現実味を伴っていなかった事柄を実感させてくれるもので、とてもおもしろかったのだ。
その中で、私は「ジェンダー平等への人類学の目線」についてあれこれ考えさせられた。

人類学を学んでいる人にとっては基礎の基礎だと思うが、この学問が大切にしていることのひとつが『文化相対主義』だ。かつての西洋中心かつ植民地主義的な人類学という歴史があるからこそ、この言葉を大切なキーワードとして繰り返し伝えているのかもしれない。
一方で、ジェンダー平等を目指すということは、ひとつの理想の型があって、それを追い求めるということでもあるかもしれない。実際、ジェンダー平等の度合いをはかる指数として一般的になっている『ジェンダーギャップ指数』というのは、西洋中心主義的な面があることは否めない。本当はもっと、国ごとのジェンダー平等の形があってもいいんじゃないかという論を授業内でも聞いたことがある。

今日のインタビュー内でも、教授の話の中に出てきた男女の不均衡によって女性が被る理不尽な害の例を聞いたとき、私の脳内には現地の劣位に置かれる女性の存在が浮かんできて、どうすれば彼女たちが生きやすくなるのかといったことを考えてしまったし、教授が受けたセクハラの話に対しても、そこに存在する女性蔑視の構造の方に目が向いてしまった。
私はいつもの、GSS専攻やフェミニズムに精通している友だちに話すように、社会構造にやっぱりまだまだ問題があるんですね…みたいなことを言った。それは私の率直な感想だったのだ。
すると、教授は「確かにそうなんだけど、自分たちは勝手にその文化にお邪魔している身なわけだから、そこであなたたちの社会はここが間違ってますよ!!なんて指摘はできないよ。」とおっしゃっていた。
それは、本当にそのとおりだ。あなたたちの社会は遅れているから、もっと良くなるように変えてあげますよ、なんていうのは、それこそ帝国主義的だし、平等な関係性に基づいていない。
人類学の目的は、調査先の社会を変えることではない。もちろん研究者によって様々であることに違いはないけど、調査の第一の目的は、その場の文化や社会を記録し、多くの人に伝えることではないかと思う。私は人類学を専門に学んでいるわけではないから、ざっくりとした私の考えだけどね。

そうやって記録された文献があるから、ジェンダー・セクシュアリティ研究や開発学のフィールドにいる人々が、社会を変えるための情報を手に入れることができるという面もあるし、とても密接に繋がっている学問分野だとは思う。
でもやっぱり、エゴであるとか上から目線だということはわかっていても、その社会の中に実際に苦しんでいる人がいるのなら、できる形で平等な社会を実現する手助けがしたいと思ってしまうのだ。

例えば、よくわかりやすいのはムスリム女性の例。
ムスリムの女性は、ヒジャブなどで肌を隠さなくてはならず、それが女性の主体性を奪い、男性の所持品と見なすことと同義ではないかということで長いこと議論されている。
しかし、おわかりのようにこれもまた外の世界からの上から目線の指摘とも言えるわけだ。実際に、ムスリムの女性の中にも、自分の女性としてのアイデンティティやポジションを大切に思い、満足している人もたくさんいる。その思いを無視して、なんでも西洋中心に批判するのも違うかもしれない、という見方もあるのだ。
このテーマを授業で聞いたとき、私は
「わかっていても、ムスリムの女性がもしイスラム教と出会わない人生を歩んでいたら、もっと自由だったかも…と思ってしまう」
と教授に言った。ぐちゃぐちゃした思いをそのままぶつけた。すると、教授は
「彼女たちも、私たちのことをイスラム教徒じゃないなんてかわいそうだ、って思ってますよ。」
と答えた。

なんとうか、この世界を見る視点は一個ではないし、統一された正しさもやっぱり存在しないんだなぁと思う。
できる範囲で、差別をなくしていくことは私達の使命だと思っているけど、あまりに偏った文化を元にした視点では語りたくないし、しっかりと多様な視点から社会を見つめなきゃな…と感じる。

今日は改めてそれについて考えさせられたし、自分のスタンスや、ジェンダー研究をやる上での自分の心地の良いポジションを見つけるために考え続ける必要性にも気づかされた。

思ったことを次々に書き連ねたので、曖昧な記憶も混ざってるし読みにくかったとは思いますが、ここまで目を通してくださりありがとうございました🌟

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