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明日オヤジに聞いてみよう / 井上雄彦『SLAM DUNK』

『SLAM DUNK』にまんまとハマった。

文化部だったしインドア寄りなので、スポーツ漫画にはずっと興味がなかった。でも、ただの食わず嫌いだった。バスケをほぼ知らなくても、めちゃくちゃ楽しめた。

やっぱり大勢の人が良いと思うものにはそれだけの理由がある。何事も、興味がないからという理由だけで味見すらしないのはもったいないなと反省した。

きっかけはもちろん(?)、昨年公開の映画『THE FIRST SLAM DUNK』だ。仲の良い友達が何度も見に行ったと言うので、「そんなに面白いの?どれどれ私も」と気になって見たくなったのだ。

でも、誰が誰だかマジで何も知らない状態で、映画をいきなり見て本当に楽しめるか不安だったので、少しは予習しておこうと思った。Netflixでアニメが見られることを知り、早速見た。

原作漫画は、1990年〜1996年にかけて『週刊少年ジャンプ』にて、276話にわたり連載。アニメは1993〜1996年に放送、全101話。

何も知らない私でも、あの赤髪の男が「桜木花道」ということくらいは知っていた。

6年もかけて276話ってことは相当長い成長ストーリーなんだな。よ〜し見るぞ〜と意気込んでアニメを見始めた。

第1話の感想。
桜木花道ってこんなおバカキャラだったんだ。てかスラムダンクってこんなにギャグ漫画だったんだ!

私のイメージでは、赤髪の男は怖い顔の不良で、バスケが上手な、熱い男だと思っていた。ギャグ漫画じゃなく、真面目なスポーツ漫画だと思っていた。けど全然違った。(もちろん真面目なバスケシーンもたくさんある)

花道、バスケのルールさえ知らない超超超初心者やん!ダンクどころかドリブルもできてないやん!
そのくせ「この天才桜木!」と連呼。その自信どっからくんねん。笑

おバカな花道にツッコミながら、いつの間にか私もどんどんバスケに詳しくなっていく。

ほうほう、5対5でやるスポーツなのね。ゴールに入れたらいいだけじゃなくて細かい制約がたくさんあるのね。うわぁ、バスケって想像以上に難しそう…

そして少しずつバスケの世界に慣れてきたころ、花道が合宿でシュート練習をすることになる。勢いとポテンシャルだけでバスケを始めた花道なので、まだ基礎を身につけられていない。そこで監督が「シュート2万本」という課題を課す。

不良仲間も一緒に練習に付き合ってくれて、応援やヤジを飛ばしながらも、監督の依頼でビデオカメラで花道を撮影。ビデオに映った自分のシュートフォームを見た花道は、セルフイメージと現実があまりに違っていたことを初めて知る。

「ウソだ……コレがオレ?」
(違う…!こんなのはオレじゃねぇ…!このカッコ悪いのは誰だ…)
「高宮!おめーの撮り方が悪いんだ!オレはこんなうち方してねーぞ!」
「してるって」
「認めん!おめー カメラになんか小細工しただろーが!」

井上雄彦『SLAM DUNK 完全版#17』(2001,集英社)より


カメラのせいにすんな(笑)

しかし、その悔しさをバネに、より一層練習に励む花道。夜みんなが寝たあと、ひとりでビデオを見返すシーンで、私は一気に花道の虜になった。自分のシュートフォームをチェックしながら、こうつぶやいたのだ。

もーちょっとボールは 高く上げた方がいいかな…
明日オヤジに聞いてみよう

同著より

オヤジとは監督のことである。「あきらめたらそこで試合終了ですよ」で有名なあの監督。(花道の父親ではない)

このセリフで、私は花道の素直さにやられた。
可愛い!花道がとにかく可愛すぎる!花道がんばれ!!

17歳の時にこのシーンを見ても、きっと何とも思わなかったと思う。でも、アラサーの私には、高校生男子のこのセリフは、あまりに健気で可愛く見えた。

バスケが本当に好きで、もっとうまくなりたい。
何をしたらもっとうまくなれるのか?
一体オレはどこを直したらいいのか?

人をすぐ殴るあのバカな花道が、一生懸命そのことにだけ集中している姿がまっすぐで心を打たれた。不良仲間の水戸洋平が花道を見守りたくなる理由もわかる。

最初は「これはオレじゃない!」と認められなかった花道だけど、自分のかっこよさとか下手で恥ずかしいとか、そういうプライドを全部忘れて、「うまくなるために自分は何をすべきか」だけを考えている。

そして、カッコつけてこっそり猛特訓するのでもなく、「明日オヤジに聞いてみよう」と素直に周りに頼ろうとしている。

その姿勢が、とても素敵だと思った。その素直さが花道の一番の魅力で、きっと成長する人はこういう人なんだと思った。

恥やプライドが邪魔して、わからないことを素直に周りに聞けないのは、もっとカッコ悪いし、遠回りだから。

花道はきっと翌日、「オヤジ!教えてくれ!もうちょっとボールは高く上げた方がいいのか!?」って偉そうにタメ口で聞いたんだろうな。笑


結局、アニメは長すぎて最後まで観ることができないまま、中途半端な知識で映画を観てしまったのだが、それでも本当に本当に良かった。その感想はまた違う時に書こうと思う。

その後、アニメを最後まで観た。また映画が観たくなり、追加で2回観に行った。アニメは、「え、ここで終わりなの?」というところで終わったが、色々と大人の事情があったらしい。(漫画は完結している)

だからこそ、20数年ぶりに映像で花道たちと再会できたファンは、それはそれは感動しただろうなと想像した。(幅広い層が観たというよりも、ファンが何度も観た結果のヒットだと勝手に思っている。)

何よりおもしろかったのは、6年もかけて276話連載しているのに、物語の中ではたった4ヶ月ほどしか経過していないということ。初心者が4ヶ月で夏のインターハイにスタメンで出てるということ。笑

花道の成長スピードと、チームの信頼関係、
半端ねぇ〜…

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