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11.10清宮海斗VSティモシー・サッチャー〜王者が見せた新しい景色の片鱗

プロレスリング・ノアの11.10後楽園ホール大会。ダークマッチを除き全試合がタイトルマッチという珍しい型式で行われたこの大会。どの試合もメインイベントと言われても過言ではない素晴らしい大会でしたが、その大会を締めたのはGHCヘビー級王者清宮海斗でした。

今回の対戦相手はティモシー・サッチャー。WWEでも豊富実績を挙げた強い選手です。当初はノアのシングルリーグ戦N-1に出場予定でしたがビザ発給遅れによって欠場。それでもタッグ戦線からチャンスを得ると、圧倒的なレスリングスキルと関節技を武器にノアで白星を積み重ねていきました。10.30有明アリーナで藤田和之を破った清宮に挑戦表明を行ったのは自然な流れでしょう。

この日の試合の注目は「サッチャーのサブミッションを清宮がどう封じるか?」という部分でした。サッチャーは入場時から圧倒的な殺気を放ち。一方で試合中もグラウンドでの巧なポジショニングで、どんな体勢からも最終的に清宮の腕の捕獲に至るロジカルさもあり。まさに世界基準のレスリングを展開していきました。

しかし「論理性のあるレスリング」であれば清宮も負けません。むしろそうしたテクニカルな試合こそ清宮の良さが出る流れです。サッチャーの強さがあり清宮が耐える時間が続いたのは事実です。しかし腕を狙うサッチャーに苦戦はしたものの、それでも徳俵に足をかけて踏ん張る。サッチャーを極めるには至らずとも。サッチャーもまた清宮を極めきれない。膠着状態にはならず、両者がグラウンドで常に動き続ける。高い緊張感を維持しつつも観客を飽きさせることなく試合の時計の針が進む。これは両者ともに高いレスリングスキルがあればこそです。片方だけに高いスキルがあってもこうした緊張感を長時間維持することはできません。

勝負の分岐点になった終盤の流れも秀逸。サッチャーのエルボースマッシュを清宮が反転し逆さ抑え込み。そこからサッチャーが清宮の左腕を捕獲。清宮はそれを更に回転して振りほどきシャイニングウィザードを二連発。そこから頭部抱え込み式のシャイニングウィザードを狙う清宮。サッチャーはここで飛び込む清宮から左腕を捕獲。

これで万事休すかと思いきや逆さ抑え込み状態で清宮はサッチャーを振りほどきスタンド式のシャイニングウィザード。そして今度こそ頭部抱え込み式のシャイニングウィザードを鮮やかに発射し、清宮が勝利を収めました。

37分の激闘を乗り切った清宮。相手のペースにギリギリまで合わせつつ。最後にラストスパートを仕掛けて振り切る。藤田戦とサッチャー戦は表現方法は異なれど、大枠としたは似た形でした。どんな相手にも対応できる技術。そしてラストスパートを仕掛けられるスピードとスタミナ。清宮がこれらの力を有しているからこそできる。まさに清宮だからこそできる戦いでした。結果的にここまでの防衛戦はノアの過去の名勝負をなぞらないモノでした。しかし過去に寄せずに己の力で絵を描くことに挑戦し。高い水準でそれを見せた。これには私も驚き脱帽しました。

試合後にリングに現れたのは前王者の拳王でした。9月に戦ったばかり両者ではありますが、ノアが本当の意味で新しい景色を見せるには?やはり彼らの(三沢光晴を知らない彼らの)試合が必要でしょう。
※以下の動画は彼らのGHCヘビーを巡る最初の光景です。


23年元旦の日本武道館大会がとても楽しみになりました!


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