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山種美術館で出会う朱玉の日本画 正しい美とはなんぞや 〜上村松園、上村松篁

桜の咲きはじめた日曜日、
暇を持て余してる長男と、一度行ってみたかった広尾の山種美術館へ行ってきました。


山種美術館は日本画専門の美術館。
日本画家と交流のあった山崎種二さんが個人で集めた日本画の展示と、まだ無名の画家を育てるために始めた美術館とのこと。

自分の名前を略して山種にしちゃうのって、
なかなか粋ですね。
山種さんって呼ばれていたのかな。

山種さんは日本画の発展と作家の育成に投資して日本の美術界を支え、言わば日本版メディチ家的なことをされてた訳ですね。


この日は山種さんとも深い親交のあった上村松園とその息子、
上村松篁をメインした企画展示でした。

上村松園といえば美人画。

日本画家の名前はなんとなく覚えているけど、
年表は全然。
松園は明治に活躍した画家さんで、
男性の画家だと思ってましたが、
女性でした。


松園の描く女性像は
女性の目からの表現だからか、
色気よりも
美しさの中に素朴さがあって、
美人画といってもいやらしくない。爽やか。

女性がただそこに居て、
髪や指が語るように動いて、
着物の色が飾ってる。ただそれだけ。

それだけなのになぁ。なんだろね、この空気。

表装も素敵だったなぁ。
ザ、日本画の世界。

松園ってシングルマザーなんですね。
明治時代、女性でありながら画家として名を残せたのは、よっぽど芯の通った人だったんじゃないかなぁ。
どんな人だったんだろうか。


松園が語った言葉も添えられていたんですが、こんな気持ちで絵と向かい合っていたのかと感心してしまう真摯な言葉。

「一点の卑俗なところもなく、
清澄な感じのする香り高い朱玉のような絵こそ、私の念願とするところのものである。

その絵をみていると邪念の起らない、
またよこしまな心を持っている人でも、
その絵に感化されて邪念が清められる……といった絵こそ私の願うところのものである。

芸術をもって人を済度する。
これ位の自負を画家は持つべきである。」


、、、もう、平伏すしかない。

しばらく絵の前でも、
この言葉の前でも考えてしまった。

後半は上村松篁の花鳥画。息子さんです。

ところで
上村松篁「うえむらしょうこう」ってすんなり読めますか?

一応美術系のわたし、
画家の名前も結構知ってる方なんじゃないかと思うんですが、
あやふやにしてて読めてなかったので、
これを機にちゃんと覚えましょう。

篁という字は、漢検1級レベルで、
iPhoneでは「たかむら」と打つと漢字がでてきます。
たけやぶという意味なんだそうです。

松とたけやぶ、ですね。
はて、どんな由来で名乗っていたのかな。

松篁は鳥の画家。

家に大きな鳥小屋を作り、
日々鳥たちと向き合っていたのだとか。

作品は、、、素直だなぁという感想。
動物って精神的に無に近いじゃないですか。
神様に与えられた羽と眼差しと、
その鳥たちが美しくて
描きたいという純粋な邪念の無さ。

私が高校の時の美術の先生は日本画家で、
日本画で大事にするのは「臨在感」だよ、
とおっしゃっていた。

改めて調べると、
臨在とは見えなくても、
その背景に何かあると感じさせること。

先生は美術選択した生徒の私たちを
自宅に招いてくれたり、
旅行に連れて行ってくれたり、
ほんとに良くしてくれたな。
一緒にただ楽しんでくれた、というか。

空気を描く、
そこにあるように描くんだよ、
と話してくれて、
私は画家にはならなかったし、
きっとこの子はわかってないなぁと思われていたかもしれないけれど、
ただそこにいて、
成長する私たちとその空気を楽しんでくれていた。

良き大人の手本だった。

山種さんは曰く、
画家の作品はその人そのものだ、と。

松園の心を美しく保とうとするその試みに、感銘を受けていたのかな。山種さんも素晴らしい人ですよ。

第二会場の松篁の作品は
どれも素晴らしくて、とても優しくて、

ここにも松篁の言葉が紹介されていたのだけど、
作品を観て、言葉を探していた私の気持ちをそのままドンピシャに表現していた。

「良い絵と出会ったときは、逆に心が正しく、
あたたかくなって、ありがたいなぁという合掌するような気持ちにに引き入れてくれます。

清らかさ、高さ、あたたかさで、私の持っている悪い心をみんななくしてくれる、
まるでそこに帰依するような力を持っているように思うのです。」


はい、そう思います。
ありがとうございます。合掌。

「それがやはり余裕というものでしょうか。

私もそのいう心で絵を描きつつけたいと思います。
そしてそれが正しい美であると私は信じているのです。」


すごい親子だな。
継承された描くことへの思い。

絶対的な美はあると思うのです。

なんて、あんまり偉そうには言えないけれど、

絵を描く人でなくても、
どんな人でも言葉や行動で表現して、
清らかに生きたい、
生きられるようにしたい、
と思っているならば。

絶対的な美は
正しい美とも言えるのね。
良き学び。

来て良かったな。山種美術館。

来た人、きっとみんなそう思ってると思う。

お土産(見出しの写真)を選んでロビーへ戻ると
長男が本を読んで待っていた。

どうだった?と聞くと
「西洋画と違って日本画は線と面で表現してると言われてるけど、
線の強弱とか、面だけで奥行きとか出してるのがすごいと思った」
ふむふむ、それなら
あえて日本画専門の美術館に連れてきて良かったよ。

帰り道、枝垂れ桜が咲いてました。

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私は合掌するような気持ちで、
メモしておいた
松園と松篁の言葉について
息子と話しながら駅へ。

そして次の目的地、目黒寄生虫館へ。

息子のリクエストね。

日本画からの寄生虫。。。まぁ、いいけど。

全ては生命の成せる技。



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