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老犬ビーグルと老夫婦の夢のような散歩道、そして私は中島みゆきを口ずさむ(老犬介護生活7)


愛犬サト(享年17歳2ヶ月)が亡くなって、
初めての月命日の昨日、
私は、何気なく車を運転していました。


何が欲しいという訳じゃないけれど、
ずっと前からIKEAに行きたかった。

サトの介護の為、
IKEAはちょっとうちから遠くて
行くとなると長時間留守しなければ
ならなくなるので、ずっと諦めていましたが、
昨日行ってみることにしました。

買い物を終え、小2の息子の帰宅に
間に合うかギリギリになってしまい、
少し慌て気味に、車を走らせながら、
ふと側道を見ると白髪の老夫婦が、
年老いた真っ白な顔のビーグルを
カートに乗せて、歩いていました。

おばあさんが先頭を
おじいさんが後を追うように
老犬を乗せたカートを押しながら、
あまりにも颯爽と歩くので、
なんでだろうと不思議に思いました。

普通は、カートもガタガタ揺れるので
乗せてる犬の負担にならないように、
ある程度スピードを緩ませて歩くはずだし、
若い子を乗せているならまだしも、
年寄りのビーグルを乗せてるのに。

しかも、あまりにも老夫婦は歩き慣れた風で、
急いでるわけでもなく、
おばあさんは、時々後ろの老犬の様子を
伺うために振り返りながら、
おじいさんは、とにかく大股で
リズミカルに前に進んでいく。

そして、車で通り過ぎる時、
その謎が解けました。

老夫婦が歩くリズムに合わせて、年老いて、
たぶん四つ足で歩けないビーグル犬が
カートの中で、ずっと
前足で足踏みをしていたのです。

きっと、老犬ビーグルはカートの中で、
歩いているつもりで、
嬉々として前を向き、
いかにも楽しげで、
おばあさんとおじいさんは、
老犬の歩幅に合わせて
リズミカルにカートを進める。

国道の人が通るにしても細い側道、
老犬を乗せたカートを押して歩く老夫婦の
その光景を見て、
唐突にそして猛烈に私は泣きました。

たぶん、
火葬場でサトを見送る寸前に泣いたほどに。

そして、帰宅するまでの30分、
サトの名を呼び続けながら、
対向車の運転手が見たらたぶん引くほどに
場所を憚らず泣きました。
咽び泣くってこういうことかを実感しながら。

ただただひたすらに
羨ましくて。
私もサトとずっとこうしていたかった。
カートに乗ったサトの後ろ姿から、
いつも表情を伺うことはできなかったけど、
風を切る首の角度で
楽しげなのは伝わってきた。
もう無理だけど、
まだずっと一緒にいたかった。
もう無理だけど、
一緒にこうして歩きたかった。
もう無理だけど。

ーーーー

突然ですが、
こんな時には、中島みゆきなんです。

時代

今はこんなに悲しくて
涙も枯れ果てて
もう二度と笑顔にはなれそうもないけど…

そんな時代もあったねと
いつか話せる気がするわ
あんな時代もあったねと
きっと笑って話せるわ
だから今日はくよくよしないで
今日の風に吹かれましょう

まわるまわるよ時代は回る
喜び悲しみくり返し
今日は別れた恋人たちも
生まれ変わってめぐり逢うよ

作詞・作曲・歌 中島みゆき「時代」より


中島みゆきのいる時代に
生まれてきて本当によかった。
中島さん、歌を歌ってくれて、ありがとう。

ーーーーー

私はひとしきり泣いた後、
ふと、あの老犬ビーグルと
老夫婦の散歩風景を思い出していました。

きっと、あの老犬ビーグルの頭の中では、
色とりどりの花々や草木生い茂る散歩道を、
軽快に歩きながら、
ふと横を見ると
大好きで、
ちょっと今より若い老夫婦の飼い主が
ニコニコ笑いながら
付いてきてくれてるんじゃないか。

なんて素敵な夢なんだろう。

大切にされている犬や猫を見ると
嬉しくて胸がいっぱいになる。

幸せとはきっとこう言うものなんだろうね。

ねぇ、サト。
サトともたくさん幸せな時を過ごしてきたよね。
忘れずに、大切に胸にしまっとくよ。

そんなことを思った、サトの月命日でした。


by 金曜日の転寝

※トップの写真は、駐車場からサトの病院へ向かう道。もう二度と行くことのないサトとの思い出の散歩道。

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