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トカゲ少年記

僕はよく遅刻する子供だった。
朝起きは苦手で、いつも登校時間ギリギリにまで
朝ごはんを食べていた。
母に見送られゆったりと通学路を歩いて行くと、
いつもの大きな橋に差し掛かる。
ここが僕の遅刻する大きな要因の一つだった。
橋があるのだから当然その下には川が流れていて、水中や川の傍には亀や蟹がいる。
これを見るのが好きだった。
昔から動物は大好きで、見つけたらすぐに触りに行き観察していた。
そんな子供が通る道に橋があるのなだから、
立ち止まり観察し始めるのは当然。
早く家を出ていようが、ギリギリであろうが
御構い無しで10分でも20分でも30分でも
眺めていた。
朝なのもあり亀は甲羅干しに傍の段差に登り
じっとしている。
その数は10匹はゆうに超えていた。
川の中は海が近いこともあり、小さなエイなども
たまに観れた。
夏にはカワセミがいたり、大きな鳥がじっと立っていたり。
僕の好奇心を掻き立てるには十分な環境だった。
ある程度すると周りに人通りがなくなってることに気付き、学校に向かった。
無論この時点で教室には全生徒がついており
朝の会が始まっていた。
僕があいさつをして、のんびりと教室に入ると
先生に叱られた。
「なんで遅れてくるのか?」と聞かれ、
僕は素直に正直にありままに、
「川を見てました」と答えた。
先生は呆れていた。
その後学校から電話があったらしく、
放課後家に帰ると、母親から
「川は帰りに見て来なさい、
 遅れて行くのはダメ。」
と言われ僕は
「帰りじゃ亀が甲羅干ししてないし、
 いろんな動物が見れないよ。」
と言った。
母は否定するどころか僕の話を
聞いてくれて、どんな動物が好きかなどを
より深く話させてくれた。
母は頭ごなしに叱ることがなかったので
僕も少しずつ川見るのを放課後にずらしていった。
しかし、次に待っていたのは朝ドラだった。
6年生にあがった頃、NHKの朝ドラでゲゲゲの女房が
始まった。
その頃はまだブラウン管テレビで、録画することも
できなかったので、毎朝はじめの10分くらいを
見てから学校に行っていた。
これに関して母は、「また先生に怒られるよ?」
と一緒に見ながら言っていた。
毎日遅れて行くので、毎朝担任の先生から叱られた。
「またゲゲゲば、見よったんやろ?」
「はい、今日は紙芝居話で!」
僕が毎度この調子なので、
先生もとうとう
「トカゲくん、土日に総集編やってるから
 そっちを見なさい!」
と言う始末。
そう言われた時ですら
「へぇそうなんですか!土日も見ます!」
と平気な顔でそう言っていた。

何をするにも人より遅かった。
勉強はもちろんのこと運動も
音楽の時間にやる楽器も苦手。
唯一好きだったのが図画工作で、
一心不乱に絵を描いたり、
粘土で動物を作ったり、
普段の授業では絶対に見せない
集中力をその時間だけは発揮していた。
嬉しいことに先生からもよく褒められた。
隅から隅まで絵で埋め尽くされた自由帳や
授業や自宅で作ったものは捨てずに押入れに保管していた。
まぁ、ある程度すると母親が工作を一緒に
整理してくれた。
結局は絵以外はすぐに飽きるので捨てていたけれど。

日がな一日絵を描く子供だった。
休日、食事とトイレ以外はひたすら
絵を描いてた。
溜め込んでいた裏紙を束ねて、そこに
自分の好きな動物や妖怪、
アニメのキャラや空想で生み出した生き物など
そういったものを飽きもせず、1時間でも2時間でも
半日でも描いていた。
外出時には必ず筆記具とノートを持ち歩いていた。
どこに行くにもそれがないと手持ち無沙汰になり
帰りたいと言い出すからだ。

今日はここまで✋!

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