栽培植物のリスト 「桃」の歴史
さて、夏期講習で少々多忙になっておりました…。
そろそろ旬も後半、晩生品種が出回り始める「桃」についてです。
桃は夏ごろの代表的な果物、しかし傷みやすいので扱いには要注意ですね。
もちろん私も大好きです。
そんな桃はいったいどこで生まれ、どのように伝播したのでしょうか。
中国でも「桃源郷」という言葉があったり、かなりポジティブな意味で扱われる果物ですよね。
桃はどこから来たのか
桃の原産地は中国の黄河上流域あたりと考えられています。
それ以来、果物の王として3000年以上前から栽培されていたと考えられています。瑞々しく、甘く、そして赤みがかった(古代中国で赤は聖なる色ですね)その姿は、多くの人々を魅了してきたことになります。
また、紀元前4世紀頃には西方に伝播。
ペルシャやギリシャなどにもその姿が見られます。時期的に、アレクサンドロス大王の遠征
も影響したかもしれません。
アレクサンドロス大王の東征は、世界史的に見ると「西方の王が東方の神格化された王に変化していく過程」として見ることもできます。
しかしそれ以外にも東方の様々な影響(食文化等も含む)があったと考えると、また面白いところです。
地中海といえばブドウ、オリーブ、そして…
西方に伝播した桃は、その後ローマでも好んで栽培さます。
その後も地中海沿岸地域を中心に盛んに栽培されました。
地中海世界の作物というとブドウやオリーブを真っ先に思い浮かべますが、桃もその仲間に加えて良さそうです。
ちなみに、地理の共通テストで「ブドウ」「オリーブ」+α(コムギ
柑橘など)の栽培北限に関する問題は頻出ですのでご注意を。
オリーブはイベリア半島、イタリア半島など、地中海に張り付くような栽培地域。
ブドウはパリ盆地付近が栽培北限とされていましたが、現在は温暖化の影響でやや北進しています。
日本でも特産地の一つ、岡山県は乾燥が強めの瀬戸内気候。また、福島や山梨など生産が多い地域は乾燥が強い内陸盆地が多めです。
やはり地中海性気候とは相性が良いという事でしょう。
日本と中国における「桃」
日本や朝鮮南部にも在来種が存在します(中国系は大果、日本や朝鮮系は小果)。
小果品種は日本でも古代から栽培されていて、『日本書紀』などにも記載があります。
イザナギノミコトが黄泉の国で妻のイザナミノミコトから逃げる際に投げつけたのが桃の実(意富加牟豆美命(おおかむづみのみこと))だったり、魔を祓う果物とされていました。
中国でも王、日本でも魔除けと、一般的な果実とは扱いが違いますね。
中国も、「桃源郷」
の話をはじめ、天界の果実として桃が出てくるなど、神聖な果物として東アジア地域では特別視されています。
日本における桃の栽培
元々、日本にあったのは先述の小果品種でしたが、明治時代に入ってから中国系の大果品種(上海水蜜など)が入ってきました。
主要な栽培品種は殆どこちらに置き換わっています。
主な系統としては白桃系(生食用として出回っている大半はこちら)と、果肉が固く、やや糖度が低いため缶詰などの加工用に向く黄桃系がありますが、近年は黄桃も生食用に出回るようになりました。
独特のジューシーさと食感で人気を博しているようです。
というわけで、今回は桃についてでした。
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