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「僕と彼らの裏話」 作者として推したい話

 ご覧いただき、ありがとうございます。坂元(筆者)です。
 今回は、「僕と先生の話」シリーズ3作目となる「僕と彼らの裏話」について、まとめ記事を書きました。ご一読いただければ幸いです。

 連載開始当初は「Home」という、なんとも安直な仮タイトルが付いていた本作。その由来は単純明快「主人公が、故郷で再会した同級生と結婚してを買う話だから」です。
 しかし、連載を進めていくにあたり「描かざるをえない、他作品との“つなぎ目“」の多さに気付きました。そして「自分が書きたいのは、陳腐な『恋愛小説』ではない!」という意志は、ずっと揺らぎませんでした。(主人公とパートナーの関係性だけに着目して、周囲の魅力的な人物を度外視するなんて……そんなの、絶対に話が つまらなくなる!)
 そのため、だんだん「Home」という仮タイトルに、違和感を覚えるようになりました……。

 本作は、シリーズ2作目「吉岡奇譚」の途中で物語から離脱(休職)した坂元の、休職中の出来事から始まるストーリーであるとともに、倉本くんが主人公の小説「長い旅路」と、繋がっている箇所が多々あります。
 また、シリーズ1作目「僕と先生の話」42話と43話の間にある、4年近い【空白】のことが、少し明らかになるストーリーでもあります。
 他の物語では、あえて描かなかった部分……そして、同じ世界の出来事でも主人公が違うからこそ見えてくる部分を、繋げてみたのが本作。……で、あるならば。「裏話」という単語を含むタイトルが、最も相応しいのではないか?という結論に至りました。
 そして、タイトルが再び「僕と〜」で始まることにより、主人公が1作目と同じ人物であることが、読み手に伝わりやすくなったと思います。


 そんな「僕と彼らの裏話」において、作者として推したい話を、ご紹介します。


1.同窓会をしよう

 主人公は、一作目の最終話に登場した旧友「修平」の家で、家賃代わりに家事をしてやりながら、心身を休めています。
 そして、同じく最終話で奇跡的に再会した主人公の『師匠』こと 須貝元部長は、修平宅の隣の部屋で、元気に暮らしています。

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3.告白

 先に「告白」をするのは、千秋です。事故で両脚を失ったと打ち明けた彼女に、主人公は「ずっと貴女が好きだった」と、秘めていた想いを伝えます。
 そして、自分が暮らす 本州の「雪が降らない街」への移住を提案します。

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6.「臆病風邪」

 一度は主人公からのプロポーズを断った千秋でしたが、やがて「断る理由は無い」ことに気付きます。
 一緒に居て、居心地が良く……そして「障害特性により、外出が難しい」というのは、2人とも同じなのです。

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9.真の友

 主人公が復職するなり、雇用主の吉岡が、自身の盟友たる岩下に重傷を負わせる……という事件が起こり、激震が走ります。
 しかし、負傷した岩下は、ひたすらに吉岡の身を案じています。

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12.「おかえりなさい」

 過去に複数回「軟禁と監視を伴う人権蹂躙」を受けた吉岡には、【閉所】に対する凄まじい恐怖心があります。留置場の環境に耐えきれず、ほとんど全ての記憶を失った状態で帰宅します。
 しかし、吉岡の【信仰心】は本物です。心から信じている宗教の関連書籍をきっかけに、失われた記憶は戻ります。

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13.喜捨

 吉岡は、自らへの【懲罰】として、運転免許を手放します。そして、自身を「狂人」と呼び、主人公に「辞めてくれてもいい」と言います。
 しかし……主人公は、吉岡への忠義を見せます。

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23.念願は叶うも

 何事も無かったかのように、和やかに食事をする吉岡と岩下を前に、安堵する主人公。そして、この大切な2人に、堂々と「婚約者」を紹介できる喜びを噛みしめます。
 しかし、4人が楽しく食事会をしている頃、悠介は……。

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25.誓いの言葉

 【フラッシュバック】により衝動的に凶行に及び、更には「錯乱」した婚約者(主人公)を前に……千秋は、動じません。「彼と結婚する」という決意は、揺らぎません。

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28.癒しの技

 駅での凶行に関する【後悔】や、何度でも蘇る【希死念慮】に囚われ、激しく動揺する主人公。岩下は、至極冷静に、彼の『懺悔』を受け止め、彼の過去を肯定します。

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29.ゲートキーパー

 岩下にとって、主人公は「自分の友人」であるだけでなく「大切な吉岡先生の生死に関わる、重要な人物」です。失うわけにはいきません。

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37.大切な「初心」

 紆余曲折ありましたが、無事に千秋が新居に引越してきます。稔は、彼女と「生きて再会できた喜び」を噛みしめ、2人で末永く幸せに暮らせるよう、努めることを誓います。

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41.勇士の帰還

 岩手で倒れてしまった悠介が、長い入院を経て、奈良の自宅に帰ってきます。
 ほとんど動かない・まったく話せない……かつて見た姿を想起させますが、今は当時と違って「大好きな藤森ちゃん」が側に居てくれます。彼女と一緒に居られたら、彼は元気が出るようです。

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44.彼の決断

 悠介の入院・通院に付き添う頻度が高くなっためか、吉岡は久方ぶりに【フラッシュバックによる激昂】で、物を破壊するに至ります。
 しかし、主人公は至って冷静に対処します。

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46.静閑の地

 悠介の「動かない」と、亘の「動かない」は、全く質が違います。だからこそ、吉岡は悠介の将来を悲観しません。
 そして、亘の現状を知った主人公は、彼を慕っていた悠介の心痛を知るとともに、岩下の過去にも、想いを馳せたかもしれません。

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47.倫理観

 過去に働いた製薬会社でも、幾度となく「患者の病態を笑い草にするクズ共」を目の当たりにし、耐え難い憤りを感じてきた主人公ですが……具体的な【制裁】にまで踏み切ったのは、おそらく これが初めてでしょう。

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51.世に遺す意義

 亘が【生きた証】を、吉岡と悠介は「文学作品」という形で残しました。
 もちろん、彼はまだ生きています。しかし、人は いずれ、必ず寿命が尽きて亡くなります……。
 生前に書き残した作品は、彼らの死後も、この世界の中で生き続けます。(だからこそ、僕は「遺す」という字を選びました。)

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 以上となります。

※但し書き
 主人公「稔」のモデルは筆者であり、吉岡先生と弟さんのモデルとなった方々は実在しますが、他の登場人物は全て架空の人です。
 主人公の妻「千秋」も、架空の人物です。筆者の実際の配偶者とは一切関係ありません。

 今作は、連載開始から完結まで、1年以上かかりました。そして、掲載後に内容を修正した回数は、他の どの長編よりも多かったと思います。筆者の未熟さ故です。しかし、それでも「一作目よりも難しい描写に挑戦した」「根気強く書き上げた」という自負があります。
 本当に拙いものではありますが、ここで挙げたエピソードだけでも、ご一読いただければ幸いです。



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