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もけると物語【7:建築家コルビュジェさんと建築の自由】

村で収穫された珈琲豆がミルで挽かれて出る音と香り。談話室はリラクゼーションルームでもあるみたい。まだ淹れてもいないのに豆だけでこんなに香ばしいなんて。談話室自習室図書室の活用方法を吟味するミーティングなのに、皆さん、目を閉じてうっとりしています。

マインクラフトっていうゲーム、ご存じですか?キューブを積み重ねて仮想現実の世界を作り上げていくコンピューターゲームです。建築物を造って街を出現させたり冒険に出たりするんですけど、なんかもけるとの村もそんな感じに見えてきました。でも、本当はこの村と村人にはとても悲しい誕生秘話があったんです。

開放と歪曲

先日お話しした「河川管理人の家」は空想の世界の建築物。だから、その国々にある法律とは無関係です。マインクラフトの中の建物も同じ。どんなにハチャメチャで現実には成り立ちそうにないものでも建設可能。現に、「違法建築」なんてテーマで多くの参加者による”違法建築”が造られているから面白いんです。

世界の3大巨匠のひとりとして有名なル・コルビュジェさん。「ランシーの教会堂」でもご紹介したオーギュスト・ペレさんのお弟子さんですね。多大な功績を残した彼はとてもたくさんの建築物を残しています。すごいんです。その大半が世界遺産なんです。

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スタイン邸は彼の代表作の一つ。彼が提唱した近代建築の5原則のうち4つを体現している建築でもあります。有名な「サヴォア邸」が完全なる彼の代表作として知られていますが、その前にも実験的な住宅がいくつか建てられたうちの一つです。

ピロティ=地上が柱だけで構成され上階を支えている構造
屋上庭園=建築物の上層部に設けられた庭園
自由な平面=構造にとらわれない自由なプラン
水平連続窓=構造から独立した連続する窓
自由なファサード=様式にとらわれない外観

5つの要点(原則)です。ザックリと解釈すれば、「あらゆるものから解放され自由を勝ち取ろう!」って感じかなと思っていますが、現代の技術ではどれも容易にできてしまいます。当時はそれが難しかったし物珍しかったんでしょう。

そういえば、彼はもう一つ「ドミノシステム」も考案しています。要約すると「建築は床と柱と階段だけでできるよ」というお話。今まで石やレンガを積み立ててきた建築様式から”解放”されるわけです。この発想は彼が最初とされていますけど、アントニ・ガウディさんはその提唱された年よりもさらに4年前に「カサ・ミラ」で実現していたりします。どう見たってコンクリートの塊にしか見えませんけど、実はそうじゃなかったんですね。見た目の判断は思考を狂わせます。

映画『ル・コルビュジエとアイリーン 追憶のヴィラ』はそんな彼のイメージを一変させました。アイリーン・グレイさんは私も好きな女性建築家でインテリアデザイナー。二人の生涯をこの映画が語ってくれています。一言でいうと「歪曲」でしょうか。自由の開放運動とは真逆のそれは、違法建築ではないけど、とても私の生きたい世界とは思えませんでした。まぁ、どういうことかは観て解決してください。

こびと化と自由化

もけるとには建築基準法なんてないんです」

と村人が教えてくれました。そんな特権、どこの国を探してもある訳がありません。ところが本当なんです。証拠はありません。いや、村人たちが証拠なのかもしれません。

環境破壊

なぜ背が低いのか、切々と教えてくれました。ことの発端は地球の異変。人々は環境・経済・社会の改善によって地球の健康を維持しようと動き出します。でも、村人たちはその中でも最も歪んだ解決策に協力させられ、最大級の犠牲を被った一族だったんです。

動機は至ってわかりやすく「生きるモノたちが小さくなれば排出するものすべてが減少し地球を救う最高の解決法になり得る」から。確かにそれは一理あるかも。ドラえもんのスモールライトで小さくしてもらえば事足りる。逆に排出されたものを小さくもできる。でも、ボクらにはまだドラえもんなどいないし、破滅の道に進むだけかもしれない、そんな予測もつくわけで。結局、ワクチンみたいなものを何度も摂取させられ、世代に渡って臨床試験されたのだと聞かされたんです。

それがいつの時代から行われたのかはわかりません。なにせ、全資料を焼失してしまったわけだから。きっとその恐ろしい記憶と記録を隠蔽するために。そんな理由もあって調査団が押し寄せてきたりもしたんだって改めて感じます。

そして驚くのが、引き換えに得た特権です。”建築の自由”だったなんて。皮肉にも、もけるとの村人たちが建てたこの村独特の建築物の原料はトウモロコシ。彼らのトウモロコシ畑は食用ではなく建築資材用に育てられています。植物由来のトウモロコシポリマー(化合物)は、より建築に適した質に高められたエコ素材として使われているんです。RC造より何倍もの強度を持ち、自由な形を実現し、自然に還るスーパー建築物。

「皮肉すぎる・・・」

自慢もせず、批判もせず、今を楽しく正しく生きるもけるとの村人たち。どう考えてもこの村から逃げ出すなんてできないよね。でも、ちょっと危険かもしれないなぁ。10年前の”あの出来事(火災)”は解決していないんでしょ?また目をつけられたら村人たちが何されるかって心配になってきた。対策は必要かもしれない。

で、談話室ミーテイングはまだ始まらず皆さん目を閉じたまま。珈琲豆、恐るべし。

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