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もけると物語【11:建築家安藤忠雄さんとアトランティス】

管理人ピエロさんが不思議な行動をとっていることに気づいたのは今朝方。いつも朝のお散歩をしていることは知っていたものの、目的地までは気にしていなかったんです。でも、なんだか気になり出して談話室の壁に掛かっていたもけるとの村の古地図を改めて見に行ってみました。管理人ピエロさんが持って行ったんでしょうかね、原本はなくなっているんです。とにかく、最近の管理人ピエロさんの朝の散歩はちょっと不思議なんです。

古地図と古墳

妻の知り合いの家族が富士山の麓へ移住してのんびり暮らしているんですけど、私たちもその周辺が気に入ってたまに遊びに行っているんです。近くにキッズペンションがあって息子も安心して遊べるから気軽に行けちゃいます。最近は色々とあって行けてないんですけど、庭で飼われているヤギさんもウサギさんも元気にしているかなぁ。

で、そこから少し離れたところにふるさと文化伝承館という博物館があります。その地域で出土した土器や古くから伝わる民具などが展示されていますし、体験系イベントなんかもあって楽しめます。ふるさと文化伝承館の外観はそんな展示品からインスピレーションを得てデザインされたんだろうと思うんですけど、大阪にある近つ飛鳥博物館もそんな印象を強く感じる建築物です。

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設計は建築家として世界でも有名な安藤忠雄さん。彼らしくコンクリートの外観で覆われた建物。ピンコロ石で埋め尽くされた死者の世界へと続く階段は圧巻というか神秘です。多くの古墳を見て回って得たイメージが彼にこんな建物を設計させたんですね。日本芸術大賞まで受賞されたこの博物館は、建築の枠を超えた”芸術品”と言える建築物なんだろうなって思ってしまいます。例にもれず、行ったことがないので模型を眺めた感想でしかありません。悪しからず。

もけるとの村には無数の小高い丘があります。これらは子供たちの遊び場だったそうです。ところでこの小高い丘は古墳ではありません。話の流れから「古墳じゃない?」ってピンッと来たかもしれませんけど違うんです。古地図のコピーを見て気づいたんです。村そのものが古墳のようなものだったってことを。村のあちこちにある小高い丘はまだ小人になる前に作られた塚で、村の原型となる遺跡だったのでした。

塚と建築

村人たちが開発した建築技術建築の自由は、どうやら、この村のさらに昔の歴史にも関係していたようなんです。まぁ、分かりやすく言うと「アトランティス」ってやつです。かつて、この地域は豊富な資源の宝庫でした。規律正しい村人たちによってその資源は守られ、長らく掘り出されることなく眠り続けていたんです。ところが悪い奴らはいるもので、村に乗り込んできては採掘場をこしらえて大地を荒らし始めました。村には採掘のための穴がボコボコと掘られ、用済みになると穴の入り口に”塚”を盛って次の穴掘りを始めるという行為を繰り返しました。結果、村は荒廃寸前。

そんな村にトウモロコシを植え始めます。荒れた土地でも比較的簡単に育つトウモロコシは、豊富な資源を失ってしまったこの村の大地に新たな資源として広がり始めます。その頃はまだ世界に輸出できるほどの建築技術はなかったようですけど、トウモロコシ由来の水溶性プラスチックとしてすでに使えるくらいの技術は徐々に備わっていったらしいです。そのプラスチックを塚の内部に塗り固めて独特な雰囲気の空間に仕上げ、子供たちの遊び場や大人たちの憩いの場へと変換していました。これがもけるとの村が生み出した建築デザインの原型で、妄想アパートメントもけるともそのデザインを踏襲しているわけです。

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規律正しい村人たちのプラス思考はプラトンが書き記した「アトランティス」島にはならなかったみたいです。にしても、管理人ピエロさんの朝のお散歩は一体どんな目的なのかはいまだ不明。

そこで、尾行してみました。

そしたら、なんか他の村人たちも同じことをしているんです。そして、お散歩なんてものではありませんでした。一つ一つの塚へと赴き、何やらやっています。規律正しい村人たちのことです。見ていると、決められたように各人が各塚へ入っていき、何やらやっているんです。

何もなかったかのように管理人ピエロさんは戻ってきました。談話室オープンの準備に取り掛かっています。

「ピエロさん、おはよう」

「マイスター、おはようございます」

「聞いても良いかな?」

「早朝のお話ですね」

「あぁ・・・そうだよ」

放送室でお話しましょう」

管理人ピエロさんがニコニコ顔で応えるところを見ると、悪いことではないようですが、はて、放送室ってどこだったかな。

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