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大工、指先からミートくん


 試用期間終了と同時にスーツを着ることを決めていた僕ですが、いい出会いもあったりして、楽しく産廃仕分け作業員を続けていました。


 ある日のこと、残置物といって、戸建ての解体工事やリフォーム工事をする際に捨てられる所謂粗大ゴミを積んだ平ボディトラックが工場に入ってきました。


 オーライ! オーライ! オーライ! ハイ! オッケーでーすっ!!


 と、GS店員よろしく、大きな声でトラックを誘導する僕。そして、トラック荷台のあおりを開けるために車の横に立って留め金をガチャガチャ。


 あおりオ~プ~ン ! と同時に大きな冷蔵庫がぐらっ・・・


 ズんっ!!


 え?


 NOぉぉぉぉおおおお!!!!!!


 倒れてきた冷蔵庫が僕の左足小指の上にピンポイントでズン! メキャって音が足先から伝わってきたからね。だけど周りのみんなは冷たかったなあ。


 慌てて足を引きずって場内の端っこに移動、靴を脱いで小指を確認したら、なにこれ・・・なんか変な方向に曲がってない? こわいこわい。


 また別の日、僕は国籍ガーナの作業員ロペさんと二人でトラックの荷台から、長くて大きい、とても一人じゃ持てない鉄の管を降ろしていました。


 それがでっかいけど丸い管だからゴロゴロ転がるのよね。


 よいっしょ。よいっしょ。 と国境を越えた掛け声をロペさんと合わせて、一本一本どうにかこうにか降ろしていたところ・・・


 よいっしょ。よいっしょ・・・ん?


 ガタッ・・・ゴロゴロゴロゴロ! メキっ!


 ッ!!?


 なんと、そのめっさ重たい管が、タイミングよく次の管を持ち上げようと降ろしていた僕の右手にゴロゴロ崩れてきたんです。慌てて手を引くと、指先の感覚が全くない。やば。


 すぐに作業用の皮手袋を外してみると・・・


 「ひいいいいいやああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」


 と、絶叫。


 したのは、僕ではなくロペさんです。手袋を外して顔の前に持ち上げた僕の右手を、僕と同時に確認したロペさんは、僕よりも驚いちゃったのよね。


 人差し指の先端がつぶれて、肉が飛び出していたんです。グっろ!!


 ちなみにここで救急車を呼んでしまうと、会社的には労災を使うことになり、色々と面倒だから、という残酷な理由で僕はつぶれた人差し指のまま、自分で車を走らせて病院へ行きました。


 激痛でその日の晩はなかなか眠れなかったっス。しかもね、怪我から10年も経ってるのに、季節の変わり目とかにこの人差し指が痛むんです。ちょっとかっこよくね?


 ファントムペインや・・・とか思ってます。


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