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ビール工場へ行くバスに揺られ続けたい

とあるビール工場の見学に行ってきた。

ビール工場と駅との往復では無料のシャトルバスを利用する。

年齢層は60代前後の方が殆どで、10代以下の親子連れや私達のような20代の団体は他に皆無という日本の縮図みたいな様相。

真ん中より少し後ろの右側の席に座り、時間となっていざ出発。此処から先は30分くらいの行程、思い思いの時間を過ごすことになるのだが、この空間がなんか楽しかった。

通常のバスだと、皆どこに行くかもわからないし、必ずしも楽しい思いをしている人たちだけではない。あくまで移動手段として使っている人が大多数で、その移動に対して感情を抱く時といえば渋滞していたり変な客と同乗してしまった時に発生するネガティブなものが殆だろう。

しかし、そもそもの話だが、このバスについてはこのバスにはビール工場に行く人しか乗っていない。つまり、その時点でビールが好きであったりお酒を飲むのに関心があるなど、ポジティブな感情を持った人しか乗っていないのだ。口を開けば先に待ち構えるアルコールについてしか出てこないし、そこから連続して出てくる言葉も楽しげな言葉しか出てこない。これはもう勝ちパターンだ。

そして、どことなくエレクトリカルパレードチックな軽快な音楽と明るい案内音声が流れる。こいつのおかげで「これから夢の国へ向かうのだ」という印象に変わる。酒にまみれる夢の国だ、大人の遊園地と言っても過言ではないだろう。

そんな感じで、ビール工場へのバスの中は、めちゃくちゃポジティブな空気にあふれていたのだったのだ。プーさんのハニーハントに乗った時みたいな、お気楽さとファンシーな感情といえばピッタリくる。なんだかひたすら前を向いていられるのだ。流れているものは蜂蜜酒だろうから、プーさんもアル中になってしまうかもしれない。

人生も、このビール工場行きのバスみたいな感じだったらいいのになぁ。行く先が明確に見えていて、しかも自らが望むものを得られ、一回乗ってしまえばその場所についてしまう。バスに揺られ続ける人生。

しかし我々は、バスに揺られる身ではなく、運転手。我々の行き先は自分で決めて道を選んで前に進んでいかなければいけないのだ。気づけば訳のわからない工場についていて、好きでもなんでもない事を見聞きするのもただただ苦痛だ。私達の意志で、行きたい所へ行ってやりたいことをやろうではないか!

なーんて事を思いながらバスに揺られながら行ったビール工場見学は最高でした。皆行け。無理して飲む必要はないけど。


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