2020年に観た面白かった映画
年の瀬も年の瀬、みなさんいかがお過ごしでしょうか。僕はといえば残り4日にして「映画を年間100本鑑賞する」目標まで残り5本となり、焦って今日(12/30)5本を息切れしながら観ました。
100本観た中で面白かった映画を振り返ります。
音楽と同様に邦画が多め。劇伴と音楽に気を奪われがち。映画に出てくるロケーションを探すのが好きです。
では、いきましょう。
①日々是好日(2018年)
Amazon primeで鑑賞。
2018年に亡くなった樹木希林さんが出演する最晩年の作品。
「まほろ駅前多田便利軒」(2011年)や「セトウツミ」(2016年)、今年だと「MOTHER マザー」の大森立嗣監督の2018年の作品。
「伝統」とか「形式」とか個人的にとても嫌いだけれども、形式を徹底することで見えてくる「美」が際立っていて、自分の価値観を問い直すきっかけになりました。
黒木華さんと多部未華子さんのしっとりした演技も好きでした。
②三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実(2020年)
今年は三島由紀夫生誕95年、没後50年ということもあり、三島関連の映画や本や特番が多く組まれた年でもありました。
1968年、三島が市ヶ谷駐屯地で割腹自殺をする1年半前に三島が単身東大駒場キャンパスに乗り込んで東大全共闘と激論を交わした貴重なドキュメンタリー。
三島も東大全共闘も言っていることが非常に難解なのが時代の空気感。
とりわけ三島が東大全共闘、もとい左翼学生と新右翼の本質は同じであることを喝破していたことは現代にも通じる(通じてほしい)とても重要なポイントだと思いました。
当時から既にアングラ演劇界をリードしていた芥正彦さんがイケメンすぎる。子供をあやしながら抽象的な議論を交わしていく姿が印象的でした。
野次を飛ばしてきた学生に対して芥さんが壇上から喝を入れるシーンがあるんですが切迫感が凄かった。安易に「昔は良かった」と言いたくないんですが、この時代の学生って切迫感があってすごいですよね。
③リアリティのダンス(2013年)
アップリンククラウドが3ヶ月50作品レンタルをやっていたのでそれ関連で。
チリ生まれ、映像の魔術師アレハンドロ・ホドロフスキー監督作品。ストーリーも理解できるんだけど、どこか不可解な違和感(セリフがすべて歌のお母さんなど)が身体に残ってしまって、それが快感だった。とにかく「わからなさをわかる」ことを教えてくれる映画。
映像がとくにかく美しい。そして権威主義的な父との葛藤など、普遍的なテーマも描かれている。
④スプリング・フィーバー(2009年)
上海生まれの映画監督、婁 燁(ロウ・イエ)監督の中期くらいの作品。
ロウ・イエ監督が描く女性像はどこか儚い美しさがあって、岩井俊二監督に通じるものがある。特にこの作品は春の生暖かい風の匂いがたちこめていて、とても好きな作品でした。
⑤ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語(2020年)
観賞後の気分の変化ってとても大事だと思うんですが、ストーリーオブマイライフを観終わったあとの、あの何とも言えない爽やかな気持ちは癖になります。
家父長制が今よりもはるかに強い時代に進歩的な感覚を持って生きた女性たちの物語。洋画に明るくないのでキャストはエマ・ワトソンとティモシーシャラメくらしか知らなかった。でもティモシーシャラメが美しかったです。
2021年にもう一度観たい。
⑥ペイン・アンド・グローリー(2019年)
スペインの映画監督、ペドロ・アルモドバルの自伝的映画。渋谷Bunkamuraで鑑賞。1度観て何がわからないのかわからなかったので2回観に行きました。
ペドロ・アルモドバル版「ニューシネマパラダイス」と言われている(言っている?)みたいですが、テーマはやっぱりまったく異なる。
自身が製作した映画への想い、過去の恋人との別れ、母への想い、性の目覚め。それらが有機的に結びつきながら人生を編み直していく。淡々と物語が進行していくが、深い愛情と痛みが積み重なっていく。
ペドロ・アルモドバルってまったく知らなかったんですが、胸の奥底まで響く銅鑼のような映画でとても好きになりました。
⑦TENET テネット(2020年)
自称映画通がこぞって2020年ベストムービーに挙げそうで嫌だったんですが、やはりTENETなしには語れないのが2020年。
インセプション(2010年)、インターステラー(2014年)、ダンケルク(2017年)で有名なクリストファー・ノーラン監督の最新作。
合計2回観ました。1回目は予習なしのガチンコ凸で観に行って、わからなさすぎて笑ってしまった。2回目は考察サイトを複数読んでから観て、何とか理解できるけどわからない部分もあるな、という感じ。
ホドロフスキーとは違ってわからないことを楽しむのではなく、わからないことがわかるようになるまでの過程を楽しむ作品だと思います。
ところでインセプションとかインターステラースよりも遥かに難解じゃないですか?
⑧少女邂逅(2017年)
オムニバス映画「21世紀の女の子」や高井息吹さん「今日の秘密」、佐藤千亜紀さん(きのこ帝国)「空から落ちる星のように」のMVでも知られる枝優花監督の長編映画。
主演が穂志もえかさん、モトーラ世理奈さんという豪華キャスト。この2人だからこそあり得た世界観。
枝監督にとって映画を撮ることが間接的に穏やかな復讐だったり、傷の癒しになっているのかもしれないと思いました。平成版リリィシュシュと言うにはあまりに無粋。
暗めのテンションだけれどもどこか希望の光が差し込んでいるような映像が好きです。
「少女邂逅」とは打って変わって「放課後クリームソーダ日和」では女子高生がただ放課後にクリームソーダを飲むだけの映画でこれまた魅力的。映画のロケーションが好きなので「放課後クリームソーダ日和」に出てくる都内のカフェをGoogleマップでチェックしました。独身男性が1人でクリームソーダを飲みに行く姿が想像できないので誰かご一緒してください。
2021年も枝監督の映画に注目していきます。
⑨監視資本主義 デジタル社会がもたらす光と影(2020年)
Netflixオリジナルドキュメンタリー。
一言で要約すれば「SNSは悪!」ということを描いているドキュメンタリーなんだけれども、とても大きな問題提起をしている。これをIT企業であるNetflixが配信していることに価値がある。
私たちはSNSを「利用している」と思い込んでいるけれども、実際にはSNSに「利用されている」、もしくは「操られている」ことが鮮明に理解できる。
名言も多くて、「SNSはデジタルおしゃぶり」はその通りすぎて爆笑してしまった。他には"If you're not paying for the product,then you are the product."(「タダで商品を使っているなら、君がその商品だ」)など身につまされるコメントが多かった。
大事なことは批判的(非難ではなく)思考と常に自分が間違っているかもしれないという自身への問いかけ。この作品を観てFacebookやTwitterやInstagramを批判しても何も変わらず、批判すべきはそれらのテック企業が利益を生み出している構造だと思った。広告収入、もっと広義には資本主義を乗り越えていかないと人類が滅んでしまうほどの危機感。加速主義がアメリカで勢力を持ちつつあるのも、他に取りうる選択肢が限られていることが要因なのかもしれない。
そして率先してこれらの問題を社会に問うことが社会学の本来的な役割の一つだと思うのだけれども、いかんせんテクノロジーと学問のスピードが異なりすぎている。スピードという点で社会学、もっと広くアカデミズムも変わっていかなければならなくなっているのかもしれないと思いました。
最後にSNSの監視から逃れるために何ができるか、をシリコンバレーの起業家や著名人が語っているのだけれども「スマホの通知を切る」とか「YouTubeのおすすめ動画を観ない」などで、これしか対抗策がない現状にとても危機感を煽られた。
終わり!
今年観た中では「スパイの妻」「日本のいちばん長い日」での東出昌大さんに良い意味で翻弄された年でもありました。東出さんにしかできない演技が確かにあって、東出さんって俳優として天才なのでは…?と冗談抜きに思わされました。この記事を書いていて気がついたんですが「三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実」のナレーションも東出昌大さん。
また長くなってしまいました。2021年も年間100本観ることを目標に映画との出会いを楽しみます。2021年は映画音楽や劇伴にさらに寄せていきたい。
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