衣替え時に考える なぜ「フランス人は10着しか服を持たない」のか?
衣替えまであと一ヶ月もあるというのに、5月でも最高気温が30度に迫る日も増え、早々に半そでを引っ張りだす、なんて方も多いのではないでしょうか?
最高気温が22度を超えてきたら衣替え時、という人もいるように、今週の気温予想を見ても、向こう一週間はずっと24度前後。まだゴールデンウィークが始まったばかりですが、十分に衣替えが適切な季節といえそうです。
さて、衣替えをしようかと悩んでいたところ、そういえば2年間住んだフランスでは衣替えで悩む必要がなかったなあ、ということに気が付きました。
そして、そのことはあの有名な「フランス人は服を10着しか持たない」という説につながるのではないか?
そこで、記念すべきnote1記事目は、
✓なぜフランスでは衣替えが必要なかったか?
✓なぜフランス人は10着しか服を持たないのか?
について考えてみたいと思います。
四季がはっきりした日本、3シーズン同じ服でOKなフランス
日本とフランスの一番の違いはなんといっても気候。実際に住んでみるとその気候の違いが服装の機能に多く影響していると感じることがありました。
例えば、フランスは日本より寒い時期が長く、湿度も低いため、秋→冬→春と同じ服装でもOKなのです。
もちろん冬は寒いのでコートとストールをしっかり巻き、温かくしますが、コートを脱いでしまえば3シーズン同じ服装。しかも温かくなってからも朝晩は冷え込む日も多く、気候もカラッとしているので、ウールのニットが長く活躍します。
日本でいうところの「秋服」を基本として、アウターやストールを少し変えれば、3つのシーズンを乗り切ることができてしまいます。あとはこれに涼しい夏服があれば十分!
必然的に最低限必要な服の数が少なくなります。
季節ごとに色彩を楽しむ日本、ボン・シックなフランス
日本に帰ってきて大変だなあと思うのは、季節ごとに服の色も変わっていくということです。
日本では四季がはっきりしており、光の加減や樹木の色づきに合わせて、街ゆく人の色彩も大きく変わっていきます。
それにあわせ道行く人も、春色、夏色、秋色、冬色、と服の色と変わっていく。
例えば春と秋は似たような気温、湿度ですが、春はパステルカラーの服、秋はシックな落ち着いたトーンの服と変える人は多いのではないでしょうか?
また、湿度も微妙に異なるので、春はとろみ素材、秋はニットなど生地が厚めの素材、と素材もバリエーションが必要です。このため色×素材の組合わせの分、服の種類が増えていきます。
これはこれで、日本流オシャレの醍醐味。
ですが、オシャレにそれほど意識が高くない私のような人間でも、四季ごとの服と、それに合わせて靴やカバンと持ち物のパターンは増えていく一方。その結果、クローゼットがすぐにいっぱいになってしまいまうのではないでしょうか?
一方、フランスではそもそも3シーズン同じ服でよいうえ、「ボン・シック」が好まれるので、夏以外は紺・黒・ベージュ(+白)の服が基本。
あとは素材がコットン・ニット・レーヨンなど自分にとって着心地のよい素材がいくつかあればよいので、必然的に服の数は少なくてすみます。
流行に敏感な日本人、自分らしさを大切にするフランス人
パリに住んでみて驚いたことは、いわゆるvougeのようなファッション誌に出てくるような個性的なオシャレな人はあまり街にはいないということ。
もちろん、ファッション業界や華やかな社交の場では、個性的な服を着こなす人が多くいるのだと思います。
ただ、普段街で出会うフランス人はいたって「シック」。
特にパリでは「シック」であることが好まれます。
先ほども触れたように、一般的なパリっ子の服は男性も女性も紺・黒・ベージュが基本。どちらかというとコンサバで、住み始めたころは「制服」みたいだなあと思ったものです。
ではどこで個性を出しているかというと、ストールやカバン、靴の小物を「自分色」のアイテムで変化をつける。しかも靴やかばん、靴とストールなど、2つ以上のアイテムを全く同じ色で統一することで個性を出す人が多いのがとても印象的でした。
この傾向は年を重ねたマダムたちも同じで、老いも若きも、自分らしさを大切にファッションを楽しんでいるようでした。
週5日服装を変える日本人、毎日同じ服の組み合わせでも気にしないフランス人
フランスに住んでいる時期、非常に楽だったのが、毎日服のパターンを変える必要がなかったことです。
極端な話、日本では会社に出勤する週5日のうち、できるだけ服の組み合わせが被らないように無意識のうちに気を使っているという方も多いのでは?
上下の組み合わせたり、羽織ものの組み合わせを変えたり。なるべく同僚に服のパターンが同じに見えないようにとなんとなく気を使っていました。
さらには毎年トレンドが変わるのも楽しいけど、大変!
靴のトゥの形、カバンの形、大きさ、スカートやパンツの形、トップスの袖の長さや広がり方。その年の流行が一斉にお店に並び、3年も前の形は古びた印象になることさえも。
案外こういうのはオシャレ上級でない私のようなタイプの方が、お店の提案を鵜呑みにする分、流行に振り回されていたかもしれません。
でも、フランスでは自分が一番似合う、一番着心地のよい2~3パターンを回していればよいのでとても気が楽でした。
シックな色と、定番の形。後はzaraなどで少しパンチの効いたアイテムを一つ取り入れる。
また、フランスでは同じ着回しを週に何回も着るということも多いようです。とにかく流行より、自分らしいスタイルである事が大事。
実際、日本に来たフランス人が毎日違う服装の日本人を見て驚いた、なんていう話もあるようです。
夏は華やかに!
とはいえ、シックなパリっ子も夏は色とりどりの服を着て、夏を楽しんでいるようでした。
バカンス直前の6月から、普段は色数が少ないパリの街も一気に華やかになります。
この時期ばかりは、老いも若きも、シックという定義は忘れ、肌を思いっきり露出して、明るい色の服に身をつつみ、ショッピングやピクニックを楽しむ人々で街があふれます。
そのエネルギーのまま、世界中にバカンスにでかけ、8月の終わりになるとパリの街に帰ってくる。
6月から8月の短い期間、思いっきりオシャレもバカンスも楽しんで、1年分のエネルギーを充電すると、また9月からシックな生活に戻っていきます。
そんなメリハリがあるからこそ、フランス人はシックな装いを楽しむことができるのかもしれません。
というわけで、日本とフランスの気候に見る、ファッションの違いについてまとめると
・秋、冬、春の3シーズンは同じ服でOk
・紺・黒・ベージュなどシックな色が好まれる
・自分らしさは差し色で表現する
・一週間の間に「同じ服」を何度も着まわす
・夏は思いっきりはっちゃける
というのが、フランス人が少ない服装ですむ要因なのではないかと思います。
ところで、フランス人は本当に服を10着しか持たないのでしょうか?
実は2年という期間ではその答えを出すことができませんでした。
ただ、気候や好みという要因から日本ほど多くの服を持つ必要がないことは、私自身の体験から感じたことです。
日本のファッション文化も日本の風土や新しいものに敏感な気質の中から生まれた素晴らしいものです。
ただ、なんでこんなにもクローゼットの中がパンパンなのか?というときや、日本流の足し算のファッションに疲れたときは、フランス流の引き算のファッションを参考にしてみるのはいかがでしょうか?
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