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ほんとうに死んでしまうのは文化や芸術

128.天国への扉

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陶芸家ヘルヤ・リウッコ=スンドストロム Helja Liukko-Sundstrom は、フィンランドの名門窯アラビアARABIA社の芸術部門に在籍、陶板による飾り皿を数多く世に送り出したことで知られています。

なかでも、彼女にとってウサギと並ぶ大切なモチーフのひとつが「天使」。じっさい陶芸作品のみならず、一連の「天使」を描いた作品からは何冊かの絵本も生まれています。

天国への扉と題されたこの作品で、まず目を引くのはなんといってもその青色のうつくしさ。

白夜をしずかに包む大気の青、冬の夜空の澄みわたった青……。南欧の広場の文化に対し、しばしば北欧は室内の文化などといわれます。冬の長い北欧では、どうしても人びとの意識は内にこもりがちです。しかしそんな暮らしの中でも、部屋の壁に飾られたこの陶板をちいさな窓として、フィンランドの人たちはつねに外界を近くに感じることができるのかもしれません。

さらに、9センチでも15センチでもなく、12センチ四方というその大きさにも注目。壁面を飾るにも、手に取って眺めるにもちょうどいい、その考え抜かれた絶妙なサイズ感に、この陶板作品がロングセラーとして愛されてきた理由を見いだすことができるように思います。

ひょいと壁に掛けたり、また外したりできる手軽なアート作品として、ヘルヤ・リウッコ=スンドストロムの飾り皿はおうちで過ごす日々の暮らしにそっと寄り添っています。

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129.パターソン

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