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映画めも。

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観た映画のはなし。 ネタバレするぞー!
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2023年8月の記事一覧

【映画】最近観た映画2023年7月

【映画】最近観た映画2023年7月

先月の投稿に対して「観る気も起きない」とディスるツイートがあったけど、備忘録なのであしからず。ちゅうかやかましいわ!ほっとけ!

7月は待望のホン・サンス「豚が井戸に落ちた日」のリバイバル上映があって、やっと観る事が出来た。初期作は未見だったので、ついでに「カンウォンドのちから」と「オー!スジョン」もDVDと配信で鑑賞。ホン・サンス作品は新作未公開を除くと、残すところは「映画館の恋」だけ未見。今回

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【映画】オオカミの家 La Casa Lobo/レオン&コシーニャ

【映画】オオカミの家 La Casa Lobo/レオン&コシーニャ

タイトル:オオカミの家 La Casa Lobo 2018年
監督:クリストバル・レオン&ホアキン・コシーニャ

アリ・アスターのコメントにある様に、ヤン・シュヴァンクマイエルやクエイ兄弟直径の作品だと思うし、その辺りが好きなら絶対観るべきだと思う。しかしながら、予告を観た時は正直そこまで惹かれなかった。というのもそこに映し出されたものは、シュヴァンクマイエルやクエイ兄弟の作品の美術品のように作り

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【映画】砂の上の植物群/中平康

【映画】砂の上の植物群/中平康

タイトル:砂の上の植物群 1964年
監督:中平康

アンチモラルと倒錯したセックス描写。女子高生と口紅の赤と血の赤。フェティッシュなクローズアップと反復。痴漢と強姦とピーピング。ある種の軽さが、80年代以降の日本の中で表面化する、性に対するモラルの無さに通じる感覚があり、あからさまに欠如した倫理観に辟易する。男の都合で語られる性への視点がどうにもポジティブ過ぎる。あたかもそれらを女性も受け入れて

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【映画】エロス+虐殺/吉田喜重

【映画】エロス+虐殺/吉田喜重

タイトル:エロス+虐殺 1970年 (ロングバージョン)
監督:吉田喜重

太陽光のシーンでの露出オーバー気味で粒子感の目立つ淡く幻想的な映像。全編に渡って作り込まれた極端な構図は、60年代の不条理映画の特色ではあるものの、ここまで全てに注力した作品は他にはないと思う。実相寺昭雄の諸作や、川島雄三の「しとやかな獣」、近作だとシン・エヴァンゲリオン辺りで極端で面白い構図は見受けられる。しかしそれらの

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【映画】アル中女の肖像 Bildnis einer trinkerin/ウルリケ・オッティンガー

【映画】アル中女の肖像 Bildnis einer trinkerin/ウルリケ・オッティンガー

タイトル:アル中女の肖像 Bildnis einer trinkerin 1979年
監督:ウルリケ・オッティンガー

東西に別れていた頃のベルリンが醸し出すデカダンス。クラシカルな雰囲気も漂うモードな服装。クラウス・ノミほど奇抜なファッションではないにしろ、そこにあるクラシカルな要素は通じるものがある。そう、映画全体から感じられるのはニューウェーブならぬNeue Deutsche Welle(ノ

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【映画】ソウルに帰る Retour à Sèoul/ダヴィ・シュー

【映画】ソウルに帰る Retour à Sèoul/ダヴィ・シュー

タイトル:ソウルに帰る Retour à Sèoul 2022年
監督:ダヴィ・シュー

不思議な雰囲気のある映画だった。家族間のドラマかと思いきや、一変してノワールな雰囲気に変わり、前半とは違う雰囲気の家族ドラマへと進む。序盤から主人公フレディの起こす突飛な行動が、フランス人らしい仕草なのか、ただ単に彼女の資質なのかが判然としない。特に冒頭の飲み会のシーンでは、フレディと対照的に相席した若者達の

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【映画】トルチュ島の遭難者 Les Naufragés de l'île de la Tortue/ジャック・ロジエ

【映画】トルチュ島の遭難者 Les Naufragés de l'île de la Tortue/ジャック・ロジエ

タイトル:トルチュ島の遭難者 Les Naufragés de l'île de la Tortue 1976年
監督:ジャック・ロジエ

何はともあれブラジル音楽ファンとしては、クラブでバンドがドリヴァル・カイミの「Saudade da Bahia」を演奏するシーンと、ナナ・ヴァスコンセロスの出演が嬉しい。特にひたすらバリンバウやパーカッションを演奏するナナの姿は、一部台詞はありながらも特に物語

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【映画】バービー Barbie/グレタ・ガーウィグ

【映画】バービー Barbie/グレタ・ガーウィグ

タイトル:バービー Barbie 2023年
監督:グレタ・ガーウィグ

待ちに待ったグレタ・ガーウィグ待望の新作!
ただ先日のアメリカ本国の下手なプロモーションのせいで割を食ってる感じもある。二日目の朝イチで場内で入りは半分くらいかな。

足手まといなプロモーションの影響に限らず、バービーという映画のイメージから国内のプロモーションも世代を広く取ってるような印象があった。一番顕著なのが予告のライ

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【映画】アデュー・フィリピーヌ Adieu Philippine/ジャック・ロジエ

【映画】アデュー・フィリピーヌ Adieu Philippine/ジャック・ロジエ

タイトル:アデュー・フィリピーヌ Adieu Philippine 1962年
監督:ジャック・ロジエ

リリアーヌとジュリエットが通りを横切るシーンの言葉に出来ない素晴らしさ。シーン自体は特に意味は無いのに、ふたりを取り巻く雰囲気や街の喧騒が生き生きと伝わってくる。このシーンだけでもこの映画の素晴らしさは格別なものだと感じる。映画全体でフォトグラフィックな美しさを持つが、とはいえスチールでは伝わ

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【映画】さらば、わが愛/覇王別姫/チェン・カイコー

【映画】さらば、わが愛/覇王別姫/チェン・カイコー

タイトル:さらば、わが愛/覇王別姫 1993年
監督:チェン・カイコー

映画館の席に座った直後、隣の席に華奢な二人組の女の子が席が揺れるくらいドスンと座って、手すりのドリンクホルダーにペットボトルをドーンと置いた。彼女達のワイルドな所作に呆気に取られながら、直後に中国語でひたすら会話してる。うーむ、大陸っぽいというか、文化の違いを感じる。席を見渡すと結構中国語が飛び交っていて、旅行なのかこっちで

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【映画】メーヌ・オセアン Maine Ocean/ジャック・ロジエ

【映画】メーヌ・オセアン Maine Ocean/ジャック・ロジエ

タイトル:メーヌ・オセアン Maine Ocean 1985年
監督:ジャック・ロジエ

先の読めない旅とヴァカンス。次から次へと脈絡なくいきなり登場する人物たち。メーヌから海までと名付けられた列車「メーヌ・オセアン」で出会う男女の物語…なのだけど、列車が登場するのは前半だけで後半は出てこない。けれどその後半でも列車の存在は、ヴァカンスのリミットも意味している。とにかく海に向かって進みながら、その

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【映画】マリア・ブラウンの結婚 Die Ehe der Maria Braun/ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー

【映画】マリア・ブラウンの結婚 Die Ehe der Maria Braun/ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー

タイトル:マリア・ブラウンの結婚 Die Ehe der Maria Braun 1979年
監督:ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー

銃弾が飛び交うベルリンで挙式を挙げる冒頭シーンの突飛な始まりから分かるように、真顔で冗談を言うようなめちゃくちゃで滑稽な始まり方に笑いが込み上げる。ベルリンが戦場になっている時点で第二次大戦末期なのが分かるし、マリアの夫がナチという時点で立場は危うい。どこまで

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