見出し画像

てんちゃん、おはよ。【3】〜別れ〜

スナネズミのてんぷらこと「てんちゃん」と、
相棒のざびえるは、
相変わらず呑気に仲よく暮らしていた。

2019年、
冬の足音が聞こえてきた頃、
てんちゃんが怪我をした。

何かに引っかけたのか、
砂浴びの器から下りる時に体重が重かったのか。
理由はわからないままだが、
気づくと左足を引きずるようになっていた。


はじめての動物病院

心配になり、
初めて動物病院を受診した。

(てんちゃんの診察券)

当然といえば当然なのかもしれないが、
ペットの名前で診察券を作ってくれたのが、
なんだかとても新鮮で、
大切にされてる気がして嬉しかったのを覚えている。

とても丁寧で優しい先生に診てもらい、
足の痛み止めをもらって帰った。

これで安心かなぁと思ったが、
なんだか食欲も無さそう。
前ほど動き回ることはない。

そんな中、
シロップ味の甘い痛み止めは好きみたいで、
朝と夜のお薬は必ず飲んでくれた。

ざびえるの方はというと、
てんちゃんの不調に気づいているのかいないのか、
いつも通り活発に動き回っていた。


てんちゃんの姿に驚く

一日2回のお薬を飲んで、
1週間ほど経ったある火曜日のこと。

その日はちょうど仕事が休みで、
朝から家にいた。

てんちゃんとざびえるに朝ごはん…と思って、
ケージに近づき、
エサの準備をしていると、
てんちゃんの姿を見てギョッとした。

ひとまずいつも通りの量をお皿に入れ、
てんちゃんに近づく。

左耳のところに血がにじんでいる。

見ると、
左足で左耳の辺りを掻きむしったのか、
左足にも血がにじんでいる。

…てんちゃん!

と、思わず声が出る。

綿棒とお水と消毒液で、
やさしく抱き上げたてんちゃんの、
真っ白な毛を染めた赤い血を、
そっとそっと拭き取っていく。

なんだか軽くなったな。

やっぱりあまり食べてないのかな。
エサがちゃんとなくなってるのは、
ざびえるだろうか。

また心配事を増やしながら、
てんちゃんをキレイにしたら、
いつものお薬タイム。

お薬を近づけるといつも、
ペロペロペロと、
おいしそうに飲む。

お医者さんが言っていた。
お薬にはビタミンとかも入れときましたって。
何だかひとつひとつありがたい。

血まみれてんちゃんには、
正直とても驚かされたが、
のんびり過ごしていたので様子を見ることにした。


様子がおかしい

その日の夕方、
てんちゃんとざびえるのケージに近づくと、
明らかにてんちゃんの様子がおかしかった。

息がとても速い。

いつものお気に入りの場所とは違うところで、
丸くなって、
ハァハァハァハァと苦しそうにしている。

涙目になるのをこらえて時計を見ると、
18時まであと10分というところ。

まだ間に合う。

急いでてんちゃんを小さいケースに入れて、
すぐに動物病院に向かった。

ざびえる、すぐ帰るからね。

なるべくてんちゃんを揺らさないように、
なるべくてんちゃんが寒くないように、
大事に抱えて足早に向かった。


2度目の診察

1週間ほどで2回目の受診。
先生もとても心配してくれていた。

体重を測ってもらうと、
前回より10gも減っていた。

足の怪我と今朝の血まみれ事件の話を伝えたが、
そちらはあまり心配なさそうとのこと。

「ただ、息がこれだけ速いのと、
体が少し冷たいのが、
心配ですね」

たしかに、
いつもはとってもあったかいてんちゃんの体が、
少しつめたい。

あまりごはんを食べられてなさそうなので、
点滴を打ってくれた。
てんちゃん、
よくがんばった。

あとはあったかくしてあげてくださいと、
アドバイスをもらって家に帰ってきた。

てんちゃんをいつものケージの、
ヒーターで温かい場所にそっと置く。

そこであったかくして休んでね。

そうつぶやいて台所に向かおうとすると、
カサ、カサと、ヒーターのない場所に移動した。

ダメだよ、
あったかくしなきゃだよ!

てんちゃんを移動させるのではなく、
ヒーターをてんちゃんの方に動かした。

てんちゃんはいまだに、
ハァハァハァハァと目を細め、
苦しそうではあったが、
なんだかさっきよりも落ち着いてきたようだ。

今のうちと、
夕食の買い物に急いだ。


ただいま

近くのお店で出来立てのお好み焼きを買って、
急いで家のドアを開けた。
靴を脱ぎ捨て、
てんちゃんのもとに走る。

ケージの正面の入口のところに、
てんちゃんが目を開けてこっちを向いている。

あれ、
てんちゃん、
よくなったの?

少し期待して、
入口を開け、
てんちゃんに手を伸ばす。


あっ





→【4】に続く。

この記事が参加している募集

好き勝手に書いてますが、少しでも楽しんでいただけたらうれしいです(^^)))よければまたふらっとお立ち寄りくださいね。