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私とは何か「個人」から「分人」へ :: 平野啓一郎(著)
平野啓一郎氏、著作のレビューはこれで3冊目。
今回はこの本
どんな本?
内容(「BOOK」データベースより)
小説と格闘する中で生まれたまったく新しい人間観! 嫌いな自分を肯定するには? 自分らしさはどう生まれるのか? 他者と自分の距離の取り方―。恋愛・職場・家族…人間関係に悩むすべての人へ。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
平野啓一郎
1975年、愛知県生まれ。小説家。京都大学法学部卒。1999年、在学中に文芸誌「新潮」に投稿した『日蝕』により第一二〇回芥川賞を受賞。以後、数々の作品を発表し、各国で翻訳紹介されている。
『本の読み方 スロー・リーディングの実戦』レビューで上げたYouTube動画『Love others to love yourself | Keiichiro Hirano | TEDxKyoto 2012』が、この本で言いたかったことを、端的に述べているのではないかと思います。
noterです
今さらですが、平野啓一郎氏はnoteにもアカウントをお持ちです。
随分前から投稿をされているようで、第1回目の投稿は2014年7月。
公式HPはこちら
感想
この本の出版は時期的に「第3期(前期分人主義)」の終わり頃。
個人= individual に対して、分人= dividual と言う言葉を用いています。
日本人の中になぜ「個人」という存在が出来上がったのか?
平野氏の歴史的な解釈・解説に、同意出来るところが多々ありました。
(略)
もう一つ『決壊』をあのかたちで終わらせるよりほかなかったのは、個人という概念です。この小説以前は個人という概念を前提に小説を書いていましたし、『決壊』も同じように書き始めました。でも書き進めるうち、今は個人という概念自体に限界が来ているのだということを強く意識しました。沢野崇という主人公は、その困難を象徴的に体現した人物です。従来の個人という概念を基礎に据えて考えるかぎり、小説がうまく組み立てられないという感触があった。つまり、現実自体がそれではうまく捉えられなくなっているのではないかという感触です。
では、どうやって生きたらいいのか?を考える上で、まさに考えるべきはここだと見定めました。そうして出てきたのが「分人」という概念です。人は誰しもどこかに「本当の自分」という中心を持っているようにこれまでは信じてきたけれど、そうじゃない。人は個人という分割不可能な統一体として存在するわけではなくて、相手や状況に合わせて分化する複数の人格、すなわち分人の集合体でできているという考え方ですね。近未来のアメリカを舞台にした『ドーン』では、この分人主義を全面的に展開しました。
太字:MOH
平野氏はこの本の中で、思春期時代の悩み(学校での自分は本当の自分ではない等)や、京都で高校時代の友人と大学での友人が同席した際、友人によって自分の見方が違う等の具体例を挙げて、「分人」の存在を説明し、学校でのいじめ、会社でのパワハラを受けている「分人」とそれらへの対応の仕方を記述しています。
「分人」の考え方で行動を振り返ると「ある意味」楽になれるように思います。
シチュエーションごとに違う自分のいることが普通で、自分の中にいくつもの「分人」がいることが正常だと思えば、日々の生活が少し軽くなるように感じます。
今年に入り、閉塞感が漂う世の中。
たまには辛い場所にいる自分を一つの「分人」として見て、違う場所からの「分人」として、「辛い分人」への対応を考えてみてはいかがでしょう?
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