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Book review;『木曜殺人クラブ』

 以前、ココに投稿した通り、9月上旬発売予定のリチャード・オスマン『木曜殺人クラブ』“ゲラ版”読者モニターの感想(早川書房へ送付したもの)とnote.comでのレビューをします。


 早川書房から、ネタバレのレビュー投稿は控えるようにお願いされていますので、それに沿って慎ましいレビューを。

早川書房からの紹介

(“ゲラ版”に同封されてきた宣伝レター)

英国で累計100万部を突破、25週ベストセラー1位!
現代版アガサ・クリスティースタイルの謎解きミステリ登場!
【あらすじ】
未解決事件の調査を趣味とする、一癖も二癖もあるメンバーばかりの老人グループ(木曜殺人クラブ)。入居する施設の関係者が何者かに殺されたのをきっかけに、彼らはその真相究明に乗り出すことになる。そこに新たな殺人事件が発生し……。
ユーモラスで、ほろ苦く、読む者の心を掴んで離さない− −新人離れした圧倒的完成度をもってして、世界中で激賞された謎解きミステリの傑作、ここに登場!
【著者紹介】リチャード・オスマン
イギリスでBBCのバラエティー番組やクイズ番組のプレゼンター、コメディアンとして活躍。デビュー作である本書で、一躍世界的ベストセラー作家となった。第一作にして全英図書賞(The British Book Awards)の年間最優秀者賞を受賞。

レビュー

 アガサ・クリスティーを熱心に読んだのは中学生の頃だったような気がします。たぶん大人になってからは一冊も読んでいないのではないかと。
 この本がクリスティースタイルだとすれば、第一印象は「なかなか話が始まらないのですが……」です。
 ゲラ版は500ページ弱のボリュームですが、最初の100ページまでは誰も死なないし、事件も起こりません。
 登場人物のほとんどは、財を成した人たちが入居できる健康型高級有料老人ホーム(ロンドンから少し離れたところに位置する)に入っているお年寄りたちで、最初の方は彼らの生活の様子が綴られています。
 日本と同じようにイギリスでもそのような施設に、誰でも入居できるわけではなく、英国内で100万部売れたのはそれに憧れる年輩の方が多いのでしょうか?

 100ページを過ぎたあたりからようやく、殺人が始まります。
 ネタバレは出来ないので書けませんが「誰かが死んで地元の警察が捜査を始めると、好奇心旺盛な老人たちが聞き耳を立てて捜査内容を知ろうとし、犯人を推理する」そんな小説です。

早川書房に提出した感想

新しいスタイルのミステリ小説です。
日本で発売される物語はミステリも含め、未だに若者(多いのは高校生)が主人公になって事件を紐解くような話が、まだまだ多いように感じます。

老人ホーム(高級リタイアメント・コミュニティ)が舞台になっており、そこに住まう老人が謎解きをするところが目新しく、それぞれの現役時代の経験が異なり、その経験を生かした立ち振る舞いが出来るところが、若者が主人公になる物語と比べて、メリットであり特徴的なところです。

ただ、高齢者が故に走ったり格闘することは出来ず、ほんの近くをクルマで出掛ける際にもおトイレの心配をしたり、同居人と何時まで一緒にいられるのかという、老い先が短いが故の問題も所々に描かれており、高齢化社会が到来している日本を舞台にした、このような物語がソロソロ書かれても良い頃です。

そのようなお話を、面白く前向きな物語に出来るかどうかは作者の技量によります。
物語は全体的に、主たる登場人物が高齢な故、話の進むテンポが淡々としています。
そこのところを味わい深く読むのか、かったるいと思うのかは読者によるのかな。

Web小説を書いているので、興味深く読ませていただきました。
(高齢者を主人公にした物語も考えてはいますが、話の進め方が難しくドラフト止まりです)

[感想 了]

木曜殺人クラブ (ハヤカワ・ミステリ(1971)) 単行本

この小説は9月2日に発売予定です。
興味のある方は書店かAmazonへ(Kindle版はありません)。

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ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
MOH

[2021/09/09追記]
最初の死亡者の死亡時刻は、本人が付けていたFitbitのデータから解ります。
その辺は今時の推理小説ですね。