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Xの肖像

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筆者の気分とかなり連動しながらぐだぐだ書いてるオリジナル小説です。悩める中学生のお話。割と何もかもがすげー内向的な作品。諸々修正して投稿中です。
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2021年3月の記事一覧

習作④-3「或る文学少女」

 がたんごとんと、世界が音を立てて揺れていた。繋がったまま走るいびつな箱の中には、信じられないくらいたくさんの人間がびっしりと詰め込まれていて、箱が揺れるたびに僕は知らない人間とぶつかってしまう。優しい人は、ごめんなさい、と言ってくれるし、僕も会釈くらいは返せるけど、酷い人は舌打ちしてくる。
 なかなか不愉快な乗り物だと思う。

 時刻は午前10時過ぎ。
 僕は隣市にある駅前の大きな本屋さんに行く

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習作④-2「橋間②」

 橋間に出会ったのは、私が仕事で手ひどく失敗した日のことだった。帰り道はめそめそしていたけれど、だんだんやけくそになって、コンビニに突入してお酒を買い込み、その足で公園に向かった。
 ベンチよりブランコの方がきれいだったのでブランコに座った。そのまま黙々とビールを喉に流しこんでいるとだんだん気が大きくなってきて、私はおもむろに靴を脱ぎ、靴下も脱ぎ、ブランコを漕ぎ始めた。ブランコに乗ったのは久しぶり

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習作⑤「Yについて」

 ときどき、苦しさが頂点に達しようとしたときに、思考が暴走することがある。そういうとき、僕は必ず、君を思い出す。

「僕は君を殺したい。君ごと僕の中にある卑屈さを殺したい。全部君のせいだ。君が悪い。僕が友達を、僕によくしてくれる人をいつまで経っても信じられないのは、君のせいだ。」

 これは、打ったまま消せないメモだ。

◇ ◇ ◇

 中学に上がったばかりの頃、こんな僕にもまだ友達がいた。その子

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習作④-1「橋間①」

 死ぬことが怖かった。
 中学生くらいの頃、夜にひとりでいるときに、いつか来るのであろう人生の終わりを想像して、途方もない恐怖に幾度となく襲われた。
 私の人生はどう終わるんだろう。病気だろうか、老衰だろうか、苦しむだろうか。いや、そういうのならまだマシだろうな、もしかしたら通りすがりに誰かに殺されてしまうかもしれない。もし私の終わりがそうだと決まっているなら、どうかひとおもいに、長く苦しませずに

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