世界最大の資産運用会社ブラックロックの話
世界最大の資産運用会社であるブラックロックについて、以前から取り上げて欲しいというリクエストをいただいていました。
なぜ今このタイミングでブラックロックを取り上げるのかと言いますと、最近このブラックロックについて様々なことが言われているためです。特に、8月5日に日本株が大きく下落した中で、このブラックロックが大量に日本株を買っていることが話題になっています。
ブラックロックのビジネスモデル
ブラックロックが何か怪しいことをしているのではないかという話もされています。しかし、私はそうした裏情報を知り得る立場にはありません。この記事では、ブラックロックのビジネスについて説明しようと思います。
資産運用会社としてのブラックロック
ブラックロックは投資信託を運用している資産運用会社です。日本の会社で同業だと、野村アセットマネジメントやみずほフィナンシャルグループのアセットマネジメントなどが挙げられます。
資産運用会社は、顧客から集めたお金を決められた運用方針に沿って運用しています。つまり、運用している資産は表面上はブラックロックと名前がついたファンドになっていますが、そのお金は投資信託に投資をしている投資家のものです。ブラックロックはあくまで運用の指示をしているだけです。
ファンドマネージャーの役割
ファンドごとにそれぞれ運用方針や様々な規定がありますので、ブラックロックという会社の匙加減だけで日本株をたくさん買うことはできません。基本的に日本株を運用するファンドマネージャーと、別の資産を運用するマネージャーは分かれていますので、別の資産から日本株にお金を移すことはブラックロックの仕事ではない場合がほとんどです。
では、誰がそれを決めているかと言うと、お金を出しているブラックロックのお客様です。
ブラックロックのビジネスと日本株の取得
ブラックロックの投資家の中には海外の投資家ももちろんいますが、日本の投資家もたくさんいます。そのため、ブラックロックのファンドが日本株を取得したことについて、日本人が買っている可能性も十分に考えられます。ブラックロックがやっていることとブラックロックのお客様がやっていること、このあたりはなかなか理解されていない面もあると思っています。
暴落相場とETFの役割
暴落相場の中では、特に機関投資家の場合、個別銘柄を買うのが難しいことがあります。値動きが激しすぎたり、検討する時間がなかったりするからです。
そのような時にリスクを増やしたり減らしたりする方法として、先物を使う方法とETFを使って運用の基準になっているインデックスと同じ銘柄を取得する方法があります。ETFと言えば、今一番大きな会社がブラックロックですので、こういう相場の中でブラックロックがたくさん株を買っていても不思議なことではありません。
ETFの利用方法
ETFを通して株を買った投資家がたくさんいたのだと私は理解しています。機関投資家がETFをどう使っているかを理解すると、もう少し分かりやすいかもしれません。
例えば、資産運用会社が新たなファンドを作るとします。何らかのベンチマーク基準となるインデックスを決めて、それに合わせてたくさんの銘柄を買ってきます。インデックスには多いものだと何千銘柄も入っていて、全く同じポートフォリオにしようと思うと何千銘柄も買わないといけません。構成比の多いものを中心に組み入れて全部は買わないのが一般的です。それでも、それなりにたくさんの銘柄を細かく取引する必要があります。そうしないとインデックスに対してリスクが偏ってしまうことになります。
ETFの利便性
ETFは基本的にインデックスと同じように動くので、お金が入ってきたらとりあえずETFを買っておけばいいです。その買ったETFを後で現物の株や債券に交換して欲しいと言うと、ブラックロックはETFとそのETFを構成する現物の資産を交換してくれます。つまり、機関投資家は細かな取引をたくさん行わなくても、ETFを売買しておけばインデックスを構成する資産を購入することができます。
ブラックロックの役割
ブラックロックは細かな取引を代行しているような形になっています。ブラックロックはたくさんの取引を束ねて市場で現物資産を売買する形になるので、小さなファンドを運用する会社がそれぞれ売買を執行するよりも効率的に売買を執行することができます。
今回のように株が大きく下落している時、こうしたETFを使った売買が活発に行われる傾向がありますので、ETFを通して日本株にたくさんお金が流入していたとしても不思議なことではありません。
ブラックロックの影響力と活動
ブラックロックという会社がお客様に言われたことだけをやっていて、自分たちでは何もしていない非常にクリーンな会社なのかというと、そういうわけではないと思っています。
10兆ドルを超える資産を運用していますが、近い将来、ETFの世界では2位のバンガードに追いつかれるのではないかと言われています。これぐらい運用資産の規模が大きな会社になると、やることも世界規模になります。
世界規模での影響力
力を入れていこうとする地域や国においては、その金融システムに大きな影響を与えることになります。そして、それぐらいの大きな規模で市場シェアを取っていかなければ、ブラックロックにとっても意味がありません。
だからこそ、世界中の金融当局者や政治家ともコネクションを築き、野心的に動いているのは間違いありません。自分たちにとって有利になるような法改正も含めて働きかけたりしているのは間違いないでしょう。
ご参考
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