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投資戦略と損切りについて


 モハPチャンネルでは、私の投資家としての経験や投資の方法、機関投資家の投資戦略などを紹介しています。今回は、損切りについて解説します。

損切りの重要性

 損切りの方法やタイミングで悩んでいる個人投資家の方が多いと思います。そうした悩みと弱みに付け込んで、「損切りの方法を教えますよ」や「損切りがうまくできれば投資で利益が得られますよ」と言い、有料のサービスに誘導するようなものもあります。しかし、私はこうしたサービスは決してお勧めできるものではないと思っています。
 損切りがうまくできて損失を限りなく減らすことができれば利益が得られるというのは、それはその通りですが、うまく損切りをするというのは簡単ではありません。後から「損切りをしておけば良かった」というのは結果論でしかありません。

損切りの理論

 損切りの理論を最もらしく語っている人たちは、どのように損切りをするのかについて、「感情をコントロール」とか、精神論的なことを語ったりする人もいますが、そんなことではうまくできるはずがありません。
 実際、機関投資家においては、リスク管理の観点から、損失が一定程度広がると損切りしないといけない、ロスカットルールを設けている会社やファンドもあります。これも、感情に左右されずに損失拡大を防ぐためのルールですが、それをすることによってリターンが良くなるとは必ずしも言えません。

ロスカットの限界

 過去のデータを振り返っても、ロスカットをした後にマーケットが回復して、結果としてロスカットしなかった方がリターンが改善したということも多いのが実情です。リーマンショックの時なども、日本の機関投資家は株価がすごく安くなった時に売却を急いだところがたくさんありましたが、長い目で見れば、そういう暴落したタイミングで買っていた年金運用のタイプが最もリターンが良かったことが、過去の危機の研究などから示されています。

リーマンショックの前後で最も安定したリターンを獲得したのは、年金運用などがよく採用している資産配分を一定に保つ戦略だったとされました。

金融危機時の機関投資家の投資戦略の振り返り

投資戦略と損切り

 ロスカットを機械的にやればうまくいくということはありません。そもそも論ですが、感情を排除して機械的に、一定程度損失が出たら売却するということを徹底したとしても、相場の見通しが当たる確率が50%で、外れる確率も50%だとすれば、儲からないということは明らかです。損切りしても損が膨らむだけです。

戦略の見極め

 まず取引を始める前に、自分の方法で見通しが当たる確率が外れる確率よりも高いかどうか、テクニカル分析でも何でも、勝率が高い戦略かどうかをしっかりと見極めて、当たる確率が高いと言える戦略をする必要があります。
 機関投資家の場合、過去の相場に照らし合わせて、勝率がどれほどになるかバックテストを行ったりもします。個人投資家でそれをするのは難しい面もありますが、自分の戦略が高い確率で勝てるものなのか、それを見極める必要があります。

短期トレード

 特に為替や株のように非常に流動性の高い金融市場では、テクニカル分析をして短期トレードをする人もいますが、短期的な相場の動きを予想することは非常に難しいです。株式市場はランダムウォークと言われますが、短期的にどちらに動くかを予想するのは不可能に近いと思った方がいいと思います。安定的に相場を予想することができる戦略、予測の結果が安定した指標などが存在しないのが実情です。

短期トレードと損切りの重要性

 つまり、こうした勝率の低い短期トレードの場合、失敗したら損切りをして次から次へと繰り返す必要があります。つまり、数をこなすことを前提としている戦略においては、損切りが非常に重要ということになります。自分のしている戦略がテクニカル分析を元にした勝率の低い短期的な戦略である場合、失敗をしたら損切りをして次から次へとたくさんの取引を行った方がいいでしょう。そういう取引であれば、機械的な損切りは非常に重要になります。

長期投資

 一方、ファンダメンタルズに着目した長期の投資においては、どのようにすればいいでしょうか。
 個別株への投資だと企業の業績が伸びていく見通しに沿って投資をしたり、インデックスだとその国や業界が伸びていく見通しに沿って投資をするということになると思います。そうした見通しが有効かどうかを常に分析していくということが必要になります。

ファンダメンタルズに基づく損切り

 例えば、成長が期待できる銘柄があって、コロナショックのような経済の大混乱が起こって全ての銘柄がパニック的に売られたとします。その時に、その企業が成長していくシナリオがコロナパンデミックによって大きく崩れてしまうのか、それともあまり影響を受けないのか、そこをしっかりと見極める必要があります。成長が見込めなくなったと判断される場合には損切りが必要になるでしょう。逆に、その企業が変わらず成長していけるということだとしたら、ショックが起こった時に安い値段で売ってしまったらもったいないということになります。
 長期投資では、機械的に損切りをするということではなく、損切りもあくまでファンダメンタルズに着目して行っていく必要があります。

個人投資家へのアドバイス

 個人投資家が陥りやすい状況について解説したいと思います。それは、テクニカルだったり相場の受給要因だったり、短期的な見通しで投資を行ったのに、結果としてだらだらと長期間保有し続けてしまうというケースです。

投資初心者の罠

 投資初心者に戦略を固めることが重要と言っても難しいとは思いますが、短期トレードとして始めたのにだらだらと同じ銘柄を保有し続けてしまうようなことだと、うまくいくはずがありません。だからと言って、だらだら引き延ばしたらダメだと思って、機械的に損切りをするということをしても、それでもうまくいかない。こうしたことが多いと思います。

長期投資のすすめ

 そもそも、多くの場合、勝率の高い戦略が実施できていないというのがあります。そうした方にお勧めしたいのは、ファンダメンタルズに着目した長期の投資をしていくということです。ファンダメンタルズに着目した投資においては、人口推移などからGDPの成長がある程度予想できたり、予測精度の高い指標もあります。そして、経験を積むことによって、勝率を上げていくことができるでしょう。


ご参考



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