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6月12日の米消費者物価指数の解説


 2024年6月12日、日本時間の21時30分にアメリカの5月の消費者物価指数が発表されました。以下に詳細をお伝えします。

米消費者物価指数の結果

 5月の消費者物価指数は、前年比でプラス3.3%となり、予想のプラス3.4%を下回りました。4月の指数はプラス3.4%でしたので、前月の数値から見ても小幅に低下しています。前月比で見ると、変化はありませんでした。4月のプラス0.3%を下回り、予想のプラス0.1%も下回りました。エネルギー価格の下落などを受けて、前月に比べて弱い動きになると見られていましたが、それをさらに下回る結果となりました。
 エネルギーや生鮮食品などの変動が激しい項目を除いたコア指数については、前年比でプラス3.4%となり、予想のプラス3.5%を下回りました。4月の数値はプラス3.6%でしたので、こちらも前月から低下しています。
 5月の消費者物価指数は、全体でもコア指数でも、前月の水準を下回り、予想も下回ったということで、全体的に落ち着いた結果と言えます。

米消費者物価指数の内訳

エネルギー

 内訳を見てみましょう。まず、エネルギーは前年比でプラス3.7%となりました。前月比で見ると、4月はプラス1.1%でしたが、5月はマイナス2.0%と大きく落ち込みました。特にガソリンは、4月が前月比プラス2.8%になっていましたが、5月はマイナス3.6%と大きく値を下げました。このところ原油価格が下落基調になっていたことなどが影響していると見られています。

中古車

 中古車については、前年比でマイナス9.3%と大きく下落しました。前月比で見ると、プラス0.6%と小幅な持ち直しになっています。4月が前月比マイナス1.4%と大きく下落した反動で、5月は小幅に上昇となりましたが、前年比マイナス9.3%も下落していることから、中古車はずっと下落基調が続いていることが分かります。

サービス

 注目のサービスは、前年比でプラス5.3%となり、4月と変わらない結果となっています。前月比で見ると、プラス0.2%となり、4月のプラス0.4%から低下しました。

4つ目に重要なのが粘着性です。要するに、継続する可能性があるインフレなのかどうかということです。
 粘着性があるとされているいくつかの品目があります。それらの品目が上がってくると、粘着性があると見ることができます。その品目というのが1つはサービス、もう1つは家賃です。

5月15日の米消費者物価指数発表に向けて

前月比の数値は、今年に入ってから、
 1月がプラス0.5%、
 2月がプラス0.7%、
 3月がプラス0.5%、
 4月がプラス0.4%と、高水準での伸びが続いていましたが、ここに来て少し下がってきたという状況です。
 先日の雇用統計では、賃金上昇率がプラス4.1%と高い水準になっていましたが、今回のサービス価格の弱さは、賃金の動きとは異なる動きになりました。サービス価格の伸びが落ち着いたことについては、医療サービスや輸送サービスなどが全般的に下落したことが要因です。特に、航空運賃が前月比マイナス0.8%、自動車の修理費用が0%になるなど、弱さが目立ちました。

家賃

 家賃については、前年比がプラス5.4%で、前月比ではプラス0.4%と、4月のプラス0.4%と同水準で、4ヶ月連続のプラス0.4%になっています。前月に引き続き、決して低くはないものの、どんどん上がってくる感じはない。やや安心感が生じる結果だったと言えます。

米消費者物価指数の結果の総括

 今年に入ってから、サービス価格が高水準で伸びていて、インフレの高止まりが意識されていましたが、前月に引き続き、それが落ち着いた結果になったと言えます。家賃については、前月比プラス0.4%が4ヶ月続いていて、継続して伸びていますが、サービス価格については、ここ半年で一番低い伸びになっています。
 ただし、今回の結果を受けても、すぐにインフレが落ち着いてきたとは言えません。エネルギー価格の下落を受けて、一時的に下落圧力がかかっただけにも見えます。実際、雇用統計の結果からは、賃金は高止まりしているので、サービス価格に徐々に影響してくる可能性もあります。

FRBの利下げ期待

 この結果を受けて、おそらくFRBの金融政策に関しては、9月の利下げの可能性が少し高まるといった方向性になるのではないでしょうか。今回の消費者物価指数が発表される前、FRBの利下げ開始は、9月が3から4割、12月が本命と見られていました。今回の結果を受けて、9月の利下げの可能性が高まるでしょう。

その他(フランスを中心とした欧州の混乱)

 マクロン大統領は選挙結果次第で辞任するのではないかという見方もありましたが、辞任は否定したとのことです。それでも、フランス国債の利回りがポルトガル国債を上回り、銘柄によってはスペインも上回っているという状況になるなど、フランス国債が急落しています。欧州債務危機の頃からは考えられなかった動きですが、欧州政治の混乱、特にフランスを中心に顕在化してきたといったところです。また大きな動きがありましたら、アップデートしたいと思います。


ご参考(前月分)

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