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7月11日の米消費者物価指数の解説


 2024年7月11日、日本時間の21時30分にアメリカの6月の消費者物価数が発表されました。以下に詳細をお伝えします。

米消費者物価数の結果

 6月の消費者物価数は前年比プラス3.0%となり、予想のプラス3.1%を下回りました。5月の数値がプラス3.3%でしたので、前月の数値も下回りました。前月比で見るとマイナス0.1%で、5月の0.0%を下回り、予想のプラス0.1%も下回りました。エネルギー価格の下落などを受けて、前月に比べて弱い動きになると見られていましたが、それをさらに下回る結果となりました。

 エネルギーや生鮮食品などの変動が激しい項目を除いたコア指数については、前年比プラス3.3%となり、予想のプラス3.4%を下回りました。5月の数値がプラス3.4%でしたので、前月の数値も下回りました。
 6月の消費者物価数は、全体でもコア指数でも、前月の水準を下回り、予想も下回ったということで、全体的に落ち着いた結果と言えます。

米消費者物価指数の内訳

エネルギー

 内訳を見てみましょう。まず、エネルギーが前年比プラス1.0%となりました。前月比で見ると、5月はマイナス2.0%、6月もマイナス2.0%と大きく落ち込みました。ガソリンは、5月が前月比マイナス3.6%になっていましたが、6月はマイナス3.8%とさらに大きく値を下げました。6月中旬まで原油価格が安定して推移していたことなどが影響したと見られています。

中古車

 中古車については、前年比マイナス10.1%と大きく下落しました。前月比で見るとマイナス1.5%となりました。4月が前月比マイナス1.4%と大きく下落した反動で、5月はプラス0.6%と小幅に上昇していましたが、6月は再びマイナス1.5%と大きく下落しました。前年比でもマイナス10%も下落していることから、下がっていることから、中古車はずっと下落基調が続いていることが分かります。

サービス

 注目のサービスについては、前年比でプラス5.1%となり、5月のプラス5.3%を下回りました。前月比で見るとプラス0.1%となり、5月のプラス0.2%から低下しました。

4つ目に重要なのが粘着性です。要するに、継続する可能性があるインフレなのかどうかということです。
 粘着性があるとされているいくつかの品目があります。それらの品目が上がってくると、粘着性があると見ることができます。その品目というのが1つはサービス、もう1つは家賃です。

5月15日の米消費者物価指数発表に向けて

前月比の数値は、今年に入ってから、
 1月がプラス0.5%、
 2月がプラス0.7%、
 3月がプラス0.5%、
 4月がプラス0.4%と、高水準での伸びが続いていましたが、
 5月がプラス0.2%、
 6月がプラス0.1%と、ここに来て伸びが鈍化してきています。
 先日の雇用統計では、失業率が4.1%まで上昇するなど、労働市場の弱さが鮮明になってきています。サービスの価格にも下押し圧力がかかっている可能性があります。サービス価格の下落については、医療サービスや輸送サービスなどが全般に下落しましたが、特に航空運賃が前月比マイナス5.0%と弱さが目立ちました。

家賃

 家賃については、前年比プラス5.2%で、前月比ではプラス0.2%となりました。5月まで5ヶ月連続でプラス0.4%になっていたところから、伸びが鈍化しています。

米消費者物価指数の結果の総括

 今年に入ってからサービス価格が前月比で高い水準で伸びていて、インフレの高止まりが意識されていましたが、5月と6月と2ヶ月連続で予想以上に落ち着いた結果になりました。家賃やサービスなど、なかなか下がらないと言われている項目が下がってきたことで、インフレにも下押し圧力がかかってきた可能性が意識される結果だったと言えるでしょう。
 今回の結果で、インフレが落ち着いたと言えるわけではありませんが、インフレの高止まりかそれとも景気悪化が来るのか、どちらが先か注目されていましたが、やや景気の悪化の兆しがでてきました。

FRBの利下げ期待

 この結果では、おそらく9月と12月の利下げはほぼ確実で、7月の利下げについても期待する向きが強まるかもしれません。今回の消費者物価数が発表される前の時点で、FRBの利下げ開始は9月が8割程度、12月までに2回の利下げを市場は織り込んでいました。今回の結果を受けて、9月と12月に加えて7月の利下げの可能性を市場は織り込みに行く可能性があるでしょう。
 このところのパウエル議長の発言などを聞いていると、できることなら利下げをしたいと思っているように感じます。7月の利下げの可能性もないことはないでしょう。

日銀の金融政策決定会合

 日銀の金融政策決定会合も控えています。FRBが利下げを前倒しするとなると、為替は円安に向かいづらくなり、日銀の政策修正期待が高まりづらくなるでしょう。日銀としては、できるだけ国内金利を低く抑えて緩和的な金融環境を継続したいと考えているでしょうから、国債買入れの減額などはややマイルドなものになるかもしれません。
 日米の金利差では説明がつかない円安が今年に入ってからずっと続いてきました。やや加熱感も見られていましたので、為替市場は一旦調整が入るかもしれません。

 ただし、再び円安に戻るのか、それともここで円安はピークをつけたのか、その判断は日米の金融政策の方向性を見極める必要があります。また新たな動きがありましたら、随時アップデートしたいと思います。


ご参考(前月分)

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