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新型コロナの研究報告 入院患者の死亡率が明らかに

 2020年8月7日、国立国際医療研究センターは、「COVID−19レジストリ研究に関する中間報告について」を発表しました。

レジストリ研究(登録研究)とは、患者さんを対象とした観察研究のことです。臨床研究には、介入研究と観察研究があり、介入研究は、実験的要素もある研究で、臨床試験とも呼ばれます。観察研究は、観察のみを行う研究で、疫学研究とも呼ばれます。診療の現状を知ること、予後や危険因子を探索するために有効と言われています。

国立国際医療研究センターの報告には、臨床像、経過、予後、重症化危険因子の探索、薬剤使用例の経過と安全性について書かれています。

対象は、新型コロナウイルス感染症と診断され、医療機関において入院管理されている症例。期間は2020年1月から現在(202年8月)までとしています。

重症度の内訳

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対象者が、医療機関に入院された方なので、療養施設や自宅で過ごされていた軽症の方は対象外になっています。

入院が必要だった方の中でも、軽・中等症の方は8割の方が酸素は不要だったそうです。しかし、重症者は酸素が不要だった方が2割、酸素が必要だった方が6割、挿管・ECMOを必要とした方は2割でした。

患者背景

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患者は、2週間以内に新型コロナウイルス陽性者・または疑いがある方と濃厚接触があった方が58.3%でした。

また、入院した患者の58.9%が男性でした。入院患者のうち、喫煙歴がある方は全体で36.3%でしたが、酸素吸入・挿管・ECMOが必要になった患者は約43%が喫煙歴がありました。男性・喫煙者は重症化しやすいとされました。

濃厚接触者の定義(2020年4月27日から)

発症2日前から、隔離開始までの期間で以下の関わりがあったもの
・患者と同居
・必要な感染予防策をせずに手で触れる
・マスクなしで1m程度以内の距離で、15分以上の接触があったもの

各重症度ごとの年代分布

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重症度ごとの年代分布では、全体では50代の患者が18.2%と多かったものの、重症化した年代で多かったのは60代以降でした。80代以降の患者は、¼が酸素吸入を必要としました。

併存疾患

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併存疾患は、海外の入院患者報告に比べ、併存疾患の割合は低めです。例えば、イギリスでは軽症糖尿病を併存していた患者が14%、肥満が9%、アメリカでは糖尿病(重症度の分類なし)の併存が28〜35%、肥満が40%でしたが、日本では軽症糖尿病の併存が14.2%、肥満が5.5%でした。

ちなみに、世界の成人肥満率の国際比較統計(WHO)では、アメリカの成人肥満率は31%で世界第24位、イギリスの成人肥満率は24.9%で世界第47位、日本の成人肥満率は4.5%で世界第166位だそうです。

重症化したケースでは、約33%の患者が軽症糖尿病を合併していました。


糖尿病と感染症

糖尿病を患う方は、一般的に感染症にかかりやすく、尿路感染症、呼吸器感染症、皮膚の感染症、歯周病などが起こりやすいと言われています。特に、血糖コントロールが悪い方は、重症化しやすくなります。以下が、感染症になりやすい理由です。

・好中球の貪食機能の低下(ウイルスが体に侵入した時に、取り囲んで殺す機能が低下します)
・免疫反応の低下(抗体を作ったりすること)
・血流が悪い(高血糖だと細い血管の血流が悪くなります。酸素や栄養が行き渡らず、細胞の動きが低下したり、回復に時間がかかります。また、薬も到達しにくくなり、薬の効果が弱くなります)
・感染により、さらに血糖値が上がる(状態を悪くするため感染症を悪化させ悪循環になる)


薬剤使用歴

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ファビピラゾル:アビガン®︎(抗インフルエンザウイルス薬)
シクレソニド:オルベスコ®︎(吸入ステロイド薬)
ナファモスタット:フサン®︎(膵炎治療薬)
ロピナビル/リトナビル:カレトラ®︎(抗HIV薬)
ヒドロキシクロロキン:プラケニル®︎(抗マラリア薬)
トシリズマブ:アクテムラ®︎(関節リウマチ治療薬)

退院時について


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入院した患者さんの死亡率は7.5%とされています。海外の入院患者報告に比べ、死亡率は低めです。(イギリス:26%、アメリカNY:21ー24%、中国:28%)

COVID-19に関するレジストリ研究について

国立国際医療研究センターは全国の新型コロナウイルス感染症と診断された患者の研究を収集し、病気の特徴や経過などを明らかにすることを目的とするレジストリの研究についての情報公開をしています。こちらから見られます。

https://covid-registry.ncgm.go.jp



<参考文献>

・COVID−19レジストリ研究に関する中間報告について.国立国際医療研究センター.https://www.ncgm.go.jp/covid19/0806_handouts.pdf
・折笠秀樹.臨床研究デザインの初歩.リハビリテーション医学会誌.医学書院.2012年4月.pp177−190
・糖尿病ネットワーク.糖尿病と感染症.https://dm-net.co.jp/seminar/25/











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