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《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第44話

四月二十八日(日)

 お前は何もしていない。
 お前がフラフラ何もしていない間、みんな自分のなすべきことをなしているんだ。

 一生懸命なぁ!

 この人は、カピバラ市の農業のことを思い、このまま田んぼができなくなったらまずいと、休日なのに、自分で調べてここまで来てくれたんだ。
 条例だか包茎だかしらねぇがそれはお役所さんが決めたことだ。
 それなのに何もしていないお前は、この人のなすべきこととはちがうお役所の話ってやつで、この人を否定しようとしてるんだ。

 筋がちげぇし、そもそもお前がいう権利なんてねぇ!

 あとなぁ、お前がここでトラブって、この人に怪我でもさせてみろ。傷害事件で、本当のことがわからないままぜんぶこのぬるま湯のせいにされちまう。
 全部。全部が終わっちまうんだ。

 わかったか!


 グイグイと寝技で締め付けていた。


 ままままず、私が先ほど口走ったことも定かではないですし、あれです。神奈川県のなんて言ったか生活の環境基準の条例があったはずなんです。県にも連絡しますし、私も調べますし、またご報告させてください。

 と、農業組合の職員が恐縮そうに早口で言って立ち去った。


 もうやめてください!帰ったじゃないですか!


 グイグイと締め付けている。


 いや、まだやめねぇ! お前がわかるまでやめねぇ!



 この喧嘩は、冗談じゃない。

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